同一の仕事に従事する労働者は皆、同一水準の賃金が支払われるべきという「同一労働同一賃金」。2021年4月の法改正から2年が経過しましたが、対応済みの企業は多いとはいえない状況です。そんな同一労働同一賃金に一縷の望みを残す人たちがいます。みていきましょう。

正社員と非正規社員…同一労働同一賃金はありうるのか?

中小企業でも適用されるようになり2年が経過した「同一労働同一賃金」。これにより、正社員(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(パートタイム労働者・有期雇用労働者派遣労働者)が同じ労働を行っている場合、雇用形態が異なるという理由だけで賃金に差を付けることができなくなりました。

しかし「同じ仕事をしているなら同じ賃金」という判断は結構難しいもの。たとえば飲食店の店長とパート・アルバイト。どちらも客からオーダーをとり、調理場から出てきた料理を客のもとに運ぶ仕事をしていたとしても、店長は配膳以外の業務もありますし、店舗運営に対して責任もあります。同じ配膳の仕事に対して「同一労働同一賃金」を当てはめることに疑問が残ります。

このように、日本では雇用形態が違えば、責任や職務内容が異なるのが一般的。そのため「そもそも正社員と非正規が同一労働になることはない」という意見が多く聞かれます。

そのためでしょうか、同一労働同一賃金に対して、待遇者是正の動きは不完全というのが実情。マイナビが全国の企業、個人を対象に実施した『非正規雇用の給与・待遇に関する企業調査(2023年)』によると、正社員と非正規社員間での待遇差是正のために「基本給」を改定した割合は43.6%。企業規模別にみると、大企業では49.9%、中小企業では40.5%。大企業でも半数に留まります。

また「賞与」については改定済みが31.0%、「役職手当」については29.9%、「精皆勤手当」については24.5%、「退職金」については23.8%となっています。

このように「同一労働同一賃金」に向けての動きは、まだまだ中途半端という状況。また前述のように、雇用形態により明確に責任や職務内容は異なるので、たとえ制度が整備されたところで「格差が是正されることはない」というのが大方の見方です。

賃金が上がるかも…淡い期待を抱いた、非正規・団塊ジュニアたち

「同一労働同一賃金」に淡い期待を持っていた人もいます。

たとえば「団塊ジュニア」と呼ばれる人たち。1971年1974年、第2次ベビーブームに誕生し、日本で最も人口ボリュームの多い世代です。そして「失われた30年」といわれる日本において、辛酸を舐め続けてきた人たちともいえるかもしれません。

時代は、1990年代。大卒求人倍率は、1991年(3月卒)で2.86倍でしたが、1994年1997年にかけては1倍台前半〜半ばまで悪化しました。団塊ジュニアはまさに就職氷河期の1期生。日本で初めて「大学を卒業しても働き口が見つからない」という経験をした世代です。

「いつかは正社員に……」という想いでとりあえず非正規社員の道を歩んだものの、雇用環境が改善した頃には30代。面接では「どんなキャリアをお持ちですか?」「マネジメント経験はありますか?」などと聞かれる年齢で、正社員への高いハードルを前に挫折。現在、「一度も正社員経験のない50代非正規」として生きているケースも珍しくはありません。

厚生労働省令和4年賃金構造基本統計調査』によると、50代前半・大卒の非正規男性の平均給与は月収で26.1万円、年収で364.8万円。月々の手取りは、独身であれば20万円程度となり、これが毎月の生活費となります。余裕があるとはとても言い難い水準です。一方、同年代の正社員だと月収は42.1万円、年収は693.1万円。もう埋めようがない格差が生じています。

大学を卒業したら、そこはどん底。這い上がることもできず現在に至る、50代・非正規の団塊ジュニア正社員になりたくても叶わず、そんな不遇をニュースなどで取り上げられることもない。「何のために生まれてきたのか……」と自問してしまうほど、見捨てられた存在です。そんな彼らに対し支援が叫ばれるようになったのは、つい最近のこと。しかし団塊ジュニアはすでに50代に突入しています。生涯どん底か、それとも最後の最後に浮上できるのか……いまが、正念場です。

(写真はイメージです/PIXTA)