日本と北朝鮮の「接触報道」が、永田町界隈を賑わせている。

 全国紙外信担当記者が語る。

「韓国大手紙の『東亜日報』が7月3日付けの紙面で、日本と北朝鮮の実務者が6月に中国やシンガポールで複数回接触し、日本人の拉致問題や高官級会談の開催について話し合ったと報じた。見解の違いが埋まらなかったことも伝えられ、松野博一官房長官は接触を全面否定しているが、何らかの動きがあったことはほぼ間違いないでしょう」

 そもそも今回、こうした話が波紋を広げたのは、岸田文雄首相が5月27日に開かれた「全拉致被害者の即時一括帰国を求める国民大集会」で「首脳会談を早期に実現すべく、私直轄のハイレベルで協議を行っていきたい」と表明したため。 2日後の5月29日北朝鮮は即反応し、朴相吉外務次官が朝鮮中央通信を通じて、拉致問題は「解決済み」とする従来の立場を繰り返したうえで、「一定の条件を満たせば協議は可能だ」と述べている。

 ここにきて、なぜ日朝双方に会談機運が出てきたのか。先の記者が解説する。

岸田首相サイドは国内の支持率アップが目的に他ならない。下降気味の今、何が最も効果があるのか。それはウクライナ電撃訪問で一時的に支持率が上昇したように、得意の外交で成果をあげることです。拉致問題小泉純一郎元首相の訪朝以来、21年たっても1ミリも前進していない。この難題にチャレンジし、反転攻勢にかけたい思いが強い」

 一方、北朝鮮の狙いは何なのか。

「日米韓が緊密になりつつあるところへ、日本への接近により楔を打ち込みたいのが一つ。また、相次いでミサイル発射はするものの資金繰りは厳しく、経済の疲弊で食糧難も続いている。人道支援の名目で日本からカネを引っぱりたいという思惑でしょう」(前出・記者)

 しかし自民党幹部は警戒する。

「中国、ロシアとの関係を密にする北朝鮮にすれば、欧米になびく日本は敵対勢力。拉致問題ではそう簡単に日本の意に沿う動きはしないし、基本的には『完全解決』の立場をとる。匂わせて得るものだけ得てトンズラされるだけだ」

 腹の探り合いが続きそうだ。

(田村建光)

アサ芸プラス