2014年、新作アニメ「美少女戦士セーラームーンCrystal」が始まった時、90年代のアニメを観ていたファンたちが湧き立った。セーラームーンにまた会える…!と。そして今回の映画、劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」(前後編ともに公開中)でついにそのシリーズが完結することとなる。今回MOVIE WALKER PRESS独占で、エターナルセーラームーン月野うさぎ役の三石琴乃と、セーラコスモス役の北川景子による夢の対談が実現!収録の思い出や役作り、二人にとっての「美少女戦士セーラームーン」の存在などを語り尽くしてもらった。

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■「90年代に頑張ったものがちゃんと届いているんだなぁ…と実感しました」(三石)

――今回の映画は、2014年から始まった「美少女戦士セーラームーンCrystal」シリーズの集大成でもあります。Crystalシリーズから今回の映画まで、90年代のアニメを観て育った方々がキャストに選ばれて…三石さんにとって、当時の視聴者の方たちとの共演はいかがでしたか?

三石「そうなんですよね。最初は私一人だけがキャストとして決まっている状態で、その後ほかのセーラー戦士がオーディションで決まって、一人ずつ、一人ずつ集まってくれました」

――まさに作品の最初のころのようですよね。最初は一人だったうさぎちゃんのもとに、セーラーマーキュリー水野亜美ちゃん、次にセーラーマーズ火野レイちゃん、と集まってきて。

三石「はじめの収録は一人ですごく寂しかったので、どんどんセーラー戦士たちが集結してくれてうれしかったです。キャストにもスタッフにも『当時観てました!』と言ってくれる方もたくさんいて、『90年代に頑張ったものがちゃんと届いているんだなぁ』『セーラームーンになりたい!と言っていた子たちが立派な大人になって、一人のレディとして、一人の戦士として活躍しているんだなぁ…』というのを、肌で感じていました。もちろん彼女たちもプロフェッショナルなので、ファンだった気持ちには線引きして、真摯に役に取り組んでくれて、気づけば私の方が支えてもらっていた感覚です。プライベートでも一緒に集まったりして、彼女たちがいてくれたから、ここまで来られたとしみじみ思います」

――セーラコスモス役の北川さんもいわゆる“セーラームーン世代”の一人ですよね。

北川「もう、三石さんは私にとっては神様で…。小さいころ、初めて手に取った漫画が『美少女戦士セーラームーン』で、『なかよし』の連載を読んで、“応募者全員大サービス”に応募していた世代なので」

――なかよし編集部に切手を送ってかわいいグッズがもらえるんですよね。懐かしい!

北川「そうです、そうです。三石さんと初めてご一緒したドラマ『リコカツ』の時も、まず『セーラームーン』の話をしました。エヴァも大好きだったので、そのお話もしたのを覚えています(編集部注:三石は葛城ミサト役)。同世代の方々は皆さんそうだと思いますが、私も三石さんのお声を聞いて育ってきているので、『リコカツ』で親子役を演じた時からすでに三石さんとの共演の心地よさは感じていました。ドラマ以来の共演で久しぶりでしたが、時々連絡は取っていたので、すごく久しぶりな感じはしなかったかもしれません」

三石「私はほら、テレビで拝見しているから。テレビを観ていて『あ、景子ちゃんだ!美しい~!』って(笑)。だからなおさら久しぶりな感じはしなかったです」

――北川さんといえば、実写版ドラマでのセーラーマーズ役のイメージがありますが、今回はセーラコスモスという、また違った役どころを演じることになりましたよね。

北川「オファーをいただいた時はうれしかったけど、戸惑いもしたんです。実写版の時は、セーラームーン役の沢井美優さんが真ん中にいて、それを4人の戦士たちが支える形でしたが、今回のセーラコスモスは、“セーラー戦士の根源”のような役。“支える側”ではなく、うさぎちゃんの立場に近い役は、ある意味で聖域というか…飛び込めなさそうな場所だなって思っていました。だから、お話をいただいたことはすごくうれしくて、この作品に携わりたいという気持ちも強い一方で、私でいいのかな…というのが同時にあって、どうしよう…って。実写版セーラームーン』のキャスト5人の『戦士会』のみんなにも相談しました。でも、『Crystalシリーズ最後の作品で、こういう役をやってくれるのはうれしいし、絶対にやってほしい!』とみんなが言ってくれて、背中を押されました」

――実際に演じられていかがでしたか?

北川「自分が収録する前に、ガイドという(声の)お手本をいただいたんですが、今回は三石さんがガイドを吹き込んでくださったんです。それはもう完璧なセーラコスモスで。台本を読んだ時点では、セーラコスモスガーディアンコスモスの解釈が難しかったんですが、こういう感じでやればいいんだ、と解釈の手助けになりました。三石さんすごい…と改めて思った瞬間です。うさぎちゃんの声もシリーズを重ねるごとに深みを増していった感じがありますよね」

三石「それは、月日を重ねちゃったから…!(笑)」

北川「いえ、もう色々な苦労を経ての“いまのうさぎちゃん”ってこんなふうなんだって感動しました。収録当日は三石さんも来てくださいましたし、武内直子先生もいらっしゃって、さすがに緊張しましたね(笑)」

――三石さんは、今作のうさぎちゃんを演じるうえで意識したことはありますか?

三石「今回は大好きな友達やまもちゃんが目の前で消滅してしまって、後編ではその仲間たちが敵として現れるんですよね。みんなが敵になっちゃう展開は、いままでのシリーズでもありましたけど、これ本当にキツくて。台本を読んでいる時は平気でも、やっぱり実際に声が聞こえてくると、それはそれはしんどいんです。翻弄されながらも大切な人たちを取り返すという一心で、それも憎しみから湧く力ではなく、ポジティブで大きな力が湧いてくるような気持ちを込めて演じました」

■「様々なことを叩き込まれた『セーラームーン』は、私にとって切り離せない作品」(北川)

――改めて、お二人にとって「美少女戦士セーラームーン」という作品はどういう存在でしょうか?

三石「私がここまで声優としてやってこれたのは、この作品があったからというのが大きくて、本当に大切な作品です。Crystalシリーズからは、90年代に皆さんからいただいたエネルギーに対して恩返しをするような気持ちがありました。普段の生活をしていてもセーラームーンが心のどこかにいるような感覚はあるかもしれません。例えば、ときどきスカイツリーのちょうど真上に三日月がくることがあるんですけど、その写真をSNSで見るたびに、まるで大きなムーンスティックだなって思ったりとか(笑)。『こんな大きなムーンスティックがあったら、地球を全部浄化して、世界を平和にできるかも!』なんて突飛なことをつい考えていたりします」

――それはずっとセーラームーンを演じてこられた三石さんにしか思いつかない発想…さすがです!

北川「本当にそうですよね!すてきです…」

――北川さんにとって「美少女戦士セーラームーン」はご自身の人生にどんな影響を与えましたか?

北川「私はこの作品とも三石さんとも、ずっとご縁を感じているんです。女優デビューのきっかけになったのも『美少女戦士セーラームーン』だし、私がドラマの主演をやる時や、声優に挑戦する時など、要所要所で三石さんとご一緒することも多くて。また、デビュー20周年である節目の今年にこのお仕事をいただいて、人生の様々なターニングポイントを『美少女戦士セーラームーン』とともに歩んできた思いがあります。私にとって切り離せない作品ですね」

三石「実は、大女優さんともなると、昔の特撮作品と紐付けるのはよくないとかもあるのかしら、と心配していたの」

北川「私はむしろ、堂々と発信したい派です。もともとセーラームーンが大好きで『絶対に実写版セーラームーンの役をオーディションで勝ち取って東京に出るぞ!』と思ってやってきましたから。撮影の仕方から現場での振る舞い、アクションにダンスに、本当に色々なことを叩き込まれました」

三石「特撮って大変なんだよね。だから特撮を乗り越えてきた役者さんは、どんな現場でも生きていける強さがあるように感じています」

北川「自分たちでなんでもやる現場なんですよね。特に『セーラームーン』は、変身したあとの姿も自分たちのままなので、そこも大変だったかもしれません」

三石「後ろで、ドカーン!と爆発している前をカッコよく歩いてね」

北川「最初は爆発にビックリしましたがだんだん慣れていって、ナパーム(特撮で使われる爆発)くらいではなんとも思わなくなっていくんです(笑)。ドラマで共演したみんなとも大きな絆が芽生えたことで、くじけずに20年間やってこられたように思います。『戦士会』の全員がいまでも芸能界を辞めずに、同じ世界で頑張っているんですよ。いまでもお互いの作品を観に行きますし、きっとこの作品も観てくれるはず。みんながいたからこそ前に進んでこられて、励みになっているのをすごく感じますね」

――最後に、大人になったセーラームーンファンに向けて、今回の映画の見どころを教えてください。

三石「大人になるにつれ、セーラームーンがいつも言っている『愛』や『正義』を、ちょっと恥ずかしいと感じることが増えると思うんです。でも、90年代のころから好きでいてくれた方々には、うさぎちゃんの持つ『愛』と『正義』が心のどこかに刺さっているはず。だから今回の映画を観て、そういった忘れかけていたことを思い出して、前向きに人生を歩んで行ってくれたらいいな、と思います」

北川「私はまさに今回の映画から『前向きさ』や『ひたむきさ』をもらったところがあるんです。年齢を重ねるにつれて、失敗を恐れるようになってしまったところがあって…。もう30代だからとか、20年もこの仕事をしてきているから、とかで『間違っちゃいけない』と思うようになっていたんですよね。今作ではうさぎちゃんが、過去の自分の間違いを認めて軌道修正して、再び立ち上がる展開があって、その部分に胸を打たれました。間違えたり失敗したりすることを恐れて閉じこもってしまうのではなく、まさに“ピッと凛々しく”前向きに生きてみたいな、と。自分で自分を抑え込まないで、のびやかにやっていこう、と勇気をもらえました。きっと私と同じ世代の皆さんも、年齢的にそういう時期なのではないかと思うので、セーラームーンに『これでいいんだよ』って背中を押してもらえるんじゃないかと思っています」

取材・文/朝井麻由美

劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」三石琴乃と北川景子が夢の対談/撮影/河内彩