2022年分の確定申告の期間が2月16日から始まっています。確定申告によって控除を受けることができる制度の一つとして「医療費控除」があります。実は対象となる費用の範囲が広いのですが、周知されているとはいえず、十分に活用されていないのが実情です。本記事では、医療費控除の制度と、控除対象となる費用の範囲について解説します。

医療費控除とは

はじめに、医療費控除とは何か、おさらいしておきます。

医療費控除とは、その年に支出した医療費が一定の金額を超えた場合、その超過分の額について、最大200万円まで所得控除を受けられる制度です。

その「一定の金額」とは、所得金額に応じて以下のように定められています。

【医療費控除を受けられる基準額】

・所得金額200万円以上の人:10万円

・所得金額200万円未満の人:所得金額×5%

なお、公的医療保険や民間の医療保険等の保険金によって補てんされた分は、控除対象外となります。

医療費控除の対象となる費用の一般的な基準

医療費控除の対象となるかどうかの一般的な基準は以下の通りです。

【医療費控除対象費用の一般的基準】

・医師等による診療や治療を受けるために支払った費用

・治療や療養に必要な医薬品の購入費用

つまり、この基準をみたすものであれば、治療等に必要な費用が広く含まれるということです。国税庁によって、以下のように基準が細分化されています。

国税庁が示す基準】

1.医師または歯科医師による診療または治療の対価

2.治療または療養に必要な医薬品の購入の対価

3.病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、指定介護療養型医療施設、指定介護老人福祉施設、指定地域密着型介護老人福祉施設または助産所へ収容されるための人的役務の提供の対価

4.あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価

5.保健師、看護師、准看護師または特に依頼した人による療養上の世話の対価

6.助産師による分べんの介助の対価

7.介護福祉士等による一定の喀痰吸引および経管栄養の対価

8.介護保険等制度で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額

9.医師等による診療、治療、施術または分べんの介助を受けるために直接必要な諸費用

10.骨髄移植推進財団に支払う骨髄移植のあっせんに係る患者負担金

11.日本臓器移植ネットワークに支払う臓器移植のあっせんに係る患者負担金

12.高齢者の医療の確保に関する法律に規定する特定保健指導

こんなものまで!? 医療費控除の対象に含まれる意外な費用

医療費控除の対象となる費用には、「治療等に必要」とされるものが広く含まれています。なかには一見意外に感じられるものも含まれています。以下、そのうち代表的なものを紹介します。

マッサージ、鍼灸の費用

整骨院・接骨院で受けたマッサージ、鍼灸の費用も、医療費控除の対象となることがあります。

対象となるのは、「あん摩マッサージ指圧師」「はり師」「きゅう師」「柔道整復師」等の有資格者から「治療」の目的で施術を受けた場合です。

「治療」なので、疲労回復や体調を整える目的で施術を受けた場合は対象外です。ただし、「治療」にあたるか否か、境界が微妙なケースもあるので、整骨院等に確認することをおすすめします。

◆視力回復のための施術の費用

視力回復のための「オルソケラトロジー」や「レーシック手術」といった施術は「治療」にあたり、医療費控除の対象となります。衰えた視力を取り戻すことは「治療」にあたるからです。

これに対し、メガネコンタクトレンズを購入した場合は、原則として医療費控除の対象外です。なぜなら、それらは装着することによって視力を「矯正」するにすぎないからです。

ただし、例外があります。医師等の治療を受けるため必要なものと判断されれば、医療費控除の対象となりえます。

◆歯のインプラント治療、歯列矯正の費用

歯のインプラント治療は、失われた歯を回復するものなので「治療」にあたります。インプラント治療は保険適応外ですが、医療費控除の対象となるか否かは、保険適応の有無とは必ずしも一致しません。

ただし、治療費が不相当に高額でなく常識的な範囲内の額である必要があります。

歯列矯正も、不正咬合の治療を目的とするものであれば対象に含まれます。しかし、美容目的のものは対象外です。

通院・入院のためにかかった交通費

医師の診療・治療を受けるための通院・入院の際、公共交通機関を利用すれば、原則的に医療費控除の対象となります。「治療」を受けるのに必要な費用といえるからです。

ついでに買い物等をした場合でも、上記必要性は否定されません。

これに対し、マイカーを使用した場合のガソリン代は対象外です。なぜなら、マイカーの利用は日常生活の一環だからです。

また、タクシーを使った場合のタクシー代も原則として対象外です。通常は公共交通機関やマイカーでこと足りることが多いからです。

ただし、タクシー代も、例外的に医療費控除の対象として認められる場合があります。たとえば、一人暮らしで足が悪く、公共交通機関の最寄り駅やバス停等まで自力で移動するのが難しいといった事情がある場合です。

市販の薬、湿布、一部のドリンク等には「セルフメディケーション税制」も

これに加え、医療費控除にはもう1つ、2017年分に新設された「セルフメディケーション税制」があります。これも、意外に範囲が広く、活用の余地があります。

セルフメディケーション税制は、ドラッグストア等で所定の医薬品を年間12,000円を超えて購入した場合に、その超過した額について所得控除を受けられるというものです。

従来の医療費控除と併用できないので、両方の要件をみたせば、どちらか有利なほうを選ぶことになります。

セルフメディケーション税制の対象となる医薬品は、購入時のレシートに「★」等の印字がされます。

一般的に「医薬品」としてイメージしづらい栄養ドリンクや湿布等も商品によっては対象となることがあります。したがって、ドラッグストアで買い物した際のレシートは必ず保管することをおすすめします。

なお、インターネット通販で購入した場合は領収書が必要なので、要注意です。

(※画像はイメージです/PIXTA)