「第44回ABCお笑いグランプリ」の決勝が本日7月9日(日)昼1:55より、ABCテレビで生放送、ABEMAで生配信される。4年連続で司会を務めるのは、南海キャンディーズ山里亮太。2004年に同賞レースの前身大会で優秀新人賞に輝き、その年の「M-1」で一躍脚光を浴びた同コンビ。当時を振り返り、山里は「あの頃は、芸人としてスタートを切ったワクワク感しかなかった」と懐かしそうに振り返る。紆余曲折在りながらも南キャンは今年で20周年。長く続けてこられた秘訣は「しずちゃんの器がデカすぎた」「僕の悪行に耐えかねて、20年の間で切るタイミングが何回でもあった」と、相方への感謝を口にした。また、個人としては「山里亮太の140」などライブ活動に精力的に取り組んでいるが、その理由を「ライブでの笑い声は、『お前も芸人やっていいんだよ』と許可される、ある種『免許の更新』のようなもの」と語った。

【写真】山里亮太、ABCお笑いグランプリ出場者との爆笑会見ショット

■お笑いの最先端を一番最初に目撃できる「ABCお笑いグランプリ」

――まずは、「ABCお笑いグランプリ」の司会に4年連続で抜擢された率直な気持ちから聞かせてください。

ひたすら光栄です。最先端のセンスを持つギラギラした芸人が競い合う「ABCお笑いグランプリ」は、一番何が起こるかわからない賞レース。お笑いの歴史が動く瞬間の目撃者になれる場だと思うので、それを特等席で見られることが幸せです。

――ご自身も南海キャンディーズとして2004年に、「ABCお笑いグランプリ」の前身にあたる「ABCお笑い新人グランプリ」で優秀新人賞を受賞しています。

もう、そんなに前のことになりますか…。あの時、優秀新人賞をいただけたことで、お笑い芸人としてのスタートを公式に切らせてもらったという印象があります。「さあ、今日から『芸人目指してます』と言って良いですよ」と認めてもらったというか。そんな自信を持つことができた大会でしたね。

――「最先端」という言葉が出ましたが、この19年でお笑いは進化したと感じますか?

いや、しまくってるでしょ! 「もう面白いものなんて出尽くしただろう」という状況の中で、「お笑いってまだあったの?まだ発見してくんの?」と、日々驚かせてもらっています。それを一番最初に見られるのが「ABCお笑いグランプリ」だと思います。

■若手の頃は爪痕残そうとし過ぎて、とにかくワードを全部ぶち込んでいた

――2004年に南海キャンディーズは「M-1グランプリ」で準優勝も果たし、一躍ブレイクしました。今では様々な人気番組でMCを担い、またこの春からは日本テレビの朝の顔も務めている山里さんですが、19年前に、現在のようなキャリアを想像していましたか?

いえ、全くしていないです。あの頃は、芸人としてスタートを切ったワクワク感しかありませんでしたから。先のことは具体的に想像せず、「とりあえず走ろう!」という気持ちでした。

――MCでいうと、若手の頃と現在を比べて、やり方やスタンスは変わりましたか?

若手の頃はMCでも爪痕残そうとし過ぎて、とにかくワードを全部ぶち込んで、この会場で一番面白い人でいようとしていました。でも今は、作る人たちが何を一番届けたいかを考えて、それを邪魔してまで、ガツガツしてもしょうがないと思うようになりましたね。

――「ABCお笑いグランプリ」のような若手がネタをやるイベントでMCを務める機会も多いですが、その時の山里さんは、出場する後輩のどんなボケも拾ってあげるなど、非常に優しい印象を受けます。

ありがとうございます。でも昔は「才能のある人間なんて世に出なきゃいい」と考えてましたけどね(笑)。今は「そんなこと言ってる場合じゃない」といいますか。センスのある芸人さんを敵視してムスッとしているよりも、「この面白さをわかっている」という立ち位置を取り、自分の株を上げたほうが得策だと思い始めました。あとは、面白い人たちはゆくゆくどデカいステージに行くはずだから、その時に敵だと損じゃないですか。だから、早いうちから恩を売っていくんです(笑)。

■「客前でのしゃべり」にこだわる理由

――また近年は「東野幸治vs山里亮太」や「山里亮太の140」など、ライブイベントを精力的に開催しています。テレビの仕事が多忙な中、あえて「客前でのしゃべり」を重視する理由は何なのでしょうか。

今日の最終予選(取材は「第44回ABCお笑いグランプリ」最終予選時)を見ててもわかる通り、お笑い界って、面白い若手の子たちが毎年とんでもない数出てくる世界なんです。だからこそ、笑い声をどこかでちゃんと聞いていたくて。僕にとってライブでの笑い声は「お前も芸人やっていいんだよ」と許可される、ある種「免許の更新」のようなものなんですよ。その声を聞いていないと、怖くて「ABCお笑いグランプリ」の司会なんてできません。お笑いを毎日研ぎ澄ませている子たちの前に、お笑いの訓練もしない人間が仕切って回すなんて…と思ってしまうんです。

――今年で南海キャンディーズが結成20周年を迎えます。紆余曲折在りながらも、長く続けてこられた秘訣を教えてください。

一番大きい要因は、しずちゃんの器がデカすぎたことですかね。しずちゃん側からすれば、僕の悪行に耐えかねて、20年の間で切るタイミングが何回でもあったと思うんで(笑)。それでも切らずにいてくれて、今もなお「漫才がやりたい」と言ってくれているというのが、南海キャンディーズが続いている理由だと思います。

――この20年で相方との関係性はどう変わりましたか?

普通に仲良くなりました。オフィシャルでは、しずちゃんオリンピックを目指してボクシングに打ち込んでいる時期に「私がボクシングを命がけでやっているのと同じように、山ちゃんは漫才に命がけだったんだ」と気付いたことがきっかけで関係性が変わった…とされているんですけど、東野(幸治)さんは「単純に山里が自分の仕事が充実したからだ」と(笑)。「仕事が充実して嫉妬心が減ったことを美談にしているのが気に入らない」とおっしゃっていましたね。

――20周年記念にやりたいことは?

相方がどうしても「単独ライブをやりたい」と言っているので、単独ライブをやるつもりです。

■年を取っても「芸人です」と答えられるような努力を続けたい

――最近では、山里さんとオードリー若林正恭さんの半生を描いたドラマ「だが、情熱はある」(2023年日本テレビ系)が話題になりました。

僕も毎週見ているんですけど、森本慎太郎くんと高橋海人くん(※「高」ははしごだか)があまりにもすご過ぎるなと。僕らがまだ現役だからなのか、ドラマ化されてなんとなく恥ずかしい気持ちもありますが、見ているとあの頃の感情に戻れますし、初心に帰れるんですよね。

――現在46歳で、これから50代、60代と、芸人としてどんな年の取り方をしていきたいですか?

「何をされているんですか?」と聞かれたら、「芸人です」と答えられるような毎日を過ごしていければと思っています。芸人として常に何か取り組むべきことがあって、そのために、努力する日々を続けていきたいです。

――常に「芸人」であり続けたいと。

はい、それが一番理想です。

――では、理想の年の重ね方をしていると思う先輩は誰でしょうか。

身近で「この人すごいな」と思うのは、東野幸治さんですね。年を重ねて好きなことをやって、なんか知らないですけど、デニムのブランドとか作ったりしてますからね、あの人。あんなに好奇心が年齢とともに増していく人って、もう憧れでしかないです。芸人としてあんなにカッコいい先輩が近くにいるって、本当に光栄だなと思います。とはいえ、人間的にはあんまり尊敬してないですけど(笑)。

――最後に「ABCお笑いグランプリ」を楽しみにしている視聴者へメッセージをお願いします。

今一番新しい笑い、今一番熱量のある笑いが繰り広げられるはずなので、後々世に出てくる“原石”を見つけてみてください。そして僕はそういう人たちに媚びて、擦り寄っていきます!(笑)。

取材・文=小島浩平

「第44回ABCお笑いグランプリ」司会を務める山里亮太/撮影=阿部岳人