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ミウラから縦置きのカウンタックへ進化

壮観なグランドツアラーランボルギーニエスパーダは、1968年から1978年まで提供されたが、ラインオフしたのは1227台に過ぎない。初期のランボルギーニが抱えていた弱点は克服されつつ、ブランドらしい強烈な個性を宿している。

【画像】ランボルギーニ・エスパーダとアヴェンタドール 歴代のミドシップ・モデル イスレロも 全140枚

しかしエスパーダ以降、フロントにV型12気筒エンジンを搭載したモデルを同社は作っていない。獰猛なオフローダー、LM002を除いて。

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ランボルギーニ・アヴェンタドール・ウルティマエ(2022年/欧州仕様)

他方、ミドシップのミウラ1974年カウンタックへ進化。横置きから縦置きへエンジンの搭載方向が改められ、LPの語源にもなった。

プロトタイプが発表されたのは、1971年スイス・ジュネーブ・モーターショー。LP500を名乗り、当初は5.0LのV12エンジンが載ると主張されていたものの、開発コスト的に許されず、4.0Lユニットが登用された。

量産版のLP500が登場したのは、10年後の1982年。排気量は4754ccを得ていた。

ビッツァリーニ・ユニットで初となる、最大の改良が施されたのは1985年シリンダー当たりのバルブは4本へ増やされ、排気量は5167ccへ拡大され、カウンタッククアトロバルボーレに搭載された。最高出力は461psに達した。

ディアブロの登場は1990年カウンタック北米仕様に組まれていた燃料噴射システムを、共通してエンジンに採用している。ディアブロ VTでは四輪駆動のシャシーを獲得し、1998年ディアブロ GTでは排気量が6.0Lへ拡大された。

一貫して大排気量・自然吸気が保たれた

それと並行し、ランボルギーニアウディ傘下へ。新たな資金を活用したムルシエラゴが、2001年に発表される。

排気量は6192ccとなり、当初ジオット・ビッツァリーニ氏が設計した通り、ドライサンプ・システムへ改められた。初期ユニットの量産開始から、50年が過ぎていた。

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シルバーのランボルギーニエスパーダ S3と、ガンメタリックのランボルギーニ・アヴェンタドール・ウルティマ

2006年に追加されたムルシエラゴ LP640-4では、1960年代では夢のような技術、可変バルブタイミング機構を獲得。排気量は6.5Lへ増やされた。

それ以降、モデル名の数字は排気量由来から最高出力へ変更され、ムルシエラゴ LP670-4では6.5Lのままながら、670psへ増強。半世紀前に基本設計された自然吸気ユニットでありながら、印象的なまでのパフォーマンスが引き出されている。

アヴェンタドールへの交代は2011年。変革を求めていたランボルギーニは、新しいエンジンの開発へ踏み切った。しかし、L539型ユニットは、点火順序こそ異なるものの、多くの特徴を以前から受け継いでいた。

同社の関係者も、現在は派生版だと認めている。フェラーリを含むライバルメーカーがダウンサイジング・ターボ化を進め、ハイブリッド・システムを採用するなかで、一貫して大排気量・自然吸気が保たれてきた。少々、時代錯誤感もあるとはいえ。

初期のビッツァリーニ・ユニットと、このL539型ユニットとの共通点は、4000rpmから7500rpmまでの力強さと、他に例がない咆哮。低回転域でのトルクも潤沢だが、回転数を高めたいという欲求を抑えがたい。

最新で純粋な内燃エンジンの技術が展開

エッジーでアグレッシブなボディをまとうアヴェンタドールと、V12エンジンは素晴らしい融合を見せる。バルブトレインとベルトの唸りは、小さくないエグゾーストノートにかき消されない。

半世紀以上の進化の賜物といえるのが、レブリミットの上昇。エスパーダではシフトアップが必要になる回転域から、さらにドラマチックさを強め、アヴェンタドール・ウルティマエでは780psが絞り出される。

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ランボルギーニ・アヴェンタドール・ウルティマエ(2022年/欧州仕様)

多くのスーパーカーを運転してきたドライバーにとっても、ランボルギーニV12エンジンが生む体験は特別なはず。最新で純粋な内燃エンジン技術が、これほどストレートに展開されているモデルは極めて珍しい。

乾燥した路面なら、恐怖感と戦う必要はない。知的な四輪駆動システムと電子アシストの貢献は小さくないものの、ドライブモードを積極的な設定へ変えても、ニュートラルな優れたバランスにあることがわかる。エスパーダへ通じている。

アクセルペダルのレスポンスは線形的。V12エンジンのすべてを召喚するには、長いストロークを完全に使い切る必要がある。ブレーキが、強力にスピードを絞ってくれる。

アヴェンタドールは2022年で生産を終えており、最新モデルだという印象は受けにくい。シングルクラッチの7速ATは弱点の1つといえ、耐久性は低くないものの、混雑した市街地では滑らかな変速を得にくい。

ライバルの多くは、先進的で洗練されたトランスミッションを搭載していた。アヴェンタドールが登場した頃から。

スリリングでありながらフレンドリー

インテリアでは、戦闘機のスイッチのようなスターターボタンが気持ちをそそるが、2010年代のデザインであることを隠さない。モニターは小さく、ブラックのプラスティック製パーツが点在している。

とはいえ、開けた道へ足を進めれば、それらはすべて忘れられる。対岸にベネチアを望む海岸線を走るアヴェンタドール・ウルティマエは、スリリングでありながらフレンドリー。非常に能力の幅が広い。

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ランボルギーニ・アヴェンタドール・ウルティマエ(2022年/欧州仕様)

ステアリングホイールは完璧な重み付けで、コミュニケーションを取りやすい。乗り心地は硬めながら、強い衝撃の角は丸められている。マニュアルモードに入れて、アクセルペダルをしっかり傾ければ、トランスミッションも軽快に仕事をしだす。

乗り慣れて高回転域まで活用できる自信が得られると、非現実的ともいえる動力性能に打ちのめされる。0-97km/h加速2.8秒の勢いは、視界がくらむ。

21世紀に成功を掴んだランボルギーニは、エスパーダと同等の販売期間で、10倍近い台数のアヴェンタドールを生産した。ただし、このウルティマエは600台限定。コレクターズ・モデルとして、将来的な価値は約束されている。

そのうちの15台は、大西洋を航行していた貨物船、フェリシティ・エースの火災事故で消失してしまった。だがランボルギーニは再生産を決め、消沈したオーナーの気持ちを救ったが。

ある種の野性味が宿るV12エンジン

モータースポーツの血統を持ち、美声を奏でるフェラーリ・ユニットとは異なり、ランボルギーニV12エンジンにはある種の野性味が宿る。エスパーダもアヴェンタドールも、サンタアガタの精神が凝縮した、エネルギッシュでドラマチックな体験を与える。

感情を刺激し高ぶらせる方法を、ランボルギーニは熟知している。次世代を担うハイブリッド化されたV12エンジンでも、この精神が再現されることを強く願いたい。

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ランボルギーニ・アヴェンタドール・ウルティマエ(2022年/欧州仕様)

画像提供:アウトモービリ・ランボルギーニ

エスパーダとアヴェンタドール・ウルティマエのスペック

ランボルギーニ・エスパーダ S3(1968〜1978年/欧州仕様)

英国価格:1万2113ポンド(1974年時)/18万ポンド(約3150万円)以下(現在)
販売台数:1227台(エスパーダ合計)
全長:4730mm
全幅:1867mm
全高:1195mm
最高速度:254km/h
0-97km/h加速:6.5秒
燃費:5.0km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1440kg
パワートレイン:V型12気筒3929cc自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:370ps/7500rpm
最大トルク:41.4g-m/5500rpm
ギアボックス:5速マニュアル/後輪駆動

ランボルギーニ・アヴェンタドール・ウルティマエ(2022年/欧州仕様)

英国価格:34万4900ポンド(2022年時)/45万ポンド(約7875万円)以上(現在)
販売台数:600台(ウルティマエのみ)
全長:4868mm
全幅:2098mm
全高:1136mm
最高速度:355km/h
0-97km/h加速:2.8秒
燃費:4.6km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1550kg
パワートレイン:V型12気筒6498cc自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:780ps/8500rpm
最大トルク:73.2kg-m/6750rpm
ギアボックス:7速オートメイテッド・マニュアル/四輪駆動


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