太陽表面で19日ごろから、巨体な黒点「AR2192」が観測され始めた。中国では、自国が有人宇宙飛行や月探査を熱心に行っていることもあり、天体現象に関心を持っている人が多い。太陽を観察するには、強烈な光線から目を保護するために、特別なフィルムなどが必要だが、大気汚染のために肉眼で黒点を見ることができたとして「ありがとう!」などと“感謝”する声が湧き起った。一向に改善せぬ大気汚染についての自嘲であり、当局への皮肉だ。ただし、専門家は「太陽を裸眼で直接観測することはお勧めできない」と警告している。

 日食や月食、さらに流星群や太陽表面の大規模な黒点現象などが発生すると、中国メディアはかなり詳細な解説記事を発表する。「AR2192」についても、「24日までに、面積は地球表面積の52倍に成長」、「黒点とは体表表面の灼熱した気体の巨大な渦」、「温度は約摂氏4600度で、周囲の体表表面温度よりも1000-2000度低い。そのため、暗い斑点のように見える」、「11年ごとに、爆発的な活動期を迎える」などと紹介した。

 黒点の出現にともない、インターネットでは各地から「肉眼で見ることができた」といった書き込みが寄せられた。

 法制晩報は、北京天文館関係者を取材。館長助手の寇文氏は「最近は北京の汚染霧はひどい。汚染霧が発生して太陽光が比較的弱くなり目への刺激が少ない場合、肉眼で直接、この現象を観測することができるでしょう。一般には、午後や早朝など、汚染霧が特別にひどい場合です」と説明した。

 ただし「肉眼で長時間にわたり太陽を直接に観測することは、お勧めできません。目を傷めてしまうことになります」と述べた。

 朱進館長は、「できたら、肉眼で太陽を直接観測するのは、やめた方がよいでしょう。非常に危険です。汚染霧で太陽の光が弱められていたとしても、リスクがありますから」と注意を促した。

 中国メディアは太陽黒点について「地球の磁場にも影響を与える」として、黒点の活動が活発化した場合、悪天候が増えたり、場合によっては、電子機器などに悪影響を与える場合があると紹介。黒点は太陽の自転と地球の公転のために東から西に向かって移動する。「AR2192」は19日ごろから観測され始め、28日ごろには地球から見て太陽の中心部に達して、最も観測しやすくなるという。

 写真は26日午後、新疆ウイグル自治区コルラ市で撮影された太陽。右下に「AR2192」がはっきりと見える。CNSPHOTO提供。

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◆解説◆
 中国の大気汚染で、最も問題になっているのがPM2.5などの微粒子だ。そのため、気体による汚染に比べて、視界がはるかに悪くなる。

 中国各地で「毒の霧」について「肉眼で黒点が見えた。ありがとう!」などの書き込みが相次いだのは、明らかに自嘲や当局への皮肉だ。10月8日に月食が発生した際には、「大気汚染で見えない!」などの嘆きや怒りの声が殺到した。(編集担当:如月隼人)