毎週水曜に配信中のマーベルの新作ドラマ「シークレット・インベージョン」に、ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズで知られるエミリアクラークが出演している。エミリアが演じているのは、スクラル人の元将軍・タロス(ベン・メンデルソーン)の一人娘・ガイア。タロスは、映画「キャプテン・マーベル」で知り合った“アベンジャーズ”の創始者ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)と30年来の仲で、他人に擬態できるスクラル人の能力を生かしてスパイ活動を行い、フューリーの力になってきた人物だ。今回はガイアを演じているエミリアクラークとは、どんな人物なのかを紹介する。(以下、一部作品のネタバレを含みます)

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■デビュー後わずか2年で「ゲーム・オブ・スローンズ」に出演

シークレット・インベージョン」は、国際平和維持組織「S.H.I.E.L.D.(シールド)」の元長官として多くのヒーローを“アベンジャーズ”にスカウトしてきたフューリーが、誰が敵で誰が味方か分からぬ状況下で人類を守るべく暗躍する物語。映画「キャプテン・マーベル」のラストでキャロル・ダンヴァース(キャプテン・マーベル)と共に、クリー人との戦いで母星を失ったスクラル人の安息の地を探すと宣言をしたフューリーだが、いまだにその約束が果たすことができず、それが原因で若きスクラル人たちによる反乱が起こっている。

ガイアは常にフューリーの味方をしてきたタロスの娘だが、若きスクラル人リーダー・グラヴィク(キングズリー・ベン=アディル)と同じように、父に失望して反乱軍に参加していた。しかし、母親がグラヴィクらの手によって殺されたことを知らされてからは、反乱軍の動きをタロスに流していた。

そんなガイアを演じるエミリアは、1986年イギリスロンドンのバークシャーで、舞台の音響監督の父とビジネスウーマンの母との間に生まれた。小さい頃から演じることが大好きな少女だったという。小学校や中学校でも演劇を行い、高校卒業後はロンドン芸術大学のセントラル・セント・マーチンズのドラマセンターで本格的に演技を勉強。2009年に卒業すると、イギリスでドラマとショートフィルムに出演し、すぐに渡米した。

2010年にアメリカのSFパニックアクション映画「タイム・パニック」に出演すると、その次に決定したのはあの「ゲーム・オブ・スローンズ」(略称:GOT)の“ドラゴンの母”ことデナーリス・ターガリエン役だというから驚きだ。

ところが、2011年「GOT」シーズン1の撮影を終えた直後に脳動脈瘤により、脳卒中とくも膜下出血を起こしてしまう。即手術を行い、命は取り留めたが、手術後には自分の名前も思い出せず、失語症やセリフが覚えられない症状に苦しめられたそう。しかも2013年にも別の動脈瘤が肥大化し、再び手術。この手術では合併症も引き起こし、これまで以上に大変な思いをしたそうだが、「GOT」に出演し続けていたのだから、まるで信じられない。奇跡的な復活を遂げたといっても決して大袈裟ではないだろう。

■大病を克服して「GOT」と並行して数々の映画に出演

結果的に2011〜2019年まで、「GOT」シリーズに合計62話出演したエミリア。演じたデナーリスは、見た目はかわいらしいのに女王の威厳と統率力があり、「GOT」の人気投票でいつも1位を獲得するほど人気のキャラクターに成長。ドラマ終了後もデナーリスの終わり方に納得がいかないファンたちが、“作り直しを求める署名活動”を起こすほど、人々に愛されるキャラクターとなった。

もちろん9年間の間、この作品だけに出演していたわけではない。2012年には青春音楽映画「スパイクアイランド」に主要キャストの一人として出演。2013年にはアニメ「フューチュラマ」で声優に初挑戦し、ジュード・ロウ主演の犯罪コメディー映画「ドム・ヘミングウェイ」に出演。

2015年には、誰もが知る映画のリブート版「ターミネーター:新起動 ジェニシス」にサラ・コナー役で出演し、初のアクションに挑んだという。2016年には車椅子生活を送る青年実業家との恋を描き、エミリアの自然体の演技が涙を誘った映画「世界一キライなあなたに」、2017年は1950年代のトスカーナを舞台にしたスリラー映画「ボイス・フロム・ザ・ダークネス」に主演するなど、さまざまなジャンルの作品に出演している。

■初「スター・ウォーズ」作品では、ハン・ソロ幼なじみを好演

そして、2018年には「スター・ウォーズ」作品にも進出。映画「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」で、ハン・ソロ幼なじみキーラを好演。キーラは帝国軍が支配する時代に運び屋や密輸業者など曲者だらけの中を必死に生き抜いてきた強い女性だが、実はソロにも言えない秘密を抱えている複雑な人物。

エミリア演じるキーラは大切な人たちに対しては実直な人物に見えたので、彼女の最後の選択に驚かされた人は多かったのではないだろうか。キーラはその後、アニメシリーズなどにも登場しておらず、消息が気になる人物。Instagramフォロワー数は驚異の2810万人超えと若者を中心に人気の高いエミリアが演じているだけに、復活する可能性もありそうで期待したいところ。

■自然体なところが大きな魅力

さらにエミリアは、実在の事件をモチーフにした映画「エージェント・スミス」や歌声も披露した「ラスト・クリスマス」(ともに2019年)にも出演し、2013年と2018年にはブロードウェーの舞台に挑戦している。父親が舞台の音響監督だけに、舞台への思いは人一倍強いのかもしれない。

2013年の「ティファニーで朝食を」の際は完全な準備不足だったと告白し、2022年には現代版にアレンジしたチェーホフ「かもめ」でリベンジ。「かもめ」は映像化され、世界の映画館で公開されるほど好評を博した。

真っ白なロングヘアが印象的だった「GOT」のデナーリスは例外だが、エミリアが演じるキャラクターはどんな人物でも自然体のところが大きな魅力。また、メリハリのある愛らしい顔をしているにもかかわらず、メークやヘアスタイルだけですっかり役に染まってしまうのは、演技力のなせる技だろう。

7月5日ディズニープラスで配信された「シークレット・インベージョン第3話では、エミリア演じるガイアに関する衝撃の事態が起きた。全視聴者が驚いたであろう展開は、本作の“予測不能さ”を象徴する出来事だ。エミリアの演技とともに、緊張感たっぷりの物語を最後まで楽しみたい。

◆文=及川静

エミリア・クラークがマーベルドラマ「シークレット・インベージョン」で演じるガイア/(C) 2023 Marvel