上半期、唯一の10万台超えを達成して2年連続でトップに立ったホンダのN‐BOX。まさにシン・国民車である
上半期、唯一の10万台超えを達成して2年連続でトップに立ったホンダのN‐BOX。まさにシン・国民車である

今年上半期(1~6月)の車名別国内新車販売総合ランキングは、ホンダの軽スーパーハイトワゴン「N‐BOX(エヌボックス)」が11万2248台(全国軽自動車協会連合会調べ)をマークし、2年連続トップとなった。庶民の暮らしを支える強い味方が軽自動車なのだが、その維持費は意外にも割高なのだという。カーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏がぶった斬る。

【写真】マイチェンで鬼売れの軽自動車

*  *  *

軽自動車は、小型/普通車に比べてボディが小さく制限され、エンジン排気量も660cc以下だ。その代わり税金が安い。自家用軽乗用車を新車で購入した場合、毎年納める軽自動車税は年額1万800円だ。自家用小型/普通乗用車では、エンジン排気量が1000cc以下は2万5000円、1001~1500ccは3万500円、1501~2000ccは3万6000円という具合だから、軽乗用車は半額以下に収まる。

購入時と車検を受ける時に納める自動車重量税も同様だ。購入時に支払う3年分の場合、エコカー減税対象外の車種で、軽乗用車は9900円になる。小型/普通乗用車は、車両重量が1000kg以下は2万4600円、1001~1500kgは3万6900円だから、自動車重量税も軽乗用車は半額以下だ。

ところが自賠責自動車損害賠償責任保険)保険料は異なる。購入時に支払う37ヵ月分の場合、軽乗用車は2万4010円で、小型/普通乗用車は2万4190円だ。ほぼ同額で、軽乗用車は180円しか安くならない。

ちなみに、2000年における37ヵ月分の自賠責保険料は、軽乗用車が2万7550円で、小型/普通乗用車は3万8450円であった。2010年は軽乗用車が2万6280円で、小型/普通乗用車は3万1600円だ。2000年の時点では、軽乗用車自賠責保険料は小型/普通乗用車よりも1万900円安かったが、2010年には差額が5320円に縮まり、2023年4月1日以降は前述の180円になった。

上半期の総合ランキング4位は、8万85台を販売したダイハツの軽スーパーハイトワゴン「タント」。マイチェンで鬼売れ
上半期の総合ランキング4位は、8万85台を販売したダイハツの軽スーパーハイトワゴン「タント」。マイチェンで鬼売れ

このように差額が縮まった理由は、税金と自賠責保険料では、算出の仕方が異なるからだ。自賠責保険料は、クルマの種類(軽乗用車、小型/普通乗用車、貨物車など)に応じて、事故の加害者になるリスクの計算を行ない、それに基づいて保険料を設定している。

つまり2000年頃は、軽乗用車のリスクが小型/普通乗用車よりも低く、保険金の支出も少なかったから、自賠責保険料も安かった。それが今は、軽乗用車のリスクが小型/普通乗用車と同等に高まり、保険料も同程度になった。そうなると今後のリスク次第では、軽乗用車自賠責保険料が、小型/普通乗用車を上まわることも考えられる。

しかしこれは維持費を安く抑えることを重視する軽自動車制度の趣旨に反する。自賠責保険料は税金とは異なるが、加入の義務付けられた強制保険で、ユーザーから見れば税金に近い性格を備えるからだ。

しかも軽乗用車は、公共の交通機関が未発達な地域で多く使われ、年金で生活する高齢者が日常的な買い物や通院に利用している。軽自動車は、自家用乗用車であっても、使われ方が福祉車両や公共の交通機関に近い。従って軽乗用車自賠責保険料は、リスクだけで判断せず、税金に準じた考え方に基づいて小型/普通乗用車よりも常に安く抑えるべきだ。2000年頃と同様、小型/普通乗用車の70%かそれ以下に抑えたい。

なお軽乗用車自賠責保険料の推移を見ると、37ヵ月分の場合、2000年が2万7550円、2010年は2万6280円、2023年は2万4010円と下降を続けている。自賠責保険の保険金支出が減ったためだが、小型/普通乗用車は、2000年は3万8450円で、2023年は2万4190円だから1万4260円も安くなった。

軽自動車税にも注意したい。今でも安いが、以前の軽乗用車は年額7200円であった。それが2015年4月1日以降の届け出では、1.5倍に増税されて1万800円になっている。その一方で小型/普通乗用車自動車税は、2019年10月1日以降、1000cc以下は以前の年額2万9500円から2万5000円へ、1001~1500ccも3万4500円から3万500円へ値下げされている。

以上のように軽自動車は本来庶民の味方なのに、最近の維持費は小型/普通乗用車に比べて相対的に割高になっている。国の視点ではなく、ユーザーの立場から、軽自動車の維持費を全般的に見直す必要がある。国は電気自動車関連の補助金をバラまく前に、生活に不可欠な軽自動車の維持費を抑えるべきだ。

●渡辺陽一郎(わたなべ・よういちろう) 
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務めた〝クルマ購入の神さま〟。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

写真提供/本田技研工業 ダイハツ工業

上半期、唯一の10万台超えを達成して2年連続でトップに立ったホンダのN‐BOX。まさにシン・国民車である