「個人再生」とは何か知っていますか? 誰でもできるのか、家は、財産は、費用は……? といった個人再生に関する疑問について司法書士が解説します。本連載は、司法書士法人みどり法務事務所が運営するコラム『スマサポ』から一部編集してお届け。本稿では、「個人再生」のメリット、デメリット、手続きの流れについて説明します。
個人再生(手続き)とは
個人再生手続きとは、借金などの返済ができなくなった人が全債権者に対する返済総額を5分の1から10分の1程度に減らし、その減らした後の金額を原則3年間で分割して返済する再生計画を立て、債権者の意見を聞いたうえで裁判所が認めれば、その計画どおりの返済をすることによって、残りの債務(養育費・税金など一部の債務を除く)などが免除されるという手続きです。
個人再生 よくある質問
■Q1.誰でも個人再生はできるの?
A.毎月定期的な収入がある人で、借金の総額が5,000万円以下の人は個人再生ができます。
■Q2.ギャンブルやキャバクラなどの浪費が原因で借金をした人は?
A.個人再生をするにあたって借入れの原因は原則問われません。
■Q3.警備員をしているのだけど個人再生して問題ない?
A.個人再生には職業制限はありませんので、警備員の方も手続き可能です。
■Q4.家族や会社に内緒で手続きできる?
A.官報という政府が発行する新聞のようなもので、個人再生する旨と住所等が掲載されるため絶対に知られないとは言えません。
■Q5.家族に影響はない?
A.個人再生をしても家族に直接影響はありません。
■Q6.破産にかかる費用は?
A.個人再生をする際に必要な費用は申立て費用等数万円と再生委員の選任費用15万~35万円がかかります。ほかに専門家に申立ての依頼をする別途報酬等がかかります。
■Q7.再生委員の選任費用などが用意できない場合は?
A.専門家に依頼した場合は、支払いを止めている間に毎月分割して振り込みます。自分で手続きする場合は、支払いを止めて再生委員の選任費用等を貯めることになります。
■Q8.ブラックリストとかどうなる?
A.信用情報機関には5年から10年影響が残りますのでその間、借入れ等はできません。
■Q9.親戚や知り合いから借りているけど大丈夫か?
A.親戚や知人からの借入れも個人再生手続きに含めなくてはいけません。
■Q10.家や財産はどうなる?
A.個人再生の場合、清算価値と言って家や財産の価値・金額によって返済総額が変わることはあるが、処分しなければならないというわけではない。
■Q11.個人再生手続き中に海外旅行に行ける?
A.自己破産と違い海外旅行などの移動に制限はありません。
個人再生のメリット
ここで、個人再生のメリットについて触れていきましょう。
1.借金の元金が5分の1に減らせる
元金をぐっと減らせるので、任意整理手続きよりも金額的メリットが大きいです。
2.住宅ローンを除いて手続きできる
条件によりますが、破産と異なり、住宅ローンだけを手続きから除外できるので、引っ越しで生活環境を変える必要がありません。
3.借入れの原因にかかわらず手続きできる
破産と異なり原則借入れの原因は問われないので、ギャンブルによる借入れも手続き可能です。
4.資格職業の制限がない
どのような職業の方でも、転職や休職の必要なく手続きできます。
5.債権者の強制執行を止めることができる
個人再生のデメリット
今度は個人再生のデメリットについて簡単にみていきましょう。
1.一部の債権者を除いて手続きをすることができない
お世話になっている親戚などからお金を借りている場合でも、その人を手続きから除外することはできません。
2.家族に内緒で手続きすることが難しい
同一家計の収支等について裁判所に報告する必要があるためです。
3.借入れが一定期間できなくなる
信用情報機関に情報が登録され5年~10年程借入れが難しくなります。
4.住所氏名が、「官報」という国が発行する機関誌に公告される
5.借金がある程度残ってしまう
借金は減りますが、一定の金額が残ります。手続き後にも返済をしていく必要があります。※この点、破産手続きであれば原則借金はすべてなくなります。
6.債権者の過半数の同意が必要な場合がある
小規模個人再生の場合は上記同意が必要です。状況によっては再生手続きが認められない可能性があります。
個人再生の種類
個人再生手続きには小規模個人再生と給与所得者等再生があり、それぞれ条件があります。
小規模個人再生
将来的に継続また反復して収入があり、借金が5,000万円を超えない場合に手続きができ、債権者の過半数の同意が必要となる。
給与所得者等再生
小規模個人再生に加えて、給与変動の幅が年間20%以下である場合に手続きができ、債権者の同意は不要となっている。
個人再生の手続きの流れ
1.司法書士へ依頼し、受任通知が到達することで督促が止まる
2.司法書士が債務の調査及び収入や支出を確認して、個人再生申立書の作成をする
3.通帳や家計簿など必要な書類等の準備
4.3と並行して、司法書士報酬等の分割支払い
5.書類作成及び分割支払いが終わったら裁判所に申立て書提出
6.個人再生委員が選出され、債務履行テストが開始する
7.個人再生手続きの開始
8.債権の届け出及び調査
9.再生計画案の作成
10.再生計画案の決議
11.再生計画の認可・不認可
12.個人再生手続きの完了及び返済開始
個人再生は、借金などの返済ができなくなった人が、返済総額を5分の1から10分の1程度に減らし、その減らした後の金額を原則3年間で分割して返済するという手続きです。
特徴は、自己破産と違い、自宅を残すことができる点です。また、任意整理と違い元金も5分の1程度まで減らすことができる点、自己破産で職業が制限される人も選択できる点も特徴です。
逆に、自宅をもっていない人や自己破産によって職業が制限されない人は、自己破産手続きのほうが適している場合がありますのでよく検討しましょう。
なにがよいのかわからなくなってしまったときは、弁護士や司法書士といった専門家に一度相談してみるのがよいでしょう。
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