2023年7月10日(月)紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて、WBB vol.23『スパイラルスパイ』が開幕。舞台写真ならびにオフィシャルレポートが到着した。


佐野瑞樹と佐野大樹による兄弟演劇ユニット WBB(ダブリュビービー)がおくる23回目の本公演『スパイラルスパイ』は、前作、vol.22『スパイスパイス』で今江大地演じる主人公・斑鳩が劇中で書き上げた新作脚本を実際に上演するという、WBB初の2作連動作品。スパイの裏方がスパイなりすましてミッションを決行しようとする学園アクションコメディだ。

主人公・三神輝を演じるのは、WBB 初出演の屋良朝幸。vol.12『ミクロワールド・ファンタジア』には振付で参加、今回は満を持しての主演だ。三神は、エージェントたちのスパイ活動をデジタル面でサポートしていた、いわゆる裏方の存在。ベテランスパイ・阿良池(佐野瑞樹)の言葉をきっかけに自らエージェントになりすまし、あるハッキング事件の犯人がいると言われる高校へ教員として潜入。先行して動いていた高校生スパイ・朱莉(平塚翔馬)をサポートする形でミッションを遂行していく。一見簡単な任務に思われたが、三神と朱莉は学園を支配するコンピューターシステムの秘密を知り…。

スパイ映画のような演劇を!」をテーマに制作されたという本作。アクションたっぷりの予告動画を WEB 上に公開するなど、公演前から期待をふくらませる演出があったが、本当のお楽しみはやはり劇場にあり。開演 10 分前に着席していると、高校生の集団が客席通路を通って舞台上へと駆け上がっていった。その面々は、平塚をはじめとする出演キャストによく似ていて…? さらに、映画館へ足を運ぶ人にはお馴染み、マナームービーに登場する、あの“泥棒”がステージに登場! キレキレのアクロバットを見せるその男の正体は……ぜひ劇場で確かめてほしい。

コメディ作品らしい賑やかな始まりから一転、本編が始まると瞬き厳禁、スパイたちのスリリングな攻防戦が突然始まった。屋良が身体能力を活かしたアクロバティックなパルクールアクションを見せれば、佐野はクールなガンアクションを決める。平塚も心くすぐるスパイアイテムを用いた見事な脱出劇を披露するなど、まさに息をもつかせぬ怒涛の展開で、「スパイラルスパイ」の世界へと一気に引き込まれた。

三神たちの潜入先である高校にも、個性豊かな登場人物が揃った。優秀な生徒が集う学園で落ちこぼれだけを集めた「ゼロクラス」の生徒役に、横田龍儀、福島海太、松本仁。大人たちを警戒しながらも三神の情熱に少しずつ心を開いていく3人の姿は、青春ドラマそのもの。そしてこのフレッシュなサイドストーリーが、スパイたちの生きる非情な世界を浮かび上がらせるのだ。劇団ホチキスの米山和仁が描いた、エンターテイメント性にあふれた演出の中にある人情劇にも、ぜひ注目してほしい。




本編後のカーテンコールでは、オールキャストによるダンスタイムが!本編でヒールな教頭役に徹した OH-SE と屋良のダンスバトルは、ダンスマニア垂涎の組み合わせであることはいうまでもない。さらに屋良、佐野、平塚による世代を超えたダンスパフォーマンスも、ここでしか見られないお宝ものだ。さらに映画で言うところのエンドロールが終わった後には、日替わりのお楽しみシーンもあるとのこと。高低差のある舞台を縦横無尽に走り回るアクションシーンはもちろん、登場人物それぞれの視点によっても物語の味わい方が変わる本作。ぜひ何度でも劇場に足を運んで「スパイラルスパイ」の世界を堪能しよう。

WBB vol.23『スパイラルスパイ』は、7月17日(月・祝)まで紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて上演。