高速道路などで追越車線を走行中に「右ウインカー」を点灯する行為。これは前車に対して「進路を開けろ」と促す意味とされます。この行為はあおり運転に当たらないのでしょうか。

追越車線をノロノロ走るな! とはいっても

2020年6月30日道路交通法が改正され、いわゆる「あおり運転」が厳罰されてから3年が経過しました。他車の円滑な走行を妨げる「妨害運転罪」が創設され、違反1回で免許取消処分、最長5年懲役刑などと、厳しい刑が科せられます。

あおり運転」の例として警察庁は「通行区分違反」「急ブレーキ禁止違反」など10個の類型を挙げています。そのなかにはヘッドライトを不必要に光らせて威圧する「減光等義務違反」もあります。

ところで、高速道路などで追越車線を走行中、わざと右ウインカーを点灯する行為は、前のクルマに対し「進路を開けろ」と促す意味とされます。この行為はあおり運転に当たらないのでしょうか。

都内の自動車教習所のスタッフは、車線を空けて進路をゆずれというこの「右ウインカー」の風習は、もともとトラックドライバーのあいだで広まっていたものだといいます。

納期が近いトラックや近くないトラック、また荷物の積み具合でも速度は変わってきます。互いの「意図する速度域」がまちまちなため、速く走りたいトラックは「うちは速く走りたいのです」と意思表示するために右ウインカーを点け、前のトラックは譲るという文化が形成され、それがいつしか市民権を得たというのです。

とはいえ、今や「どけ」という意味合いにとられる可能性が高いこの「右ウインカー」。点ける行為は道路交通法上「不要な合図」として違反となる可能性があると、警察も話します。

「右ウインカー」で「譲ってくれ」しないほうがいい理由

ウインカーの点灯については同法第53条に規定されています。

「左折し、右折し、転回し、徐行し、停止し、後退し、又は同一方向に進行しながら進路を変えるときは、手、方向指示器又は灯火により合図をし、かつ、これらの行為が終わるまで当該合図を継続しなければならない。(略)終わったときは、当該合図をやめなければならない」とあり、自分が進路を変える場合以外は、点灯する場面とはなりません。

さらに「合図に係る行為をしないのにかかわらず、当該合図をしてはならない」とも明記されてあります。警察は右ウインカー行為が「あおり運転に該当するか」については「事案ごとに検討する」としていますが、場合によっては、そもそも交通違反として取り締まりの対象になり得るということです。

では、追越車線を制限速度以下で延々と走り続けるクルマに対して、後続のクルマはどう対処すればいいのでしょうか。

まず、同法第20条には「車両通行帯」の規定があり、必要の無い場合は一番左側の車線を走行しなければならないとされています。追い越しが必要でもないのに追越車線を走り続けているクルマは、取り締まりの対象となる可能性があります。

とはいえそれでも、前のクルマが追越車線を遅く走り続けている場合、パッシングなどで何らかのアクションを起こすのは禁物です。休憩のタイミングを変更し、いったん近隣のSA/PAに入るなど、「心の平静を保つ」ことを心がけるしかないのかもしれません。

右ウインカーのイメージ(画像:写真AC)。