掛金の一部が所得控除になる金融商品の一つに「個人年金保険」があります。しかし、掛金全額が所得控除になる「iDeCo」や、運用益が非課税になる「NISA」と比べると、税制優遇の面では見劣りするのは否めません。また、「保険」なので保険会社のコストも差し引かれます。ただし、個人年金保険には他にはないメリットもあります。どのようなメリットがあるのか、解説します。

個人年金保険とは

まず、前提として、個人年金保険のしくみについて解説します。

個人年金保険は、「55歳まで」「60歳まで」「65歳まで」などの満期までお金(保険料)を支払い、満期がきたら、積み立てられたお金を原資として「年金」を受け取れる保険です。

年金のタイプは「10年」など決まった期間中必ず受け取れる「確定年金」と、亡くなるまで一生受け取れる「終身年金」があります。

本人が亡くなった場合、「確定年金」は年金受取期間中であれば相続人が年金を受け取れます。これに対し、「終身年金」は本人が亡くなったら年金がストップします。

いずれにしても、保険料を支払うと、その一部が「生命保険料控除」(個人年金保険料控除等)の対象となります。

◆個人年金保険で受けられる所得控除額

生命保険料控除の額は、所得税と住民税のそれぞれで以下の通りです。

所得税の所得控除額】

・年間保険料2万円以下:全額

・年間保険料2万円超~4万円:保険料×1/2+1万円

・年間保険料4万円超~8万円:保険料×1/4+2万円

・8万円超:4万円

【住民税における所得控除額】

・年間保険料1.2万円以下:全額

・年間保険料1.2万円超~3.2万円:保険料×1/2+0.6万円

・年間保険料3.2万円超~5.6万円:保険料×1/4+1.4万円

・5.6万円超:2.8万円

つまり、月々7,000円程度を積み立てれば、所得控除の枠をフルに使えることになります。

個人年金保険の商品にはどんな種類があるか

個人年金保険の商品の種類は大きく分けて以下の通りです。

【個人年金保険の種類】

・ふつうの個人年金保険(円建て)

・外貨建て個人年金保険

・変額個人年金保険

このうち、近年人気があるのは、利率が高めに設定されている「外貨建て個人年金保険」と、運用実績によっては大きくお金を増やせる可能性がある「変額個人年金保険」です。

以下、それぞれについて説明します。

◆外貨建て個人年金保険(主に米ドル建て)

「外貨建て個人年金保険」のなかでも、「米ドル建て」のものは、アメリカ国債で運用されているため、運用利率が高くなっています。

ただし、為替相場の変動の影響を受けるので、為替相場が「円高ドル安」に大きく振れると、円換算の金額が目減りする可能性があります。「為替リスク」とよばれるものです。

◆変額個人年金保険

「変額個人年金保険」は、株式や債券等の複数種類の投資信託のなかから、自分で運用方法や組み合わせを選ぶスタイルの商品です。

特に人気があるのが、「アメリカ株式」や「世界株式」の投資信託で運用するものです。

◆「外貨建て個人年金保険」「変額個人年金保険」のリスクと対処法

「外貨建て個人年金保険」は為替相場の変動、「変額個人年金保険」は株式相場や債券相場の変動の影響を受けるというリスクがあります。

しかし、毎月一定額の保険料を、長期間にわたって支払い続けると、リスクが抑えられ、着実にお金を増やせる可能性が高くなっていきます。

たとえば、保険料が月1万円の「米ドル建て個人年金保険」に加入すると、「1ドル133円」の時は1万円が約75.2ドル分になり、「1ドル110円」の時は約90.1ドル分となります。

これを長期間続ければ、結果として、その間の平均値で購入したことと同じ効果が得られます。騰落のリスクが分散され、長い目で見れば、お金が増えていく可能性が高いといえます。

「変額個人年金保険」についても同じことがいえます。株式相場が下落した場合は同じ額でたくさんの口数を購入できます。逆に、上昇した場合には、少ない口数を買うことになるので「高値掴み」で損する可能性を最小限に抑えることができます。

あえて個人年金保険に加入するメリットとは

個人年金保険の商品のなかには、特有のメリットを持つものがあります。以下の通りです。

・働けなくなったら「保険料払い込み免除」を受けられる

・過去の運用実績が優れている商品がある

◆働けなくなったら「保険料の払い込み免除」を受けられる

まず、個人年金保険の多くは、働けなくなったときに「保険料の払い込み免除」を受けられます。

所定の就業不能状態や障害状態になったら、保険料の払い込みが免除されます。以後は、保険会社が保険料を肩代わりして払っていってくれます。

iDeCoやNISAには、このような機能はありません。

◆過去の運用実績が優れている商品がある

次に、これは主に「変額個人年金保険」についてですが、過去の運用実績がきわめて優れている商品があります。一部のFPや保険営業マンの間で、iDeCoやNISAで外国株式のインデックスファンドに直接つみたて投資をするのに勝るとも劣らない運用実績が得られると評判のある商品もあります。

過去の運用実績が優れているのに加え、いざというときには上述した「保険料払い込み免除」も受けられるのであれば、iDeCo、NISAと併用する余地があります。

過去の運用実績については、保険会社がHPで公開しています。また、保険代理店の担当者やFPのなかには、変額保険や投資に詳しく、自身も加入している人がいます。そのような人に対し、自身の過去の運用実績や運用方針について質問すれば、教えてもらえます。

このように、個人年金保険は、商品によっては、iDeCoやNISAにはないメリットを持つものがあります。所得控除をフルに使える月7,000円程度で、iDeCoやNISAと併用するか、あるいは、保険特有の機能を重視して加入する余地があるといえます。

(※画像はイメージです/PIXTA)