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 物価高騰で、万引きや強盗がどの国でも増加しているが特にアメリカではその傾向が顕著だ。

 ワシントン州タコマでは、毎日のように繰り返される窃盗事件を阻止しようと、触れるとビリビリと電気ショックを与える電気柵を設置する経営者たちが増えている。

 現在、タコマでは工業地帯のみ電気柵の設置が許可されているが、この防犯対策を取って以来、劇的に窃盗被害率が減ったことから、彼らは市に電気柵の設置を検討するよう促しているところだ。

【画像】 相次ぐ窃盗被害にうんざりした事業主らが電気柵を設置

Tacoma business owners asking city to expand use of electric fences after break-ins, thefts

 ワシントン州タコマの中小企業や個人び経営者たちは、度重なる万引き、略奪、強盗にうんざりしている。

 地元の警察は、できる限りのことをしていると言うものの、店が窃盗被害に遭えば、数千ドルという多額の修理費用や、多くの損害を被る経営者としては頭が痛い。

 そこで、犯罪者に対抗するため、電気柵を設置して窃盗被害を阻止しようという衝撃的な新しいアプローチを取ることにした。

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 「Aaberg’s Tools & Equipment Rental」を営むアレックスベーコンさんは、強盗が頻繁に発生しているため、物的損害だけでなく盗難品で常に数千ドルの損失を被っていると、メディアの取材で語った。

私たちはいたるところにカメラを設置し、監視サービスやリングカメラ、動体検知装置など、あらゆるものを備えていました。

思いつく限りのあらゆる安全対策を講じていたにもかかわらず、定期的な侵入により店に数千ドルの損害が発生し、フェンスの修理や盗難品が発生していました。

最近は、ほぼ隔夜で複数回の侵入が行われるようになり、週に一度、夜中に誰かが店の敷地内にいるというカメラの映像で起こされるようになりました。

 ベーコンさんは、電気柵を設置する前は、事業を守るために通常の柵に頼っていたと語った。

 だが、度重なる侵入でフェンスが損傷し続けた後、より良い代替品を見つける必要があると判断したという。

フェンスの損傷や高額な修理に加えて、小さな手工具から従業員のトラックに至るまで、数千点もの物品を失いました。それは、制御不能でした。
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電気柵にしてから被害が激減

 一連の侵入を受けて、数カ月前、ベーコンさんは犯罪者の侵入を防ぐために、店に電気柵を設置した。

電気柵が設置されて以来、カメラが不審者を捉えたという通報も電話もかかってこなくなったし、敷地内への不法侵入者も1人もいなくて、私は夜中に起こされることもありませんでした。

電気柵は、単なる直流電圧で電池式です。送電網に接続されていません。触れると痛いし、痛みはずっと続きますが、死の危険性はないものです。

明らかに、人々は電気柵を怖がっているようです。

それが、私たちが望んでいたことです。私たちは誰にも怪我をさせたくありません。不審者を私たちの敷地に近づかないようにしたいだけです。

だから最初は普通のフェンスにしていたのですが、今では追加の安全対策として電気柵を設置しなければならなくなったんです。

他の事業主も「電気柵は効果がある」と話す

 「Aqua Rec’s Fireside Hearth n’ Home」でも、触媒コンバーターの盗難とフェンスの修理でこれまでに数千ドルを失っていた。

 同社のジェイミー・ラスムッセンさんは、このように話す。

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防犯対策にカミソリをつけた柵を設置していたのですが、窃盗犯らはカミソリの上に毛布や寝袋を投げて、怪我しないように絶えず倉庫に侵入し、工具を盗んだりし続けていました。

ですが、電気柵を設置したことで、莫大な修理・損失費用は減りました。

電気柵は、100%の違いをもたらしたのです。窃盗犯たちは柵のところに来て、電気柵の標識を見ると、中へ入らずにただ歩き去ります。

 同地域の別の事業主スキップ・スミスさんは、この意見に賛同している。

ここ数年、私たちが「不法行為の精神」と呼ぶ問題に取り組んできました。

万引きが許される場所では、器物損壊も許されます。私の考え方からすると、法を犯してもあまり影響はないようです。

私たちのビジネスでは犯罪が行われて、周囲に混乱を引き起こしている野営地がたくさんあります。

私たちは事業主は頻繁に破壊行為に遭っているので、電気柵を設置する資金が自分たちにあれば、きっと設置したいと思うでしょう。

 スミスさんはまた、近くの経営者が電気柵を設置して以来、犯罪の問題は発生していないと述べた。

 ますます多くの企業が、自分たちの手に権力を取り戻すために電気柵という新たなセキュリティ戦術を採用するにつれ、タコマ市議会は電気柵設置を許可するかどうかの検討を余儀なくされているようだ。

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電気柵は安全対策に懸念があるとタコマ市議会

 現在のところ、タコマでは工業地域のみ電気柵の設置が許可されている。

 したがって、技術的に(そして法的に)、事業主が独断で電気柵を設置することは法律への違反行為となってしまう。

 しかし、この防犯対策措置は経営者らの間で広がっている。

 タコマ市議会は、電気柵の設置を一部の複合用途地区、商業地区、ダウンタウン地区などの商業用不動産にも適用できるよう、許可する条例の変更を検討しているが、安全性については懸念があるようだ。

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 特に、反対派からはさまざまな反応があり、電気柵は特に子供たちにとって安全上の懸念となる可能性があると述べた。

子供が歩いているとき、偶発的に電気柵に接触するという事態が起これば、問題なわけです。子供たちには、金網に手を突っ込んでほしくありません。

 最近行われた勉強会では、タコマ市議会議員ジョーブッシュネル氏がこのように発言したそうだ。

 市条例当局者らは、美観を目的とした要件のほか、警告標識や、偶発的な接触を防ぐために、電気柵から少なくとも30センチほど離れた場所に、周囲のフェンスを設置するなどの要件があると述べている。

 今、電気柵を導入している店では、顧客や従業員がいる営業時間中は、電気柵が作動しないように、他の安全対策を講じているという一部企業もあるようだ。

 タコマ市の市法当局者らは、2017年以来25件の電気柵の許可を発行しているが、それらの許可の大半は過去1年半以内に発行されたものだと語っている。

市議会は広域に電気柵の設置を検討中

 もし、電気柵設置についての市の条例が変更になれば、経営者は自分の資産を保護できるようになる、とラスムッセンさんは語る。

この地域では犯罪が非常に多いので、犯罪を一掃するか、事業主が自分の資産を保護できるようにするかのどちらかです。

 一方、電気柵の使用で犯罪防止対策が成功していることから、ベーコンさんはタコマ市議会に対し、他の企業にも電気柵の使用を許可することを検討するよう促している。

市議会は人々に電気柵を設置することをぜひとも許可してほしい。なぜなら、電気柵は私のビジネスにとって本当に素晴らしいものだからです。(ベーコンさん)
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 犯罪者の好き勝手な行動を阻止するために、人々がジュラシック・パークのように電気柵を設置するなど、思い切った手段を講じなければならないアメリカ。

 市民が制御不能な犯罪に対して、ますます不満を募らせ、沸点に達しているということだが、これがアメリカの悲しい現実のようだ。

Tacoma business owner, city councilmember look at electric fences as crime deterrents

References:Could more electric fences combat costly break-ins in Tacoma? Council considering it/ written by Scarlet / edited by parumo

 
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強盗対策のため触れると電気ショックを与える電気柵を設置するアメリカの経営者たち