2022年の映画界を席巻した『トップガン マーヴェリック』で、世代を超えた人気の高さを見せつけたトム・クルーズの主演最新作『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』がいよいよ日本公開となった。クルーズが初めて製作・主演を兼任した記念すべき第1作から27年、シリーズ7作目となる今作の批評集積サイト「ロッテン・トマト」に寄せられた観客からの好意的評価の割合は94%(7月20日時点)と、シリーズ歴代最高となった。アクション、サスペンス、ストーリーとあらゆる面で集大成と呼ぶにふさわしい、大スクリーンによく似合う本作をIMAXで徹底的に味わうための注目ポイントを紹介したい。

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アメリカの極秘機関IMF(インポッシブル・ミッション・フォースこと極秘任務実行部隊)のエージェント、イーサン・ハントの活躍を描く本シリーズ。今作は最新AIを巡る争奪戦と、イーサンの秘められた過去を絡めて展開する。ベーリング海でロシア潜水艦セヴァストポリが沈没し、回収された遺体から2本の鍵が持ち去られた。それは国防、経済、インフラを制するAIシステム“それ(エンティティ)”を操るための重要な鍵で、すでに各国が水面下で行方を追っていた。イーサン(クルーズ)は、ルーサー(ヴィング・レイムス)やベンジー(サイモン・ペッグ)、イルサ(レベッカ・ファーガソン)とチームを組んで鍵を追跡。そんな彼らの前に、若き日のイーサンと因縁のある謎の男ガブリエル(イーサイ・モラレス)が立ちはだかる。

トム・クルーズの本気アクションに、ただただ圧倒される

冒頭からアクション&ミステリアスな展開でぐいぐい引っぱるのが「ミッション:インポッシブル(以下、M:I)」流。今作はプロローグで“それ”を巡る争奪戦などアウトラインを紹介し、本編突入と同時にノンストップで熾烈な争奪戦がスタートする。

まず度胆を抜かれるのが砂漠の銃撃戦だ。傭兵チームに狙われているイルサを追って、イーサンはアラブ首長国連邦へ。馬に乗ったイーサンと傭兵たちのチェイスや、砂嵐が吹きすさぶなかでの銃撃戦などアドレナリン全開のアクションを展開。IMAXの包み込むような映像と音響で、いっきに危険な世界に引き込まれていくはずだ。

第1作でチェコプラハの街を全力疾走して以来、世界各地を駆け抜けてきたイーサン。両手を大きく振りながらスクリーンを躍動するその姿は、「M:I」シリーズに欠かせない見せ場である。本作における最大のフィールドが、アブダビ国際空港に新設された超巨大ターミナル「ミッドフィールド・ターミナル」。入り組んだターミナル内で、鍵を持つターゲットとそれを追うイーサンと、命令を無視するイーサン確保を命じられたCIA工作員が人波をかき分けながらスリリングな追走劇を繰り広げる。流れるような移動撮影を駆使した映像は、IMAXの巨大スクリーンで観ると、現場を目の当たりにしているような臨場感が味わえる。

本作はイーサンと惹かれ合うイルサのほかにもう一人、ヒロインが登場する。それがミステリアスな盗みのプロフェッショナルグレースだ。美貌とナチュラルな“演技力”でイーサンを手玉にとり、ターミナルでとつぜん鍵の争奪戦に乱入してきた彼女。IMFやCIA、ガブリエルとも違う立ち位置だが、本作のキーマンとして活躍する。そんなグレースを演じているのは、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)などMCU作品でキャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースの恋人ペギーカーターを演じたヘイリー・アトウェル。イルサとはまた違う感情曲線で心揺さぶる見せ場を作るので、楽しみにしてほしい。

過激なカーチェイスも「M:I」シリーズのお楽しみ。本作ではイーサンとグレースが、ガブリエルのチームとイタリアローマの街で熾烈なカーチェイスを繰り広げる。アウディBMWランボルギーニアルファ ロメオポルシェ…トップメーカーのモデルが見せ場を飾ってきた「M:I」だが、本作で一番の見せ場を飾るのは、なんと小型の大衆車フィアット500の旧モデル。その小ささに一瞬拍子抜けするものの、小さいボディを活かして狭い路地でドリフトしたり階段を駆け下りたりと、走りっぷりは大型車に一歩も引けをとらない。本物が信条の「M:I」だけに、実際に車を走らせて撮影しており、高精細なIMAXならリアルなエンジン音や車体の質感がそのまま伝わってくる。彼らを追う巨大なハマーSUVの大暴走も凄まじい疾走感なので、このシーンはぜひIMAXで体感してほしい。

スパイアクションが数あるなかで、「M:I」シリーズを無二の存在にしているのが高所スタント。第1作の宙吊りから始まって、屋根の上や高層ビル外壁での潜入ミッション、上昇していく飛行機にしがみつくなど数々の高所スタントクルーズ自身が演じてきた。本作で見せるのが、高さ1,200mの絶壁からのダイブ。バイクで助走をつけてジャンプして、スカイダイブのあとにパラシュートで着地する離れ技だ。

今回もバイクのジャンプ台をCGで消した程度で、クルーズ自らスタントに挑戦。強風で皮膚がたなびくアップから、谷間に吸い込まれるように遠のくまでをワンカットで捕らえた映像は、まるで一緒に落ちているような没入感。鮮明な映像に加え、激しい風切り音にもIMAXのクオリティが実感できる。ほかにも先述した街中でのバイクチェイス、ナイフや格闘による接近戦、崖から落ちる車内からの脱出など次から次に見せ場が登場。これまでのシリーズの総決算というべきアクションの連続に圧倒されるだろう。

■世界を駆け巡る冒険に、臨場感あふれるIMAXで没入!

世界各地を舞台にIMFが活躍する「M:I」シリーズ。本作でもイーサンたちは中東からヨーロッパにかけ多彩なロケーションのなかで危険なミッションを遂行する。起伏のある砂丘が広がる幻想的な砂漠地帯は、アラブ首長国連邦の首都アブダビ周辺で撮影。黄色い砂に覆われた広大な景色の中、隊列を組んだ傭兵たちとそれを遠巻きに追跡するイーサンを捕らえた空撮など、開放感ある見せ場が味わえる。アブダビ国際空港のミッドフィールド・ターミナルは、撮影時点ではまだオープン前。そのためターミナル内での撮影は自由度が高く、エスカレーターやショップなど様々な場所でアクションを含む撮影が可能となった。最新鋭のターミナルの広大さをじっくり堪能できるのも、世界各国で物語が展開する本作ならではの魅力の一つとなっている。

鍵を追ってヨーロッパに飛んだイーサンたちは、ローマ市内で派手なカーチェイスを展開する。石畳の路地やスペイン広場の大階段など名所でのチェイスのほか、イーサンチーム、ガブリエルチームのほかローマ警察、CIAと四つどもえの大がかりな銃撃戦もお楽しみだ。続いてイーサンたちはヴェニスに移動。迷路のような路地や運河が行き交う街でのアクロバティックな追走劇や格闘戦はおもに夜が舞台。そのため、ローマとはまた違った幻想的な雰囲気に満ちている。薄暗いシーンでも細部のディテールまでしっかり見ることができるのは、IMAXならではだ。

続いての舞台はオーストリアのアルプス。渓谷を走るオリエント急行の車内で、鍵を巡る争奪戦が繰り広げられる。1,200mのダイブを含め、このシーンの撮影が行われたのはノルウェー。遙か遠くまで連なる山々、険しい絶壁に囲まれた牧草地帯といった情景が雰囲気を盛り上げる。そんな大自然を背景にしたダイブが撮影されたのは、地元の人々から「トロールの壁」と呼ばれている断崖絶壁。岩肌がむきだしになった荒々しい景観がクルーズの大スタントを盛り上げているので、ぜひIMAXの巨大スクリーンでその異様な迫力を体感してほしい。

■暴走するAIに翻弄され、選択を迫られる…迫真のドラマに心揺さぶられる!

自己防衛本能に目覚めたAIを題材にした本作は、AIが人類を超える転換点「シンギュラリティ」や膨大なデータをもとにアウトプットを創作する「ジェネレーティブAI」がキーワードの今日、もっとも旬なテーマと言える。シリーズを通し「なにが正義か、なにが悪か」を投げかけ続けてきた「M:I」だが、本作ではいかに救うかを中心にドラマを展開。AIの予測に基づいて仲間すら始末する状況のなか、イーサンは国家情報局やCIAの意向に逆らい“それ”を葬るため独自に行動を開始する。

相手の2歩、3歩先を読んで行動してきたイーサンだが “それ”に翻弄され、大切な仲間が危険にさらされる…。苦悩するキャラクターを演じる、俳優たちの繊細な感情表現も本作の魅力。砂漠で傭兵を迎え撃つイルサが双眼鏡イーサンの姿を目にした瞬間に見せる表情の変化、夕日に照らされたヴェニスで見つめ合うイーサンとイルサ、ルーサーベンジーとの友情など、演技派たちの名演が光る。アウトサイダーとして生きてきたグレースの心の変化や、イーサンを追っていた者たちまでもが戦いのなかで彼にシンパシーを抱くさまなど、しぐさや表情で物語るシーンが多い本作。ささいな表情の変化をしっかり伝える高精細なIMAXなら、キャラクターへの共感度の高まりも実感できるだろう。

また、第1作でイーサンと敵対したCIAのキトリッジ(ヘンリー・ツェーニー)が復帰し、前作『ミッション:インポッシブルフォールアウト』(18)に続いてミステリアスな武器商人ホワイト・ウィドウ(ヴァネッサカービー)が登場することもトピックだが、彼らがクライマックスに向け集合していくドラマの妙味も、IMAXで味わえばいっそう胸に刺さるはずだ。

スクリーンでの映画体験の重要性を訴えてきたクルーズは、コロナが猛威をふるった2020年に本作のクリストファー・マッカリー監督とマスク姿で映画館を訪れ『TENET テネット』を鑑賞したとSNSで報告。昨年は閉塞感を吹き飛ばす痛快作『トップガン マーヴェリック』を世界的に大ヒットさせ、スティーヴン・スピルバーグ監督から映画館に活気をもたらしたと称賛されたのも記憶に新しい。

映画館での鑑賞にこだわりながら、精力的に作品を製作し、演じ続けるトム・クルーズ。そんな彼の作品だからこそ、究極の映画体験ができるIMAXでじっくりと味わい尽くしてほしい!

文/神武団四郎

ユーザーレビューはシリーズ最高に!IMAXでこそ楽しみたい、極限のエンタテインメントを解説/[c]2023 PARAMOUNT PICTURES.