法制審議会で議論されている刑事手続のIT化をめぐり、日弁連(小林元治会長)は7月19日、オンライン活用による接見交通権の拡充などを求める意見書を公表した。意見書は7月13日付で、すでに法務大臣に郵送したという。

現在、弁護士が被疑者・被告人と接見するには警察署や拘置所、拘置支所まで出向く必要がある。移動に時間がかかることも多く、逮捕された人が直ちに弁護士の援助を受けることができていない。近隣の警察署などの「アクセスポイント」から電話でやり取りできる場合もあるが、実施は限られた地域のみだ。

こうした状況から意見書は、秘密性の確保されたオンライン接見を全国的に可能にするよう求めている。

また、開示証拠を謄写(コピー)すると、ときとして数百万円の費用と数週間の時間がかかることにも言及。被告人側の防御権や迅速な裁判を受ける権利を制約しないよう、デジタル化による解消も求めた。

このほか、証人尋問をオンライン化すると非言語情報が減り、対面と比べて事実認定を誤る可能性などが高まるとも指摘。両当事者に異議がないときに限定するなど、IT化によって市民の権利が制限されないよう牽制した。

会見した中村元弥副会長(旭川弁護士会)は、「法制審では、ともすると捜査機関や裁判所の利便性ばかりが前面に出て、被疑者・被告人の権利保障という視点が弱いのではないか」と指摘。近年、拘置支所の統廃合が進んでいるとして、オンライン接見が認められなければ、被疑者・被告人の権利が後退しかねないとの懸念も示した。

市民のことも考えて…刑事手続IT化、法制審に日弁連が苦言「捜査機関と裁判所の利便性ばかり」