F1アルファタウリ角田裕毅のチームメートだったニック・デフリース(オランダ)を解雇し、通算8勝で今季はレギュラーシートを確保できず浪人状態だったダニエル・リカルドオーストラリア)を次戦ハンガリーGP(23日決勝)から代わりに起用すると発表した。角田は非力なマシンで2度の入賞を獲得している一方、デフリースはF2と電動車のフォーミュラE世界選手権のチャンピオンに輝いている経歴を持ちながらノーポイント。5月ごろからシート喪失説がはびこっていたが、夏休み期間に入る前にチームを追い出されることになった。

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 角田にとってはレッドブルセカンドシートをつかむ千載一遇のチャンスだ。リカルドが同じマシンを駆ることでマシンのポテンシャルがどれだけあるのか、角田が車体の性能を引き出し、的確に車両を評価するフィードバックの能力がどれだけあるのか。さらには実際にどれだけ本人が速いのかを査定できるのだ。

 レッドブルで選手人事を統括するヘルムート・マルコは欧州メディアに「リカルドと角田がどのように比較されるか見てみたい。角田は過小評価されていると思う」と話した。

 とりわけレッドブルでは、チャンピオンマックス・フェルスタッペンのチームメートを務めるセルジオ・ペレスメキシコ)が成績不振で、こちらも尻に火がついた状態を迎えたといわれている。水面下で進行しているストーブリーグでもレッドブルのシートは激しい争奪戦を繰り広げているとみられるが、角田はレッドブルグループの一員として最もアピールしやすい立ち位置にあり、あわよくば今季の途中にレッドブルに昇格する可能性がなきにしもあらずだ。

 大器の兆しはある。6月の第8戦スペインGPで入賞圏内の9番手でゴールしながら、レース中の危険走行でタイム加算のペナルティーを受けたため12位に終わった。ただ、不問に付されてもおかしくないくらいの微妙な裁定で、あらゆる方面から同情論が向けられた。

 それでも過去にチャンピオンになったトップドライバーたちは若手時代に強引なドライビングで難癖をつけられたケースは多い。フェルスタッペンだけでなく、アイルトン・セナミハエル・シューマッハーもそうだった。角田は確かに辛い目にはあったものの、将来の飛躍を期する「通過儀礼」を受けたといってもいい。むしろ吉兆とみる。

 過去には中嶋悟のチームロータス(1987~89年)、長男・一貴のウィリアムズ(2007~09年)のように日本人がかつての名門チームに在籍した例はあるが、バリバリチャンピオンチームにレギュラーとして加入した例はない。これまでの日本人の最高位は鈴木亜久里佐藤琢磨小林可夢偉が獲得した3位。角田がレッドブルのシートをつかめば、念願の日本人初優勝の可能性が一気に広がる。

[文/中日スポーツ・鶴田真也]

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F1の角田裕毅が来季レッドブル移籍の期待大 チームメート解雇で急に追い風吹く