9日、明治安田生命J2リーグ第25節のFC町田ゼルビアvs東京ヴェルディ国立競技場で行われ、2-2のドローに終わった。

首位を快走する町田(勝ち点53)と、2位の東京V(勝ち点43)による“東京クラシック”。

勝ち点10差と首位攻防という色合いは薄いものの、新国立でのJ2初開催試合、直前に実現したバスケス・バイロンの“禁断の移籍”という2つのトピックによって注目度が高まる中での一戦となった。

前節、3位の大分トリニータとのアウェイゲームを3-0で快勝し、2連勝での6戦無敗とする首位チームは、中3日での一戦に向けて先発1人を変更。累積警告で出場停止のミッチェル・デュークに代えて藤尾翔太を起用した。

一方、東京Vはホームで行われた前節のV・ファーレン長崎を1-2で競り負けて連勝がストップ。7連勝と圧倒的な強さを見せるアウェイゲームで首位撃破を目指した大一番では先発4人を変更。鹿島アントラーズから2年連続育成型期限付きでの加入となった染野唯月が、甲田英將と共に初先発での再デビューを飾った。

3万8402人の観客を集め、J2ではまず見られないド派手な試合前の演出によって高いテンションでスタートした試合は、首位チームが電光石火の一撃を見舞う。

開始2分、ボックス手前右のエリキが中央の安井拓也との浮き球のパス交換でDFを振り切ってボックス内に侵入。GKとの一対一ではマテウスの好守に阻まれるが、ボックス中央でこぼれ球に反応した藤尾が冷静に左足のシュートを流し込んだ。

リーグ屈指の堅守同士による堅い展開をいきなり裏切る入りとなった中、ここからはボールを保持して攻め手を窺う東京V、堅守速攻で応戦する町田という構図に。互いに自分たちのスタイルを出しながら幾つか際どい場面を創出する。

以降は自陣でコンパクトなブロックを敷く町田に対して、東京Vがセンターバックの運びやダイレクトパスで局面を打開。アタッキングサードでは右の甲田の個人技を軸にクロスからチャンスを作る。ボックス内での甲田、染野のシュートや北島祐二のカットインからの左足シュートでゴールに迫るが、いずれも相手の身体を張った守備に阻まれる。

一方、町田は徐々にカウンターで引っくり返すシーンを作れなくなるものの、要所を締める守備に、うまくプレーを切って相手にリズムを出させない試合巧者の戦いぶりで時計を進めていく。

さらに、したたかなホームチームは相手のミスから追加点まで奪って見せる。38分、相手陣内でのスローインの流れで稲見哲行のトラップ際を狙った下田北斗が高い位置で潰す。このこぼれをボックス手前で拾ったエリキが冷静に左でフリーの安井にラストパスを送ると、ボックス左に走り込んだ安井が右足ダイレクトでゴール左隅へ流し込んだ。

その後、前半のうちに1点を返したいアウェイチームの反撃を凌ぎ切ったホームチームが2点リードで試合を折り返した。

70%を超えるボール支配率で押し込みながらもゴールが遠い東京Vは、ハーフタイムに2枚替えを敢行。北島と千田海人を下げて齋藤功佑、加藤蓮を投入。稲見を公式戦では初のセンターバックでプレーさせるなど、リスクを冒して前に出る。

対する町田も守勢の入りを受け、52分に安井を下げて荒木駿太を投入。この交代で[5-4-1]に並びを変更。平河と翁長聖がウイングバックに配置を変えた。

町田のこの修正が効いて試合はホームチームの思惑通りに膠着。早い時間帯にゴールがほしいアウェイチームだが、連戦の疲れや焦りからイージーミスが増え始める。

この苦境を受け、城福監督は谷口栄斗の負傷交代のタイミングで切り札を投入。すると、前節の長崎戦でデビュー戦デビューゴールを挙げた東洋大学から特別指定で加入の若武者が流れを変える。

サイドに入った新井悠太は70分にゴールライン際を鮮やかに突破。角度のないところからニアポスト直撃の鋭いシュートでチャンスを作れば、直後にも左からのカットインの右足シュートでGKポープ・ウィリアムにファインセーブを強いる。

そして、新鋭の果敢なプレーで息を吹き返した東京Vは73分、相手陣内右サイドでフリーとなった宮原和也からの完璧なアーリークロスをボックス中央に走り込んだ染野が完璧なヘッドで合わせ、反撃の狼煙を上げる再デビュー戦でのゴールとする。

これで一気に試合の行方がわからなくなると、町田は失点直後にカルロス・グティエレス、稲葉修土と守備的な選手の投入で逃げ切り態勢に入る。

しかし、ダービーで負けられない東京Vの意地が町田の堅守を再び破る。83分、後方からのフィードを綱島悠斗がヘディングで背後に流すと、これに新井が反応。そのままボックス左のゴールライン際まで運んで折り返すと、手前のDFにディフレクトしてゴール前に流れる。これを染野が頭で右隅へ流し込んだ。

土壇場で2-2の振り出しに戻ったダービーは最終盤にかけて両者の意地と維持がぶつかり合う白熱の展開に。足を攣る選手が目立つなどフィジカル面の限界が感じられたが、両者気迫で戦い続ける。

6分が加えられた後半アディショナルタイムには攻め残りでワンチャンスをうかがっていたエリキがロングフィードに抜け出し、ボックス内で右足のシュートを放つが、これは枠の上に外れてダービー勝利をもたらす6試合連続ゴールとはならず。

そして、試合はこのままタイムアップを迎え、今季2度目の東京クラシックは新国立でのJ2初開催試合に相応しいスペクタクルな2-2のドロー決着となった。

FC町田ゼルビア 2-2 東京ヴェルディ
【町田】
藤尾翔太(前2)
安井拓也(前38)
【東京V】
染野唯月(後28)
染野唯月(後38)