よく「日本人は貯蓄好き」といわれますが、誰もがしっかりと貯蓄をしているわけではありません。意外と高給取りといわれている人ほど「稼いだ分だけ使う」というケースも。ただ現役時代の余裕ある暮らしはいつまでも続かないものです。みていきましょう。

日本人の平均貯蓄額、1,368.3万円…一方で「貯蓄ゼロ」も

――人生何があるか分からない

そう思っているかどうか、分かりませんが、「日本人は貯蓄好き」で知られています。厚生労働省『2022年 国民生活基礎調査』によると、1世帯当たりの平均貯蓄額は1,368.3万円。(世帯主の)年齢別にみていくと、20代では平均245.1万円だったのが、年齢と共に増加。60代でピークに達します。

また負債額は30代がピーク。マイホームを購入し、住宅ローン返済がスタートするタイミングだからでしょう。40代までは負債が上回り、50代からはプラスの収支となります。50代は負債も少なくなってきて、老後を見据えて資産形成を本格化させるタイミングといったところのようです。

【日本人の貯蓄と負債】

◆全年齢平均

貯蓄:1,368.3万円、負債:390.6万円、貯蓄-負債:977.7万円

◆20代

貯蓄:245.1万円、負債:287.8万円、貯蓄-負債:▲42.7万円

◆30代

貯蓄:717.8万円、負債:1211.4万円、貯蓄-負債:▲493.6万円

◆40代

貯蓄:925.8万円、負債:970.4万円、貯蓄-負債:▲44.6万円

◆50代

貯蓄:1,248.4万円、負債:544.9万円、貯蓄-負債:703.5万円

◆60代

貯蓄:1,738.8万円、負債:192.3万円、貯蓄-負債:1,546.5万円

◆70代

貯蓄:1,594.7万円、負債:80.1円、貯蓄-負債:1,514.6万円

一方、世帯別にみていくと、高齢者のいる「高齢者世帯」の平均貯蓄額は1,603.9万円、「高齢者のいない世帯」では1,248.4万円、「子育て世帯」では1,029.2万円でした。一方で「貯蓄なし」と回答したのは、「高齢者世帯」で11.3%、「高齢者のいない世帯」で10.8%、「子育て世帯」で9.2%でした。

貯蓄なしの理由は、「収入が少なく、そもそも貯蓄なんてする余裕はない」というケースが多いでしょうが、高収入だからといって貯蓄があるとも限りません。

別調査になりますが、金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(単身世帯調査)』で「貯蓄*なし」は34.5%。収入別にみていくと、低年収ほど「貯蓄なし」の割合が多い傾向にありますが、一方で年収1,000万円を境に「貯蓄なし」は増加。年収1,200万円以上では33.3%に達します。

*定期性預金・普通預金等の区分にかかわらず、運用の為または 将来に備えて蓄えている部分で、実物資産、現金、預貯金で日常的な出し入れ・引落しに備えている部分は除く

高給取りでも貯蓄ゼロ…現役引退後の悲しき末路

年収1,200万円以上。そんな高給取り、どのような人かといえば、たとえば大企業(従業員1,000人以上)の大卒・部長(平均年齢52.8歳)。その平均給与は月収で75.6万円、年収で1269.8万円です。

おひとり様の高給取りなのに、貯蓄ゼロ。そこに「高給取りだから大丈夫」という慢心があり、趣味などに散財しているなら、この先はかなり不安です。

役職定年などはなく、定年年齢まで部長職だったとしましょう。現在、多くの企業で60歳が定年年齢ですが、そこで「そのまま働き続けるか」、それとも「現役を引退するか」、大きく二択となり、7~8割程度の人は、前者を選択しています。

その際、部長職ではなくなり、また雇用関係も正社員から契約社員や嘱託社員になるのが一般的。そこで給与は3~5割程度減少します。

そして65歳。原則、公的年金が支給される年齢で、また仕事を続けるかどうか、選択をすることになるでしょう。早かれ遅かれ、年金生活に入ります。このときも収入は3割ほど減少します。

つまり10年ほどの間に、収入は現役時代の2~3割程度にまで減少。この収入の減少に合わせるのは想像以上に難しく、自己破産を迎えるケースも珍しくはありません。

また老後に賃貸暮らしも加わると、さらに深刻度が増します。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会『第26回日管協短観』によると「高齢者入居受け入れに対して拒否感あり」は、23.7%。首都圏では12.3%に対して、関西圏では52.9%。首都圏と関西圏を除く全国では56.5%と、圧倒的に高齢者の賃貸暮らしは不利です。

――大家が望むのは、入居期間中に亡くなる可能性が少なく、家賃滞納せずに長期入居してくれる賃貸人。一度入居させると年齢を理由に退去しない高齢者は断りたい

そういうのは大家本人の投稿。入居を断られ続け、「住むところもない……」と途方に暮れる。おひとり様の高給取り、そんな末路も決して大袈裟ではないのです。

現役時代、低収入だろうと高収入だろうと、老後を見据えての資産形成は必須。どのようなライフスタイルを実現したいか、具体的にイメージし、そこから逆算することが第一歩となります。

(写真はイメージです/PIXTA)