キャッシングやカードローンのサービスを利用したことはありますか? 借入れの理由は様々ですが、多くは生活費の支出増加を補いたいという一時的な借入れによるものです。しかし、生活費の補填のために借入れを続けていたら、多額の借金になってしまった…なんてことも。本連載は、司法書士法人みどり法務事務所が運営するコラム『スマサポ』から一部編集してお届け。本稿では、借金返済の手段のひとつである任意整理手続きのメリットとデメリットについて解説します。

よくある借入れに至る経緯

人は誰しも、積極的に借入れをして借金を増やそうとは思わないものです。しかし、様々な理由で借入れをせざるを得ない人がいるため、消費者金融や、クレジットカード、銀行などでキャッシングやカードローンというサービスが提供されています。

借入れの理由は様々ですが、多くは、生活費の支出増加を補いたいという生活をするうえでの一時的な借入れによるものです。急な出費であったり、収入が急に減った際などに緊急的な借入れをして助かったという経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。

しかし、収入の減少が一時的なものではなく、毎月生活費の補填のために借入れを続けてしまい、多額の借入れになってしまうこともよくあります。

この段階で支出を切り詰めたりして新たに借入れをしなければそこまで問題にならないのですが、そうではない場合もあります。

さらなる借入れへ

カードローンなどは、借入れ額の上限に達すると新たな借入れができなくなります。借金の返済額が増え、借りなければ生活が回らなくなると、新たな借入れ先を探すことになります。

消費者金融やカード会社の借入れは法律上年収の3分の1まで可能なので、そこに至るまでに次々と新しい借入れ先から借金をして、今までの借入れの返済に充てるという自転車操業が始まってしまうのです。

また、銀行からの借入れについては上記の法律の範囲外なので、場合によっては年収の3分の1以上の借金になることもあります。こういった状況になると、たとえば、手取りの給料20万円のうち8万円が返済に充てられてしまい、家賃や生活費の支払いが残りの12万円では足りないということが発生します。

すると、結局返済したことによりできた借入れの枠4万円から借入れするしかなく、まったく借金が減らないことになってしまいます。こうなると実質毎月利息だけを支払い元本が一切減らない最悪の自転車操業状態が固定化してしまうのです。

このままでは5年たっても10年たっても収入が増えない限り借金が残り続けることになります。この段階で専門家に相談しに来る人が多いように感じます。

司法書士への相談

借金が増え返済が大変になった場合、弁護士や司法書士に相談するのが一般的です。個人で各業者に連絡して利息を減らしてほしいといってもすぐに対応してくれるところは少ないでしょう。

多くの人がインターネットでどれくらい返済額が減るのか、利息が減るのかについて調べると思います。利息のカットについてはある程度情報が載っているので、大手の消費者金融やクレジットカード会社であれば特に問題なく可能ということはわかると思います。

しかし、今の返済額から手続きをしてどれくらい減るのかについてはよくわからないことが多いかと思います。返済額については個人差があるので、一律これくらいの返済額に減額できるといったことを明示することは難しいのです。

各事務所に問い合わせることで、ある程度はわかるので気になる場合は無料で確認してみるのがよいかと思います。調べたうえで事務所に相談することになると思いますが、そこで注意することは、利息のカットがちゃんとできるのかどうかを確認することです。

事務所によっては、過去に過払い金請求を苛烈に行ったことで、任意整理の和解が難しくなったり、対応がおざなりだったために貸金業者から信用されておらず、利息のカットができない場合があります。

ある司法書士事務所では利息のカットができないといわれた業者でも、ほかの事務所ではできる場合もあります。月の返済額を増やすことを条件に利息のカットができる場合もありますので、具体的に話を聞いて納得してから依頼をすることをおすすめします。

また、業者との交渉の過程によっては、事前の話が100%そのとおりにならないこともありますのでご注意ください

任意整理手続きのメリット

ここで、任意整理のメリットについて触れていきましょう。

将来利息のカット、月額支払いの減額

将来利息をカットしたうえで3年~5年の長期分割払いにすることによって、毎月の返済額を下げることができます。これが任意整理のメイン部分ですが、利息をカットすることができない場合もあるので注意が必要です。

また、返済額を下げることができることも、もともと返済額が少額の場合は返済額が上がってしまうこともあります。

手続き希望業者を選べる

すべての債権者を手続きしなくてはいけないわけではなく、必要な会社のみ選んで手続きをすることができます。これは、法的手続きである、自己破産や個人再生の場合とは異なり、たとえば、家族や知人から借りている場合など、そちらは手続したくないといったことが可能です。

依頼者の負担が少ない

裁判所がかかわる手続きではないため、資料集めをするといった依頼者の負担が少なくなります。任意整理手続きは、代理人が行うものなので、基本的に依頼者がしなくてはならないことはありません。

借入れの理由に関わらず手続きができる

ギャンブルや浪費といった借入れの原因に関わらずに手続きをすることができます。こちらは、自己破産の場合には、免責許可が下りない可能性がありますが、任意整理では借入れの理由は問われません

督促をSTOPできる

延滞していて債権者から督促等がなされている場合、その督促を止めることができます。任意整理手続きに限らず、法律職に依頼すると業者からの督促や連絡を止めることができます。延滞していて、煩わしい場合にはメリットに感じることもあると思います。

任意整理手続きのデメリット

今度は任意整理手続きのデメリットについて簡単にみていきましょう。

元金を減らすことはできない

借入れ元金を減らしてもらうことはほとんどできません。自己破産や個人再生手続きと違い元金を減らしてもらうことは原則ありません。特殊な場合、たとえば、債権回収会社に買い取られた借金の請求のとき、一括であれば値引きに応じてくれることがあります。

交渉ができない業者も存在する

一部、将来利息のカットに応じてくれない業者が存在します。中小企業であれば将来利息のカットや減額に応じないところが結構あります。また、事務所によっては、大手であっても利息カットができない場合もあります。

人によってメリットが少ないことがある

取引期間が短い場合や、取引の態様によっては利息のカットや長期分割ができない場合があります。消費者金融については、借りてすぐに任意整理手続きとなると、利息という売上が全然上がらなかった取引として利息のカットや長期分割に応じてもらえない場合があります。

信用情報に影響が出る

信用情報機関に情報が登録され、借入れが一定期間できにくくなります。登録後5年間とされています。大手の業者については原則として借入れができなくなります。逆に中小企業だと、自己破産をした人を対象として貸付するなどケースバイケースなことがあります。

任意整理手続きの流れ

1.任意整理の手続きは、最初に司法書士に依頼をします。

2.その後、司法書士が受任通知という書類を各債権者に送ることで、督促がストップすることになります。

3.そこからおおむね3ヵ月ほどで債務額が確定し、債権者と司法書士が和解案を取りまとめます。

4.依頼から半年ほどしたら和解の内容に沿って返済を開始します。

5.依頼から返済開始までの期間に報酬等を分割支払うことが一般的です。

6.また、複数社から借入れをしている場合、支払いの管理を司法書士に依頼することができ、その場合は、司法書士に毎月一括で振込をして、司法書士から各債権者に返済をすることになります。

返済再開以降

返済再開後に注意する事項としては、滞納してしまうことが考えられます。1回であれば基本的に待ってもらえることが多いですが、2回以上滞納してしまうと一括で請求され、遅延損害金が付与されてしまいます。これは、任意整理で和解する内容としてそのように記載することが多いからです。

その場合でも、再度和解することが可能な場合や、自己破産、個人再生などほかの債務整理手段を選択することもできますので、一度専門家に相談することをお勧めします。

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