新シーズンはエリック・テン・ハフ体制2年目を迎えるマンチェスター・U。昨シーズンはリーグ戦で3位となり、チャンピオンズリーグ(CL)の出場権を獲得。カラバオ・カップで優勝を果たし、6年ぶりの主要タイトルを手にするなど、就任初年度として“合格点”と思える成績で終えたテン・ハフだが、イギリス紙『ザ・サン』は、新シーズンに向けて解決しなければならない7つの問題をピックアップしている。

[写真]=Getty Images

◆■デ・ヘアが退団も新たなGKはまだ

 8日、クラブを12年に渡って支えてきたスペイン人GKダビド・デ・ヘアの退団が発表された。後釜には様々な選手の名前が挙がっており、現在はインテルに所属する元カメルーン代表GKアンドレ・オナナは獲得が間近だと言われているが、今のところ正式決定には至っておらず、マンチェスター・Uは日本時間13日(木)0:00にノルウェーのオスロで行われるリーズとのプレシーズン初戦に正GKがいない状態で臨むこととなる。

 なお、移籍市場に精通するイタリア人記者のファブリツィオ・ロマーノ氏によると、マンチェスター・Uインテルはオナナについて交渉を行っており、クラブ間合意に向けて「水曜と木曜が重要な日となる」と報じている。日本代表GK鈴木彩艶浦和レッズ)への関心も噂されているマンチェスター・Uだが、こちらは獲得したとしてもバックアップだと見られている。なんにせよ、チームの屋台骨となる守護神は早めに確保しておきたい。

◆■ケイン獲得が座礁し“9番”が不在

 昨シーズンが終わる前から“9番”が必要だという意見を隠さなかったテン・ハフ監督。クラブは長らくトッテナムイングランド代表FWハリー・ケインを追っていたが、トッテナムのダニエル・レヴィ会長が立ちはだかり、1億ポンド(約180億円)を要求されたことを受け、早々に獲得レースから撤退したと報じられている。

 マンチェスター・Uケインの代わりに目をつけたと言われているのが、アタランタに所属するデンマーク代表FWラスムス・ホイルンドだ。現在20歳のホイルンドは母国コペンハーゲンの下部組織出身。2021年夏にトップチーム昇格を果たし、その後、オーストリアのSKシュトゥルム・グラーツを経て、昨年夏にアタランタに加入。加入初年度からリーグ戦32試合で9ゴール4アシストを記録したことで、その評価を高めた。

 アタランタはホイルンドに6000万ユーロ(約93億円)から7000万ユーロ(約108億円)の価値があると考えているようだが、マンチェスター・Uはそうではない。実際、イタリア人記者のニコロ・スキラ氏によると、マンチェスター・Uはすでに4000万ユーロ(約62億円)のオファーを出し、断られているという。クラブはメイソン・グリーンウッドやアマド・ディアロを取引に盛り込み、値下げを狙っているとの報道もあるが…?

◆■ラッシュフォードの新契約はまだ

 ストライカーの一人であるマーカス・ラッシュフォードは、昨シーズン大爆発を見せ、公式戦56試合で30ゴールというキャリア最高の数字を叩き出したが、ついに新契約に合意しないまま、契約の最終年に突入した。このままシーズンが始まれば、テン・ハフは記者会見の度に交渉の進捗状況を聞かれることとなり、それは避けたいはずだ。

 ラッシュフォードが新契約に合意していないのは、新しいオーナーが誰になるか、そのオーナーが何をクラブにもたらせるのかを見極めたいからだと言われている。

◆■話し合いは行われるも新オーナーが決まらず

 昨年11月にクラブが戦略的選択肢を検討するプロセスを開始したことを発表して以来、新オーナー候補による入札や話し合いが行われているが、まだ決着は着いていない。

 現在、クラブの買収に名乗りをあげているのはカタールイスラム銀行(QIB)の会長を務めるシェイク・ジャシム・ビン・ハマド・アール・サーニー氏と、イギリスの化学会社『INEOS(イネオス)』のCEOを務めるサー・ジム・ラトクリフ氏だが、オーナーであるグレイザー家との交渉がどうなっているかは不透明な状況だ。

◆■グレイザー家への抗議者は増える一方

 試合の度にスタジアムでグレイザー家への抗議活動を行っていた人々は、ワールドカップ期間中に発表された朗報を歓迎したが、そのデッドラインがどんどん伸び、お預けを食らっている状態が続いており、不満は大きくなる一方だ。

 このまま行けば抗議を行う人々は雪だるま式に増えていくと思われるが、テン・ハフも試合日にファンがオーナーへのデモ行進を行い、横断幕を掲げてチャントを歌う姿ばかりは見たくないだろう。しかし、当然ながらファンには抗議をする権利があり、グレイザー家がクラブを手放すまでそれは続くに違いない。

◆■マグワイアら余剰戦力を誰も買ってくれない

『ザ・サン』によると、マンチェスター・Uの帳簿状況を考えると、クラブが新シーズンの選手獲得に向けて使える資金は1億2000万ポンド(約216億円)ほどだという。そのうち5500万ポンド(約100億円)はすでにメイソン・マウントに費やされているが、残りの資金で十分なGKとストライカーを獲得するというのは無理な話だろう。

 これを増やすためにも余剰戦力の売却を進めたいテン・ハフだが、ハリー・マグワイア、アントニー・マルシャル、フレッジ、スコット・マクトミネイといった選手たちへのオファーは届かない。なお、イギリス紙『ガーディアン』によると、CL出場権を獲得したことでマグワイアの給与が上がり、それも売却が難しくなっている要因になっているとのことだ。

◆■マンチェスター・Cとの差は大きい

 昨シーズンの就任初年度をカラバオ・カップ優勝というタイトルを手にして終えたテン・ハフ。しかし、ローカルライバルであるマンチェスター・Cにはリーグ戦で勝ち点14差をつけられ、6月3日に行われたFAカップ決勝では1-2で敗北。埋めなければならない差はまだ大きい。

 前述の通り、プレシーズンの段階で問題を多く抱えるテン・ハフだが、デイヴィッド・モイーズにとっても、ルイ・ファン・ハールにとっても、ジョゼ・モウリーニョにとっても、オーレ・グンナー・スールシャールにとっても問題は山積みだった。2年目となる新シーズンで、どのような立ち回りを見せるのか、“赤い悪魔”と指揮官に注目だ。

(記事/Footmedia)

テン・ハフ体制2年目を迎えるマンチェスター・U [写真]=Getty Images