昨年7月8日安倍晋三元首相が銃撃され、死亡してから1年が経過したが、安倍氏を中心としていた「保守勢力」の凋落が著しい。先の通常国会でLGBT理解増進法が成立すると、「日本の根本を壊す法律だ」と岸田政権批判の動きを示したが、最近の目立った動きといえば、かつての同士だった「稲田朋美元政調会長イジメ」なのだ。

 7月8日安倍氏の命日に各地で追悼の催しが行われた。稲田氏も地元事務所に献花台を設け、その様子をSNSにアップ。安倍氏の写真が飾られた献花台の約5メートル先の壁には、稲田氏のポスターが4枚、貼られていた。これに対し「安倍氏の写真より高い位置に自分のポスターを貼っているのは失礼だ」「あなたのポスターは遺影のようですね」などと、安倍氏を慕う保守勢力と思われる人物が批判した。

 7月9日には「日曜報道 THE PRIME」(フジテレビ系)に、「保守勢力のアイドル」櫻井よしこ氏とともに出演。安倍政治の遺産などについて語った。

 これに対しても、櫻井氏を「国士」、稲田氏を「売国奴」として「国士と売国奴を並べるなんて」など、保守勢力とおぼしき番組批判コメントがSNSで相次ぎ、「稲田朋美」がキーワードとしてトレンド入りした。

 保守勢力はLGBT法について、性自認が重視されれば日本の伝統が破壊されるとして、以前から反発していた。確かに稲田氏は自民党案をまとめた張本人ではあるが、自民党の政策の最高責任者は、安倍氏の側近であった萩生田光一政調会長だ。岸田首相がやや急いでLGBT法を成立させた際に、萩生田政調会長は何の抵抗もしなかった。

「萩生田氏は安倍派を継承できない状態であるのに、こんなことで政局を作っても意味がないと考えたと思います」(自民党関係者)

 全国紙政治部デスクが言う。

「保守勢力はLGBT法には以前から反対なので、反対運動をしないといけないのですが、萩生田批判をすれば、まだひとり立ちできていない萩生田氏に傷がつく。批判しやすい人が稲田氏だったのです。LGBT法の成立前後から、稲田氏の地元・福井では落選運動が起き、保守勢力の雑誌でも急に稲田批判の記事が多くなりました」

 安倍氏亡き後、次の首相候補がいないため、急速に存在感が落ちている保守勢力。弱い者イジメのように稲田批判を繰り返す姿を、安倍氏は草葉の陰でどう思っているだろうか。

(健田ミナミ)

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