トートとの騒動によって涙の棄権を余儀なくされたジャン。そんな彼女に謝罪の言葉が送られた。(C)Getty Images

 世界中からの猛烈なバッシングを受け、テニス界の新鋭が謝罪とともに心境を打ち明けた。

 去る7月18日(現地)に行なわれた女子テニスのWTAツアー・ハンガリアンGP(ブダペスト)の女子シングルス1回戦で対戦相手に「不快な振る舞いをした」として多方面から非難されたアマリッサ・トート(ハンガリー)が自身のSNSで謝罪した。

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 問題となったのは、トートが張帥(ジャン・シューアイ/中国)と対峙した試合中の出来事だった。

 5-5で迎えた第1セットの第11ゲームで、相手コートのライン際へ飛んだフォアハンドのクロスがアウトと判定されたジャンが抗議。判定は覆らず試合は続行されたのだが、その後にトートが残っていたボール痕を足で消してしまったのだ。

 これにジャンは「ちょっと待って! まだマークを消さないで! ねぇ!どういうつもり? 何をやっているの?」と再び抗議。それでもジャッジが変わらずにプレー続行を命じられた34歳のベテランは、動揺してしまった影響からゲームをブレイクされてしまう。そしてセットカウント5-6と追い込れる。

 ただ、一連の騒動で戦意を喪失してしまったジャンはベンチに戻って呼吸を整えようと試みるが、今度はパニック発作のような状態に。試合が続けられる状態ではなくなり、無念の棄権を大会側に申し出た。

 試合後に執拗なアピールを続けたジャンと彼女のコーチ陣は観衆からブーイングを浴びた。その最中に失意の相手と握手をした後に両手を上げて勝利を祝ったトートは、試合後に母国ラジオ局のフラッシュインタビューで「結局のところトラブルを起こしたのは彼女だ」と回答。あくまで自分の行動の正当性を主張していた。

 しかし、騒動が世界的に波及すると、弱冠二十歳の新鋭が見せた振る舞いには批判の声が殺到。スポーツマンシップに欠ける行動としてメディアやファン、そして同業者たちからもバッシングが寄せられた。

 そうした反響の大きさから事の重大さに気付いたのだろう。トートは現地7月20日に自身のフェイスブックを更新し、「ああいうことがあった試合後にあのような喜び方をすべきでなかったことは自覚しているし、申し訳なく思っています」と謝罪。そして、問題の振る舞いをしてしまった理由も明かした。

「私には、彼女(ジャン・シューアイ)はもちろん、誰かを軽視したり、傷つけたり、狂わせたりする意図はなかった。試合の興奮の中で行動してしまい、自分の感情にとらわれてしまいました。とにかくテニスをすることに集中していました。正直に言えば、あんな勝ち方はしたくなかった」

「私はジャン・シューアイを選手としても、人間としても、本当に尊敬しています。だから、近い将来に彼女とじっくりと話す機会があるなら、あの試合がこのような結果で終わってしまったことが、私にとっても、どれだけ残念なのかを伝えられればと思っています」

 動画内では何度も「申し訳ない」と謝罪の言葉を口にしているトート。そんな逸材の言葉をジャンはどう受け取るだろうか。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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