ビッグモーターによる自動車保険金の不正請求をめぐり、金融庁が動いています。保険業法違反に問われる可能性も出てきましたが、そもそもなぜ保険金の不適切な請求が続いていたのでしょうか。金融庁の調査が待たれます。

「自分のクルマで行われていたら非常に不愉快」国民感情にも配慮して対応

中古車販売大手のビッグモーター(兼重宏行社長)による保険金の不正請求が問題になっていることで、金融庁が事実関係の確認を行っていることがわかりました。鈴木俊一金融担当相が2023年7月21日(金)の閣議後会見で明らかにしました。

ビッグモーターが保険業法上の保険代理店として保険募集を行っていることから事実関係の確認を進めている。保険契約者保護に欠ける悪質な問題が認められる場合は、法令に基づき適切に対応したい」(鈴木金融担当相)

ビッグモーターの不適切な保険請求が、同社の経営に関わる可能性がでています。同社の特別調査委員会は報告書の中で、不要、不正な作業や、クルマへの損傷を誤認させる行為などが行われたことを指摘しています。同社は自動車保険の募集や契約の締結を代行する保険代理店であることから、これらが業法違反に問われる可能性があります。

請求行為についての不適切性を精査している段階で、これまでのところビッグモーターへのヒアリングや立ち入り調査には言及していません。ただ、鈴木氏は一連の請求行為について、こう述べています。

「私もテレビで報道を見て、本当にこんなことがあるのかとわが目を疑う状況で、報道が事実であれば許されないことであると思う。クルマを愛する気持ちをもっている人はたくさんいて、もし自分のクルマにああいう行為が行われていた報道が事実であれば非常に不愉快であろう。そういう国民感情にもしっかり配慮して、不適切な保険契約者保護に欠ける悪質な問題は法令に基づき適切に対応する」

保険会社の責任は?

一方で、ビッグモーターの不適切な請求が、なぜ続いていたのか、という疑問が残ります。

特別調査委員会の報告書は、ビッグモーターが2021年に行った板金塗装案件およそ2万8000件から10%を無作為抽出し、全国技術アジャスター協会によるサンプルテストを実施。その44%(約1200件)で何らかの不適切な行為が行われた疑いがある、という結果を記載しています。

保険会社による適切な物損事故調査が行われていれば、代理店資格を停止するなどの方法で拡大を止めることができたかもしれません。ビッグモーターが保険会社からの出向者を受け入れていた、という報道もありました。金融庁の対応は慎重です。

「事実関係の確認を進めているところなので、損保会社の責任については確定したことはいえない」(鈴木金融担当相)

ビッグモーター不正疑惑で保険会社に求められた保険契約者保護は、何だったのでしょうか。

ビッグモーターの店舗(中島みなみ撮影)。