※本記事は、東洋証券株式会社の中国株レポートから転載したものです。

香港市場の6月動向と7月の見通し

6月の香港市場…ハンセン指数は一時20,000pt回復

香港市場は、出遅れ感・割安感の強まり、米利上げ停止観測や中国当局への政策期待などを背景に、月初から上昇基調を辿った。ハンセン指数は16日に20,000ptを回復し、終値は約1ヵ月ぶりの高値を付けた。ただ、その後人民元安の進行などが嫌気され、下落に転じた。23日時点、サウスバウンド経由の中国マネーは約71億HKDの売り越しに転じた。

個別銘柄では、中国EV最大手のBYD(01211)が好調な新車販売などで買われた。一方、Investor Dayで予想を下回る業績ガイダンスが示されたことを受け、薬明生物技術(02269)は急落した。

7月の見通し…不安定な動きも底堅い展開を予想

◆ハンセン指数の7月予想レンジ…17,500~20,500pt

7月の香港市場は、上値の重い展開になりそうだが、下値も限定的なものにとどまると想定。

米FRBのパウエル議長は、年内2回の追加利上げの可能性を示唆。7月の米利上げ観測が強まっており、米ドル高・人民元安の進行が警戒されよう。回復が遅れる景気を刺激するため、中国金融当局は6月20日、10ヵ月ぶりの利下げに踏み切った。さらなる景気支援策に対する根強い期待は、相場を下支えしよう。17日に発表される主要経済指標に注目。

中国マネーの売買動向にも注目したい。上値を追う意欲は弱いが、下落局面では積極的な押し目買いを入れる逆張り志向が目に付く。

中国市場の6月動向と7月見通し

6月の中国市場…テック株に買い、利下げ効果は限定的

6月の上海総合指数は3,250pt前後の狭いレンジでもみ合い。対米ドルでの元安基調が不動産セクターなどの足かせ材料となった。

一方、深セン成分指数は20日に約2ヵ月ぶり高値の11,338ptまで買われた。中国政府によるハイテク企業の資金調達支援策などが好感された。中国人民銀行が20日、10ヵ月ぶりにLPRの1年物を3.65⇒3.55%に引き下げて金融緩和姿勢を強めたが、ほぼ織り込み済みで相場の後押し効果は限定的だった。

AI大手の科大訊飛(002230)が20日に82.00元まで買われ、連日で上場来高値を更新した。

7月の見通し…政策関連や好業績銘柄に注目

◆上海総合指数の7月予想レンジ……3,050~3,300pt ◆深セン成分指数の7月予想レンジ……10,000~12,000pt

7月の中国市場で各指数は現水準でのもみ合いとなりそうだ。4~6月期の中国マクロ統計(7月17日発表)で景気減速感が意識されれば売り圧力が強まる動きもあろう。

一方、政策期待も根強い。月後半に開催予定の中央政治局会議でインフラ建設や内需拡大など景気刺激策が議論されそうで、三一重工(600031)やBYD(002594)などの値動きを注視したい。また、6月中間期決算の発表を控え業績相場の側面も見られよう。同中間期で最大20%増益見通しの立訊精密工業(002475)に見直し買いが強まる可能性もありそうだ。

龔 静傑

東洋証券香港現法亜洲有限公司

中国株アナリスト/香港ストラテジスト

山藤 秋男

東洋証券株式会社上海駐在員事務所

中国株アナリスト/ストラテジスト

(※写真はイメージです/PIXTA)