2022-23シーズンのイギリスサッカー界における差別的行為の報告が過去最高を記録したようだ。11日、イギリスメディア『BBC』が伝えている。

 反差別慈善団体『キック・イット・アウト』は、イギリス国内のアマチュアサッカー、プロサッカーソーシャルメディア全体から、過去最高となる1007件もの差別的行為の報告を受けたと発表。同団体によると報告は前シーズンに比べて65.1%増加しており、『BBC』では、CEOを務めるトニー・バーネット氏のコメントとともに報告内容を記載した。

 報告書では、全体の約半数となる49.3%が人種差別であることや、ネット上での差別的行為が74件から281件に増加していること、性差別的行為/女性差別に関する報告は16件から80件に増加して前年から400%上昇したことなどを伝えている。一方で、同団体は急激な増加が、「差別的行為に対する意識の向上と、報告意欲の向上」を示すものであるとも指摘。ファンやクラブに向け、撲滅活動へのさらなる協力を呼びかけている。

 トニー・バーネット氏は、「報告の大幅な増加は憂慮すべきことだ」と驚異的な上昇率に危機感を顕示。「クラブ、リーグ、運営組織は現在、報告データを共有することを義務付けられていないため、私たちはまだ全体像を把握していない」と問題点を掲げながら、現体系の早急な改善を促した。

 近年はサッカー界で差別的行為が多発しており、5月21日に行われたラ・リーガ第35節・バレンシアレアル・マドリードではブラジル代表FWヴィニシウス・ジュニオールが人種差別の標的に。スタンドに詰め掛けたバレンシアサポーターの一部から差別発言を受け、カルロ・アンチェロッティ監督、チームメイトらが苦言を呈していたほか、ヴィニシウスの母国であるブラジルのルラ大統領やブラジルサッカー連盟(CBF)も非難の意思を表明するなど、大きな問題となっている。

プレミアリーグで使用された人種差別に対する抗議のフラッグ [写真]=Getty Images