『なめ猫 on STAGE』やステージ『エロイカより愛をこめて』、LIVEミュージカル演劇『チャージマン研』など、昭和の名作をモチーフにした舞台をプロデュースし、多くのファンを楽しませているLol.。今回はトレンディドラマを題材としたシティポップなニュートロ青春群像劇。新しさを再発見させてくれる作品となっている。開幕まで10日程度に迫った某日、香月ケンジ役の杉江大志、亀井祐也役の宇野結也に意気込みや見どころを伺った。

■現代とトレンディの“ズレ”を楽しんでほしい!

――「トレンディは突然に」ということで、ちょっと変わった企画かと思いますが、出演が決まった時はどう思いましたか?

杉江:新しい企画だなと思いました。古いものをリメイクするというのが、とっても素敵だと思いましたし、僕自身も今まで経験したことのないような、おもしろそうな匂いがするなと。
この時代(80~90年代)の話って、現代劇でもないし、時代劇でもなくて、あまり見ない気がしますよね(笑)、僕も初めてなんで、そういうところがおもしろいなと。

宇野:僕はなんとなくちっちゃい頃のイメージで「トレンディドラマってこんなんだろうな」っていうイメージはありましたし、僕自身も洋服とかメガネとかファッション系はトレンディな時代のものが好きなんですよ。ただ実際いざ「トレンディとはなんぞや?」って考えたときにあんまりわからなくて。

杉江:そうだよね。ザックリしかイメージなかったよね「ロンバケ(ロングバケーション)」とか。

宇野:うん。親父の若かりし頃のイメージはあるけど、馴染みはないというか。
たった30年でこんなにも世の中って変わるんだなっていうのは改めて今回の作品見てても、今の世の中の流れを見てても感じますね。
でも男性ってあんまり大きく変わらないんだなと思いました。ファッションとか髪型とか。女性はやっぱりすごく変わってるなぁっていうね。

杉江:肩パットばーん!っていうのだしね。

宇野:そうそう!でも今また肩パットばーん!も流行って来てるもんね。時代は回るんだよね。

宇野結也

宇野結也

――トレンディドラマは恋愛関係が描かれることが多いですが、その辺りのイメージは?

宇野:悪い女が多いなぁ!(笑)引っかかりたくないなぁ!(笑)って。

杉江:(爆笑) 僕は逆にあんまり脚色されてない恋愛観だなと思いました。
やってることは脚色されてて、ちょっとやりすぎな感じはあるけど。でも、こっちに魅かれ、あっちに魅かれとか、女の子がみんな思わせぶりだとか、男もちょっと優柔不断とかは、意外と恋愛としてはそういうもんなんじゃないと思う。今の恋愛ドラマはピュアで一途なのが多い気がしますね。

宇野:確かにそう言われるとそうかも。キレイなものを見て安心したい感があるのかな?むかしはちょっと現実離れしてるけど、現実に近いものをのぞき見できるような感じが楽しいと思っている人が多かったのかもね。

杉江:青木志穏ちゃん(白崎ミユキ役)が言ってたんだけど「私の役は恋愛に奥手なキャラクターだって聞いてたのに全然そうじゃない」って。だけど、今の価値観でいうと奥手じゃないんだけど、トレンディでは周りの人たちがもっとグイグイいっているキャラクターばっかりだから、その中では奥手な方だよねって話をしてたんですよね。その辺の価値観みたいなのが、今のドラマとトレンディの時代とで全然違うなって。

宇野:それはあるかも!

杉江大志

杉江大志

――トレンディドラマのあるあるで「第一印象が最悪」というのがありますが、お二人の第一印象は?

杉江:どうだったっけ?

宇野:どうだったっけ?忘れたな(笑)。

杉江:でも舞台「HELI-X」が最初かな?

宇野:そっかそっか。……。
あんま印象ないよね?(笑)たぶんあったんやろうけど、その後共演しすぎて第一印象もう忘れとる。あ、でも器用な人だなって印象はあったけど。

杉江:僕は宇野ちゃんのバースデーイベントに出たときにも言ったんですが「体幹がしっかりしてる」なと。

宇野:(爆笑) 第一印象で「体幹しっかりしてるねぇ~」ってことある?!

杉江:ブレない殺陣をする人だなぁって。止まりがキレイ!
ただ、人柄としては最初つかめなかったのは確かかも知れない。初めての挨拶で2~3割わかるじゃん、どんな人かなって。堅そうな人なのかな?やわらかそうな人なのかな?元気そうな人か大人しそうな人かなって。1個もわからなかった。で、のちのち変なやつだってことがわかった (笑)。

宇野:大志は芝居もダンスも殺陣もウィークポイントがなくて、すべて早い。頭の回転も。たとえばアドリブでシーンをつなぐとか、セリフが台本通りに進まなかったときとかも回収が上手いし、殺陣も覚えるのが早いし、身体も動くし器用だなって。

杉江器用貧乏なんです(笑)。

杉江大志

杉江大志

――今回の共演者の方で、第一印象と実際が違ったなという方はいらっしゃいますか?

宇野:快征(桜庭虹斗役・阿部快征)は、今はまだ知ってる最中ですけど、いろんな面を持っているっていうか、もちろん好青年っぽい感もあるし、ちょっとおちゃめな後輩気質な面もあるし、たまにすごいサイコパスな瞬間もあるし(笑)。

杉江:そうそう!真面目そうに見せて真面目でもないし(笑)。でも真面目にやっている部分もあるんですよ。だけど、こういう真面目なヤツはそういうことしないよなっていうようなことをやったりする。

宇野:だってさ、快征。(阿部快征さん、取材中に近くにいらっしゃいました)

阿部:全部聞こえてるよ!(笑)

――作品のことをうかがっていきます。それぞれの役どころを教えていただけますか?

杉江:僕の役(香月ケンジ)は「トレンディドラマの主人公」っていう感じです。
今回僕らトレンディチームと現代チームとあるんですけど、そのトレンディチームの主人公ですね。
夢を持ってて、夢にひたむきで、恋愛にちょっと奥手…でもトレンディ(笑)。

宇野:僕の役(亀井祐也)は一言でいうと「いいやつ過ぎてモテないやつ」。
たぶん誰よりも恋愛はしたいんだけど、でもいいやつ過ぎてモテない。
例えば女の子が相談に来て、ちょっと押せば自分になびきそうでも、ただただ応援しちゃうみたいな。

杉江:快征と宇野ちゃんが現代チームなんですけど、トレンディに憧れてる青年が亀井なんですよ。トレンディな恋愛したいはずなのに、憧れが強すぎて恋愛になっていかないっていう。だから今回も相手がいない(笑)。

宇野:なんか俺も最初っから思ってたよ。登場人物が奇数だしね!台本もらう前から俺には来ないだろうなって自信あった(笑)。で、台本読み終わって「やっぱそうじゃ~ん!」って。

宇野結也

宇野結也

――ストーリーや内容を教えていただけますか?

杉江:トレンディに憧れている大学生(亀井)と、ごくごく普通の大学生(桜庭)がいて、なぜかそこにトレンディの時代そのまんまの人たちが現代にいるという世界観になっています。その人たちだけ30年前のまんま。30年前の常識で真剣に?ただ一生懸命生きているっていう不思議な世界観ですね。

宇野:現代っていう同じ時間軸を生きてて、目の前で同じことが起きるのに、30年前の人と現代の人だったら、それを受け取る感覚が違うっていうところがおもしろいというか、ズレが生じておもしろいという構成です。

杉江:全体的にトレンディチームが大真面目にやっていることが、現代からみるとちょっとやりすぎだよねとか、意味不明だったりっていうズレを楽しもうよっていう作品です。でも最終的にはお客さんもトレンディに対する違和感がちょっとずつなくなっていって、なんかわからんけど感動した!みたいなところにいけたら一番いいなと思っています。

――(インタビューの時点で)稽古も終盤かと思いますが、稽古場の雰囲気はいかがですか?

杉江:雰囲気はめちゃめちゃいいですよ。みんなできる人が集まっていますし。ただみんな未知なことをやっているんで、結構全員手探りを一生懸命やっている感じで、すごく建設的で楽しい現場になっているなぁと思っています。

宇野:今回こういう役をもらうのが初めてで……

杉江:結構なんか陽キャに振ってるもんね、おもろーというか。

宇野:そうそう。台本を読んだ時点から、わりとそういうのを求められているのかなと感じて、だから僕の立ち位置は“油”的存在かなと。

杉江:油?!潤滑油ってこと?

杉江大志

杉江大志

宇野:ガソリンにもなるし、トレンディと現代をつなぐ歯車をうまく回す潤滑油というか、物語を加速させたり、減速させたりというか、タイムキーパー的存在だと思うんですよ、僕の役が。やっぱり芝居もちゃんと見せたい部分もあるだろうから、そこにつなげるために、テンポの浮き沈みだったりとか、そういうのを上手くやっていきたいなと、台本を読んで、そして稽古場に入って思っているところです。

杉江:僕初めて見るんで、こんな元気なキャラをやっている宇野ちゃんを。

宇野:そうね。わりとなんかカッコいい真面目な感じの役が多いからね。

杉江:だからおもしろいなって思って。こっちの方が本人が活きるなって思いました。

宇野いえいえ、全然そんなことはありません。素の僕は真面目で清純ですから(笑)。

――今回「トレンディドラマ」がテーマですが、変わった演出とかはありますか?

杉江:横並び正面です!!

宇野:なかなか無くないですか?カーテンコール以外で、横並びで全員前を向いているシーンって。それをやっちゃう。

杉江:それがトレンディです!なんかわかんないけど、並んじゃう(笑)。

宇野:演出のキムラさんに言われました「信じてくれ!」って。「これがトレンディだ!」と(笑)。俺たち演者は見えないけど「横に並んでいる姿がとてもトレンディだから、恐れない欲しい」って言われて(笑)。

宇野結也

宇野結也

杉江:今までの役者人生で培ってきた経験で、生理的に、横並びは普通かわしたくなるんですよ。

宇野:だよね。奥行使えよって思っちゃう。でも奥行使わないんですよ、トレンディは(笑)。
あと女性と近距離での会話がない。話すときはちょっと距離が遠めみたいな。

杉江: 普通の会話がちょっと遠い。遠くで話すっていうのはトレンディかも知れない。
「なんでだよ~~~!」ってわざわざ叫ぶみたいな。

宇野:あの……長々とトレンディの面白さを話してるけど、これきっと理解できないですよね! なので観に来た方がいいですよ(笑)。俺たちが正解出すんで、この記事読んで「ん?」ってなっている人は全員来てください(笑)。

杉江:(爆笑) そうだよね、言葉で読んでハテナ?飛んでる人は多いと思うんです。でも観に来たら「なるほど~」って答え合わせができますんで。

――演出家のキムラ真さんはどんな方ですか?

杉江:僕はキムラさんとご一緒するの3回目なんですけど、僕が出会って来た演出家の皆さんの中で、一番稽古が好きかも知れない。稽古が好きっていうのは、稽古が長いとかじゃなくて、役者と一緒に稽古をするのがこんなに好きな人はいないなって感じですね。キムラさんは僕らに色々わかりやすく伝えてくれますし、伝わってなかったら伝わるまでちゃんと伝えてくれるっていうか。わかってないなって顔してたら、言葉を変えて伝えようとしてくれる。

宇野:僕は、キムラさんは初めてなんですけど、気になることがあったらすぐその場で解消しようと努めてくれて、役者側にも演出側にも今日不安に思ったことを今日すべて回収してくれる感があります。家に帰って「あれはどういう意味だったんだろうなぁ」とか、「どうしたらいいのかなぁ」っていう不安がないっていうのは、役者としてはすごいありがたいことですね。稽古場ってある意味そうあるべきなんだなって。稽古して不安が残って帰るんじゃなくって、家に帰ってあの部分をさらに良くするにはどうしたらいいかなぁって建設的に考えられる時間になるんですよ。プラス階段を1つ2つ上るような稽古をしてくれてるのはすごいありがたいなと思いますね。

■観てる人の現状によって受取り方がすごく左右される作品なんじゃないかな

――最後に、皆さんへのメッセージをお願いします。

宇野:インタビューを読んでいただきありがとうございます。先ほども話に上がったんですけれども、こういう役をいただくのは初めてで、すごく楽しく稽古をやれています。
この作品は、ある意味すごく大きいものを投げかけるなぁというか。なんか最近はメッセージ性が強く局所的にある作品が多いとは思うんですけど、トレンディは結構ざっくばらんにポンっとメッセージが飛んでくるような作品な気がしてて、観る人の今の心情によってすごく左右される作品なんじゃないかなぁっていう風に思います。
シンプルに楽しめると思うし、でもどこか胸が熱くなるし、目頭がグッとなるというか、そんな作品になっていると思います。役者・宇野結也として新たな面を見てもらえると思いますので、ぜひご観劇いただけると嬉しいです。劇場でお待ちしております!

杉江:今、宇野ちゃんが言っていたみたいに、すごくシンプルな、気楽に観られる作品になっていると思っています。最近の物語って結構複雑なものが多かったり、あっちこっちに伏線があるようなものも多いと思うんですけど、トレンディドラマは真っすぐ王道で、観てる人がなんとなく予想がつくところに、ちょっと予想外があったりすることが逆に良さだと思っています。
物語は難しくないんだけど、みんなすごく真っ直ぐで熱くて泥臭くて、そこで起きていることにただただ一喜一憂するっていうシンプルさが、すごくいいところで。だからこそ、トレンディを知ってる人も知らない人も、最終的に楽しかったなと思ってもらえると思いますし、感動してもらえるものが出来上がってきていると思っていますので、「トレンディってなんぞや?」と思っている方は、頭で考えてもたぶんわからないので、観に来てもらえればきっと謎は解けると思うんで、ぜひ観に来ていただきたいなと思います!
真実はいつも……劇場に(笑)。

宇野:今のはなかったことにしてください(笑)。

取材・文=トクモトショウコ 撮影=新井鏡子

左から 宇野結也、杉江大志