MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、迷惑系ライブ配信者に降りかかる恐怖を描くPOVホラー、世代の違う4人の女性の“想い”が交錯するラブストーリー、思春期を迎えた2人の少年の友情と喪失を描くヒューマンドラマの、バラエティ豊富な3本。

【写真を見る】アニーは大金と引き換えに、ある女性を運ぶという奇妙な配達依頼を受ける(『DASHCAM ダッシュカム』)

■揺れ動く画面上に映るもの…『DASHCAM ダッシュカム』(公開中)

ズーム/見えない参加者』(21)で注目されたホラーの俊英ロブ・サヴェッジが、オンライン画面上の怪現象にロックダウンの閉塞感を結び付けた恐怖談を再び放つ!迷惑系の動画配信をしている元ミュージシャンの米国人女性が、異国ロンドンで配信を行ううちに、謎めいた女性を車に乗せたことから災難に見舞われる。

友人の車を盗んだり、ノーマスクで飲食店に入ったりなどのヒロインの迷惑行為にイライラする間もなく、汚物と流血の騒動が勃発し、命の危険が迫ってくる。そんなシチュエーションはもちろん、揺れ動く画面上に映るものの異様さに戦慄を禁じ得ない。8月に公開を控えるサヴェッジの新作『ブギーマン』(8月18日公開)も楽しみだが、まずはこの恐怖にヒンヤリして欲しい。(映画ライター・有馬楽)

■人が人に興味を持つ、誰かを愛することの素敵さ…『アイスクリームフィーバー』(公開中)

川上未映子の短編集「愛の夢とか」中の一篇「アイスクリーム熱」を原案にした、ドラマやCM、CDジャケットまでを手掛ける気鋭のアートディレクター、千原徹也による初の長編映画。どこか親しみを感じる佇まいの街の、一軒のアイスクリーム屋さんを中心に、人生に軽く行き詰まった4人の女性それぞれの悩みや葛藤、そこから一歩踏みだそうとする姿、互いの想いが交錯する瞬間を活写する。

カラフルでポップな画づくり、フとした本音も混じるユーモラスな会話、さらに脇キャラも含めた各人物―“友だちになりたいな“と思わせるそれぞれ異なる彼らの個性が最大の魅力。もちろん演者たち、吉岡里帆の親しみ、モトーラ世理奈のミステリアスさetc…があってこそ。人が人に興味を持つ、誰かを愛することの素敵さ!まるでアイスクリーム屋さんで色とりどりのアイスクリームを前に、ウキウキする瞬間を何度も味わうお楽しみに似ている。とはいえ表面的に目を引くに留まらず、各人物の心情に観る者がスッとつながれる共感度の高さが本作の真骨頂。暑い夏にぴったりの、清涼感とポジティブな空気漂う青春群像劇だ。(映画ライター・折田千鶴子)

■邪気さと残酷さが共存する子どもの世界…『CLOSE/クロース』(公開中)

中学生に上がった幼馴染同士のレオ(グスタフ・ドゥ・ワエル)とレミ(エデン・ダンブリン)はあまりの仲の良さにクラスの女の子たちから「付き合っているの?」とからかわれてしまう。意識するあまり、過剰に“男らしさ“を求め、違う友だちと遊び出すレオ。一方、突き放されたレミは…。友情でも恋愛でもない、純粋な少年たちだけの関係が大人ぶった女の子たちによって、無惨にも引き裂かれていく。

周囲の目を意識し始める大人への過渡期。最も傷つきやすい年頃でありながら、無邪気さと残酷さが共存する子どもの世界を生き延びなければならない。レオとレミ役はオーディションで選ばれた2人の若手俳優。彼らの表情だけで誰にも言えない痛み、苦しみを小さな胸いっぱいに抱え、1日1日があんなにも長かった時代を思い起こさずにいられない。レオの家は花の農家。畑いっぱいに咲き誇った美しい花たちが季節の移ろいと人の手によってあっけなく刈り取られていく様に帰らない日々が重なり、涙が止まらない。(映画ライター・高山亜紀)

映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼

配信者アニーの配信画面上で物語は展開していく『DASHCAM ダッシュカム』/[c]2022 TOWNVIEW PRODUCTIONS. LLC. ALL RIGHT RISERVED