上野の東京文化会館で、東京二期会のヴェルディ《椿姫》が13日に初日を迎えた。開幕前日のゲネプロ(公演直前の通し稽古)を取材した。

2020年2月に、《新制作》にて上演され、話題になったプロダクション。物語の見せ方は総じて正統的だ。ただし、巨大な椿の花弁が設えられた非現実の幻想的な舞台美術と、19世紀イメージのリアルな衣裳が、不思議な好バランスを生んでいるのは独自の感覚(装置:松井るみ、衣裳:前田文子)。

第2幕第2場(フローラの夜会)からは天井に鏡が吊られ、ステージを俯瞰する視点が加わるのも面白い。その夜会シーンでは宝塚出身者を含む男女10人のダンサーによる妖艶でエキゾティックなダンスも見どころとなっている。

大きな注目が新鋭オペラ指揮者アレクサンダー・ソディーの日本でのオペラ・デビュー。公演チラシには「カルロスクライバーの再来!」の見出しも躍る。1982年英国オックスフォード生まれ。現在マンハイム国民劇場音楽総監督を務め、目下、欧米の名門劇場を席巻中だ。昨年の東京・春・音楽祭で初来日(東京都交響楽団とのマーラー交響曲第3番)。

若々しい颯爽としたテンポでぐいぐい引っ張るかと思えば、旋律や言葉に寄り添ってたっぷりと歌わせる。小節単位で緩急自在という印象のドライブにドキドキ。メリハリの効いた演奏は「再来!」の呼び声もなるほどと思わせる。第2幕のヴィオレッタとジェルモンの二重唱は圧巻だ。次々に登場する新しい楽想が二人の心情の移り変わりを描く名シーンを、切迫感のある表情で濃厚に表現していた。

この日のゲネプロは7月15(土)、17日(月・祝)出演のキャスト陣によるもの。主演のヴィオレッタは種谷典子(ソプラノ)。幕ごとに、鮮やかなコロラトゥーラから迫真のピアニッシモまでタイプの異なる歌唱が要求される難役を、華やかな声と繊細な歌い口で見事に歌い切った。第1幕のアリア〈花から花へ〉の最後は、聴かせどころとなっている(楽譜にはない)高音のミ♭も鮮やかに。アルフレードは山本耕平。持ち前の2枚目な声と容姿が、見ていてちょっとイライラする田舎貴族のボンボンぶりにぴったりだ。

東京二期会の《椿姫》は7月17日(月・祝)まで全4公演。全3幕の作品だが、25分間の休憩が1回だけ、第2幕第1場と第2場の間に入る。上演時間は約2時間30分(休憩含む)。

二期会創立70周年記念公演
東京二期会オペラ劇場「椿姫」

■チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2240981

7月13日(木) 18:30
7月15日(土) 14:00
7月16日(日) 14:00
7月17日(月・祝) 14:00
東京文化会館 大ホール

台本:フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ
作曲ジュゼッペ・ヴェルディ
指揮:アレクサンダー・ソディー
再演演出:澤田康子

文:宮本明

東京二期会オペラ劇場「椿姫」