ヨーロッパでの大会で涙の棄権を余儀なくされたジャン。彼女の陣営の言動がハンガリーでは問題視されている(C)Getty Images

 若干二十歳の新鋭プレーヤーがバッシングの対象となっている。キッカケは現地7月18日ブダペストで開催されたWTAツアー「ハンガリアン・グランプリ」の女子シングルス1回戦でのハプニングだ。

 世界ランク45位の張帥(ジャン・シューアイ/中国)と、同ランク548位のアマリッサ・トート(ハンガリー)と対戦した一戦。その第1セットは5-5で迎えた第11ゲームで問題は起きた。

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 15-15で迎えたゲームでライン際に落ちたジャンのショットを主審はアウトと判定。ただ、ボールはライン上に残っているように見えるため、34歳のベテラン戦士は「インだ」と主張する。

 これに主審は目視でボール痕を確認。判定を変えずにゲームを再開させようとする。当然、納得のいかないジャンと彼女のコーチ陣たちは、敵地でブーイングが巻き起こるなかでもスーパーバイザーを呼ぶように求める。

 しかし、主審と運営側は試合続行を決定。約5分の中断の末に再開された直後に騒動を起きる。なんとトートが“証拠”となるボールの後を足で消してしまったのだ。

 20歳の俊英が取った行動にジャンは「ちょっと待って! まだマークを消さないで!」「ねぇ、ちょっとどういうつもり!?」と動揺。しばらくして再び始まったゲームをジャンはあっさりとブレイクされ、セットカウント5-6と追い込まれてしまう。そしてベンチに戻ると涙ながらに棄権を申し出たのである。

 正当なジャッジを下さなかったハンガリアンGPの運営と、ボール痕を消し去る不可解な行動に出たトートには、世界中で批判が相次いだ。とりわけ躍進の期待も大きかった俊英には母国メディアからも厳しい指摘がなされている。

 ハンガリーのニュースサイト『HVG』は「あなたが問題を起こしているから私はそうした」というトートが涙するジャンに放った発言を紹介したうえで、「テレビの映像は明らかに主審のジャッジが間違っていることを示している。この行動でトートがフェアプレー賞を受賞することはなくなった」と皮肉った。

 もっとも、『HVG』はジャン陣営が取った振る舞いを問題視してもいる。ボール痕を消してしまったトートに対して、「ジャンコーチ詐欺師だと暴言を吐いた」と誹謗中傷があったとし、「侮辱的な行動は認めるべきではない」と論じた。

 また、全国紙『Magyar Nemzet』も、勝利決定後に嬉々として喜んだために、「スポーツマンシップに欠ける」と批判されたトートについて「そもそも彼女だけでなく、全ての選手に勝利を喜ぶ権利がある」と指摘。そして彼女は自分よりも遥かに格上の相手と激戦を繰り広げ、WTAツアー初勝利を飾ったのだ。喜ぶ理由は明確だ」と擁護した。

 なお、試合後に冷静さを取り戻したジャンは中国版ツイッターの「ウェイボー」で「多くのファンや選手から温かいメッセージをもらいました! 本当にありがとう!」と感謝の気持ちを述べている。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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