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 海洋哺乳類ラッコは、貝をお腹で割って食べる仕草など、かわいいイメージがあるが、ここ数年、同州サンタクルーズ沖で1匹のラッコによる深刻な事件が発生している。

 841とタグ付けされた5歳のメスのラッコは、サーファーに近付いては、サーフボードをかじったり、無理やり奪おうとするのだ。

 このラッコの母親は孤児だったところを保護され、海洋野生動物病院で出産した。841はその後モントレーベイ水族館に移され、その後野生に戻されたのだが、その1年後から問題行動が始まったという。

 攻撃性がどんどんエスカレートしているため、野生動物当局が保護して水族館に戻そうとしているのだが、逃げ回って捕まらないのだそうだ。

【画像】 サーファーのサーフボードを奪おうとするラッコ

Otter steals surfboard from surfer in Santa Cruz | ABC7

 7月10日カリフォルニア州魚類野生生物局とモントレーベイ水族館は、メディア向けの声明で、公共の安全上のリスクが増大しているため、野生生物の専門家が、メスで5歳のラッコ841”を捕獲し、水族館で飼育することを試みると発表した。

 ここ最近、サーファーのサーフボードを無理やり奪おうとする行為は目に余るものがあり、人間に危害をもたらす可能性があるからだ。

 ツイッターに投稿された動画では、841サンタクルーズの海岸沖で、サーフィンボードに乗っていた若い男性から力ずくでボードを引き剥がす様子が捉えられている。

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 ラッコの画像を撮影した写真家マーク・ウッドワードさんは、「それは、サーフボードを巡るまさにレスリングの試合のようだ」と語っている。

 ラッコは、かわいい姿と相反して、強力な顎と鋭い歯を持っていて、その両方がアサリ、カニ、ウニ、ムール貝、その他の無脊椎動物を砕くのに役立つ。

 ここ数週間、841サーファーとのやり取りを撮影しているウッドワードさんは、メディアの取材でこのように話している。

ラッコボードを奪われた結果、ボードは損傷を受けました。あるサーファーは、ラッコの攻撃的な態度にびっくりしてボードを海に置き去り、岸まで泳いで戻ってきました。

ラッコはとても可愛くておとなしいように見えますが、こんなことがあるとちょっと怖いですね。

 また、ウッドワードさんは、サーファーに攻撃的ではない時の841の写真もシェアしている。

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今晩観察されたラッコ841 は、通常のラッコのように行動しています。 海にはサーファーがいなかったので、彼女は水の中で食事をしたりくつろいだりして満足していました。

 こうしている姿は、やはりかわいいラッコのように見える。

 地元警察では11日にFacebookで、「サンタクルーズではラッコサーファーの接触事故が4件発生している。この地域の攻撃的なラッコがサーフボードに噛みついたりひっかいたり、よじ登ったりしている」と投稿し、注意を促した。

 標識には、「この地域には攻撃的なラッコがいます。海へ出る行為は自己責任となります」と書かれている。

飼育下の母親から生まれ、水族館を経て野生に戻されたラッコ841

 実は、カリフォルニア沖でサーフボードを奪う841の姿が捉えられるのは、今回が初めてのことではない。

 野生のラッコは通常、人間を怖がり、避けようとするが、時にスイマーやカヤッカー、海水浴客に近づくことが知られている。

 そうした状況が発生する原因としては、メスのラッコが妊娠中に経験するホルモンの変化、または人間がメスのラッコに餌を与えたり、近づこうとしたりして鈍感になることが考えられている。

 だが今回、注目を集めている841の場合は少し異なるようだ。

 ラッコ生物学者のコリーンヤングさんによると、841サンタクルーズの海洋野生動物獣医ケア研究センターで飼育されていた母親”723”のもとに生まれたという。

 723は小さいころに親を失い孤児となってしまったところを、捕獲され施設で飼育されていた。

 母親はセンターで、841を離乳するまで世話したが、以降841はモントレーベイ水族館に移送され、母親は長期ケアのため施設に移送されたそうだ。

 水族館では、飼育員らは841が人間に慣れたり、人間に肯定的な感情をもたないよう、841に近づくときは、いつもポンチョとマスクの後ろに隠れるなどして細心の注意を払いながら世話をした。野生に戻した時に生きていけるようにするためだ。

 そしてその試みは成功したと、当時は思われていた。

 841を海に戻した後、監視を続けたところ、彼女は自然環境に順調に適応していると思われたが、約1年後、海でラッコが人間に近づいているという報告を聞き始めた。このラッコ841であることを確認。

 その行動はどんどんエスカレートし、サーファーやカヤッカーといった海のスポーツを楽しむ人々に、攻撃的な態度を取るようになっていった。

当局が841の捕獲を試みるも逃亡を続ける

 カリフォルニア州魚類野生生物局(CDFW)の担当者らは、サーファーを怖がらせ、サーファーボードを盗もうとさえする好戦的なラッコ841だと知り、困惑と不安を抱えている。

 このままでは、海洋動物と人間の間で、より深刻な衝突が起こってしまう。

 米国魚類野生生物局(USFWS)は、841の憂慮すべき異常な行動を認識して懸念を強めたため、海洋生物の捕獲を承認したと、声明で発表した。

公共の安全のリスクが高まっているため、ラッコの捕獲と扱いについて訓練を受けたCDFWとモントレーベイ水族館のチームを派遣し、841を捕獲して移転することを試みている。

 同省は、841が捕獲されたら、モントレーベイ水族館で検査され、当局がラッコの長期の住み家を探すと述べている。

このラッコの行動は非常に珍しいものだ。841の行動の正確な原因は不明だが、メスのミナミラッコカリフォルニアラッコ)の攻撃的な行動は、一般的にホルモンの急増と関連している可能性がある。

または、人間から餌を与えられたことが原因である可能性もある。

 しかし、CDFWの専門家が知る限り、海水浴客海水浴客841に餌を与えていない。

 何度も捕獲を試みる当局だが、841はそれを悟ったかのように、何度も捕獲から逃れている。現在もなお逃走中だ。

人間に危害を加えた場合、安楽死させられる可能性も

 野生生物の専門家らは、841を水族館に戻すことができるまで、サンタクルーズの飼育員らに警戒を怠らず、ラッコにスペースを与えるよう呼びかけている。

 万が一、841(または他のラッコ)が人間を噛んだ場合、カリフォルニア州の野生生物当局は、その動物を安楽死させなければならないそうだ。

 だが、841の種でもあるミナミラッコカリフォルニアラッコ)は、1700年代から1800年代の毛皮貿易で絶滅寸前まで捕獲された後、個体数が激減し、その後ようやく復活した。

 現在、ゴールデンステート沖の太平洋海域には、推定3,000 頭の絶滅危惧種が生息しているが、こうした背景があるだけに、誰もが「ラッコ安楽死」という最悪な状況だけは避けたいというのが正直なところのようだ。

 今回、841による負傷者は報告されていないと警察は述べているが、カヤッカーやサーファーなどに対し、ラッコに近づかないよう勧告している。

 サーファーらにも、ラッコが一方的に近付いてきた場合も、関わらないようにと注意喚起を促している。

References:A Surfboard-Snatching Sea Otter Is Vexing Wildlife Officials in California/ written by Scarlet / edited by parumo

 
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1匹のラッコがサーファーたちからボードを強奪する事件が多発、現在野生動物当局から逃走中