ラグビー日本代表は同じ轍を踏まない。オールブラックスXVとの初戦は6-38の完敗に終わったが、このままでは終われない。7月15日(土)・熊本で、今度は日本代表として未来のオールブラックスに挑む。

初戦の完敗にはエクスキューズもある。9月8日(金)に開幕する『ラグビーワールドカップ2023』にピークを持っていきたい日本代表と、ニュージーランド代表に不測の事態が起こった際にメンバー選出の可能性があるオールブラックスXVとではコンディションとモチベーションに開きがあった。しかもジャパンXVは体を苛め抜いた浦安合宿を打ち上げたばかり。タックルをはじめディフェンスに時間を費やしてきたが、アタックはほとんど手つかずのまま試合に臨んだ。ノンキャップ5名が試合登録メンバーに名を連ねたジャパンXVが敗戦したからと言って、『RWC 2023』に不安を募らせる必要はない。だが、それでもノートライに封じられたのはいただけない。

リーチ マイケル (C)スエイシナオヨシ

SH流大と共同でゲームキャプテンを務めたFLリーチ マイケルは試合後、このように反省点を口にした。
「結果として負けは負けなので、そこは認めないといけない。新しい選手も入ってきて自分たちの強みをどう出すか考えないといけない。今日出た反省点を修正できるのが、このチームの強み。来週も試合があるので修正していきたい。
(喫緊の課題は)ボールを持っていないところの動き。セットプレーへの予測、モメンタムがある時にどうやってボールを継続するかというところ」

ノンキャップながら、豊富なワークレートに裏付けされたボールキャリージャッカルなど、出色のパフォ―マンスを発揮したFL福井翔大は「悔しいですね。前半は勝てるビジョンがあったし、すごくきつい練習を乗り越えてきたので、純粋に悔しい」と悔しさを露わにしつつ、手応えも語った。
「むちゃくちゃ緊張したが、背水の陣でやるしかなかった。バックローはそういうポジションなので。ラグビーをはじめてからずっと憧れていた桜のジャージーを着て、重圧を感じたこともあったが、そもそもそんなものを感じるほどのプレーヤーではないと思ってやるしかなかった。
(ジョセフHCが)褒めてくれたと聞いていたので、ありがとうございます! まあここから。
(満員の観客の前でプレーして)本当に幸せ。ラグビーをやってきて本当に良かった。パナソニックとは違い、会場のみなさんが応援してくれて、やっとここまで来れたなと思った」

ジェイミー・ジョセフHC (C)スエイシナオヨシ

初戦の敗戦をどう生かすか。次が大事になる。ジェイミー・ジョセフHCはジャパンXVではなく、日本代表として戦う意義についてコメントした。
「次は日本代表として戦うことについてはチーム内でも話した。先週のパフォーマンスは自分たちのベストではなかったという部分についても話した。今回のメンバー選考では経験がある選手がたくさんいる。パフォーマンスを上げないといけないということも理解している。これから『RWC』まで2か月ある。我々は『RWC』でしっかりピークを迎えることを意識している。オールブラックスXVと戦えるのはいい機会。自分にとって日本代表とジャパンXVとでは違う感情がある。最終的な自分の仕事は変わらないが、しっかりパフォーマンスを上げてチームをまとめていきたい。『RWC』でしっかり勝つことが自分の仕事だと思っている」

オールブラックスXVとの第2戦に向けて、ジョセフHCは先発を7人入れ替えたメンバーを登録した。

【日本代表】
1稲垣啓太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)45
2堀江翔太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)68
3具智元(コベルコ神戸スティーラーズ)21
4ジェームス・ムーア(浦安D-Rocks)13
5アマト・ファカタヴァ(リコーブラックラムズ東京)0
6ジャック・コーネルセン(埼玉パナソニックワイルドナイツ)12
7福井翔大(埼玉パナソニックワイルドナイツ)0
8姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)25
9齋藤直人(東京サントリーサンゴリアス)11
10李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)6
11セミシ・マシレワ(花園近鉄ライナーズ)2
12中村亮土(東京サントリーサンゴリアス)33
13ディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)10
14ジョネ・ナイカブラ(東芝ブレイブルーパス東京)0
15松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)47
16坂手淳史(埼玉パナソニックワイルドナイツ)33
17クレイグ・ミラー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)9
18ヴァル アサエリ愛(埼玉パナソニックワイルドナイツ)23
19ヘル ウヴェ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)16
20リーチ マイケル(東芝ブレイブルーパス東京)78
21流大(東京サントリーサンゴリアス)30
22松田力也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)29
23長田智希(埼玉パナソニックワイルドナイツ)0
※所属チームの後の数字は代表キャップ数。

メンバー選考について、ジョセフHCはこう説明した。
「先週は新しい選手が入ってきて、タフなコンディションでタフな試合だった。今まで代表で試合をしていないにもかかわらず、アマトは素晴らしいパフォ―マンスをしてくれた。普段とは異なるポジションにもかかわらず、LOとしてよくやってくたれ。このレベル、このインテンシティでまた見たいと思い、今回もメンバーに選んだ。福井もそう思わせたひとり。李承信は前回メンバーに入っていなかったが、彼らにしっかりチャンスを与えて、『RWC』までしっかりメンバーを見極めていきたい」

李承信 (C)スエイシナオヨシ

SOの争いについて問われると、指揮官はこのようにコメントした。
「このチームに10番は3人いる。山中(亮平)は15番やっているが、10番もカバーできると思っている。彼は10番としてのスキルもあるし、ポテンシャルがあると思っている。『RWC』に向けて人数も限られている中、ジャパンプレーができ、しっかりコントロールできるSOを選んでいく必要がある。前回は松田、(小倉)順平に機会を与えたので、今回は李承信にプレータイムを与えようと思っている。彼はキックでいいものを持っている。暑い中ではキッキングゲームは重要。アタックも重要だが、バランスを取ることも大事。彼はフランス戦、イングランド戦などビッグゲームも出ているし、タフな選手。次の試合ではそういう部分を出してもらえればと思っている」

CTBに入った中村が李の助けになると言う。
「亮土がチームに入ることによって、チームに自信が生まれると思っている。コミュニケーションもいい。李承信の助けとなるだろう。彼自身スキルがあるし、ワークレートも見せてくれると思う」

ジョセフHCは経験があるキープレーヤーたちへの信頼感を述べた。
「初戦は経験がない選手が多かったこともあり、ハーフタイムで選手たちが静かになってしまった面はある。これからキープレーヤーが入れることでコミュニケーションは良くなってくると思う。稲垣、姫野、齋藤、亮土が入ってくることで、コミュニケーションは上がってくると思う。もちろん彼らにとって今回が日本代表としては最初の試合。すべてうまくいくとは思っていないが、しっかりコミュニケーションを取ってやれれば」

姫野和樹 (C)スエイシナオヨシ

ジョセフHCはHO坂手とともにNO8姫野を共同ゲーム主将に据えた。
「和樹にはいつも感心している。彼には安定感がある。これはリーダーとして大事なこと。『スーパーラグビー』でも『RWC』でもトヨタでもキャプテンを経験している。彼の活躍を楽しみにしている。彼はチームに対して『パッションを持ってやっていこう』と伝えてくれている。そういう部分を和樹がリードしてくれることを期待している」

初戦の反省を受けて、第2戦ではアタックフォーカスしてきた。
「(初戦は)ディフェンスについては自分としては満足している。ポジティブな部分がたくさんあった。アタックの部分では良くなかった。ターンオーバーされたり、ミスがあったり、ボールを取り返した後、ポジショニングをしっかりすることが大事。ポジショニングの部分でスキャンできずにパニックになってボールを失ってしまった。アタックで自信を持つことが大事だし、ジャパンラグビーではアタックが大事。ブラウニー(トニー・ブラウンAC)が今週しっかり時間をかけてアタックのトレーニングをしてきたので、ジャパンの強みであるアタックがしっかり出せると思う」

(写真左より)FLビリー・ハーモン、レオン・マクドナルドHC

対するオールブラックスXVを率いるレオン・マクドナルドHCは「日本は勝利に飢えているだろうし、全力を尽くしてくるだろう。我々は先週のパフォーマンスからさらに成長させる必要がある」と勝って兜の緒を締めた。スタメン7人を入れ替え、7人のキャップホルダーを並べた布陣で連勝を狙う。

オールブラックスXV】
1エイダン・ロス(チーフス)
2ジョージ・ベル(クルセイダーズ)
3ジャーメイン・アインスリー(ハイランダーズ)
4ナイトア・アクオイ(チーフス)
5クインテン・ストレンジ(クルセイダーズ)
6アキラ・イオアネ(ブルーズ)
7ビリー・ハーモン(ハイランダーズ)
8ピタ・ガス・ソワクラ(チーフス)
9ブラッド・ウェバー(チーフス)
10スティーヴン・ペロフェタ(ブルーズ)
11ジョナ・ナレキ(ハイランダーズ)
12ジャック・グッドヒュー(クルセイダーズ)
13ビリー・プロクター(ハリケーンズ)
14AJ・ラム(ブルーズ)
15ルーベン・ラヴ(ハリケーンズ)
16タイロントンプソン(チーフス)
17オリー・ノリス(チーフス)
18ジョージダイア―(チーフス)
19キャメロン・スアフォア(ブルーズ)
20クリスチャン・リオ=ウィリー(クルセイダーズ)
21フォラウ・ファカタヴァ(ハイランダーズ)
22アレックス・ナンキヴェル(チーフス)
23サム・ギルバート(ハイランダーズ)

リポビタンDチャレンジカップ2023』日本代表×オールブラックスXV は7月15日(土)・えがお健康スタジアムにてキックオフ。チケット発売中。試合の模様はBS日テレで生中継。日本代表はその後『リポビタンDチャレンジカップ2023 パシフィックネーションズシリーズ』へ突入。7月22日(土)・札幌ドームでのサモア代表戦、7月29日(土)・東大阪市花園ラグビー場でのトンガ代表戦、 8月5日(土)・秩父宮でのフィジー代表戦を経て、8月15日(火)に『RWC 2023』を戦う33名のメンバーを発表する。

取材・文:碧山緒里摩(ぴあ)

リポビタンDチャレンジカップ2023/リポビタンDチャレンジカップ2023 パシフィックネーションズシリーズのチケット情報
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福井翔大