車から姿を変えるロボット生命体“トランスフォーマー”と、動物から変形する“ビースト”が共闘する『トランスフォーマー/ビースト覚醒』(8月4日公開)。本作で登場する“ビースト”のオリジナルである「ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー」は、日本で一大ブームを巻き起こした3Dテレビアニメだったが、その人気に火をつけたのは、後に“声優無法地帯”と呼ばれるまでになった豪華声優陣たちのアドリブ合戦である。時には作品の内容やオリジナルの言語とまったく関係のないことを喋りまくる、その自由すぎるセリフの数々が子どもたちのハートをつかみ、大人になった彼らの記憶にいまもしっかり刻まれている。
【写真を見る】公式が病気…前代未聞の予告編収録、無謀とも思えるアフレコ現場の舞台裏を大公開!
そんな伝説の“声優無法地帯”が、『トランスフォーマー/ビースト覚醒』で奇跡の復活!地上最強の恐竜ティラノザウルスから変形する“メガトロン”の声を担当した千葉繁、ネズミから姿を変える“ラットル”の山口勝平、チーターやスズメバチをスキャンして生まれた“チータス”と“ワスピーター”に息を吹き込んだ高木渉と加藤賢崇が、独自のギャグやアドリブなど好き勝手にぶち込んで大暴走する予告編が公開された。
とはいえ、映画本編に関わったのは“チータス”(本編での役柄は“チーター”)を演じた高木渉だけ。千葉と山口、加藤は参加していないという特異な状態で、“声優無法地帯”の4人は本領を発揮できたのか。そこには“ビースト”のテレビシリーズを演出し、本編の吹替版やこの予告編も手掛けた音響監督・岩浪美和のどんな狙いと想いがあったのか。MOVIE WALKER PRESSでは、そんな無謀とも思えるアフレコの収録現場の潜入!バカバカしくも楽しげな“声”の競演を、声優陣と岩浪による熱いトークと共にレポートする。
■これ台本だったの?ファンの心を鷲掴みする千葉トロンの復活!
7月中旬の暑いある日。収録開始時刻の12時半になると、メイクルームで旧交を温めていたレジェンドの4人がその和やかなムードのままスタジオ入り。均等に立てられたマイクの前に立つと、高木は「賢崇さんとは本当に『ビーストウォーズ』以来。やっと会えました!」と再会の喜びを口にする。
すると加藤は「こうやって生きて会えただけでも幸せです。ちなみに、今日僕が着ているのは7年前の『ビーストウォーズ』20周年記念の公式Tシャツです」と笑顔を見せ、山口が「物持ちいいですね~」の言葉に「『トランスフォーマー』愛がありますからね」と胸を張る。ところが、高木が「でも賢崇さん、今日台本を持ってこなかったんですよね」とツッコミを入れると、千葉が「なにしにきたの?」とダメ出し。加藤は一気に小さくなって、みんなの爆笑を誘った。そんな手荒くも、長年のブランクを感じさせないフレンドリーな空気のなかで、いよいよアフレコの収録が始まった。
「二日酔いで目がとろ~ん。元よい子のみんな元気かなあ?」。アフレコはメガトロンに扮したそんな千葉の第一声からスタートしたので、“さすが千葉さん!最初っからダジャレをぶっ込んできた”と興奮したが、これは意外にも台本どおり。それこそ“声優無法地帯”は声優陣が好き勝手に言いたいことを喋り倒すと勝手に思っていたが、実際は岩浪による台本があって、そこにはファンの心をくすぐるギャグが最初から散りばめられているという事実には驚きだった。
例えば、同じくメガトロンの「トム(・クルーズ)には負けない!スタントなしでバリバリのアクションをやっちゃうよー!崖からバイクで飛び降りちゃうよー!」なんてセリフも、台本どおりのもの。だが、声優陣がそれぞれのキャラクターの口調で演じていくと、岩浪は「もう少し酒が抜けた体でお願いします」などと微調整を加えていくから、アドリブだと勘違いしてしまうぐらい生々しいものになるのだ。
■「ビーストウォーズ アゲイン」で新規ナレーションを収録したのに…映画未出演のラットルが魂のアドリブ!
ここからはアフレコ収録の具体的な模様を紹介していこう。まずは、ワスピーターとメガトロンのかけ合いから。
加藤(ワスピーター)「今回、映画に出れるっていうんで、全身永久脱毛の予約をしましたぶ~ん」
千葉(メガトロン)「マジかよ~?」
加藤(ワスピーター)「だけど、脱毛サロンが無認可営業で摘発されちゃって、倒産してしまったぶ~ん」
ここで岩浪からストップが入る。息の合ったかけ合いが続いたが、ワスピーターの2つ目のセリフは、実は加藤のアドリブで、それに対して岩浪から「脱毛サロンが無認可営業で…っていうのは生々しすぎるからやめましょう」との指示。すると加藤は、「俺も引っかかったんですよ、マジな話」と、思いがけない告白をし始めた。「脱毛サロンを8回分予約したんだけど、3回終わったところで倒産しちゃったんですよね(苦笑)」。これにはみんな大爆笑!というか、笑うしかなかった。
次は、本編への出演がないことがわかり、落ち込んでいるメガトロンとワスピーターを憐れむラットルに衝撃が走るくだりだ。
高木(チーター)「君も出番ないじゃん!」
山口(ラットル)「え~、なんで?おいらが出ないビーストなんてビーストウォーズじゃないっしょ!“ビーストウォ”だよ」
ここのラットルのセリフは、台本では「おいらが出ないビーストなんてビーストじゃないっしょ!」となっていて、“ビーストウォ”は山口のアドリブだったが、本人もあんまりだと思ったのか、OKテイクではなくなっていった。
■これぞ“声優無法地帯”!NG覚悟のムチャなネタでワスピーターの暴走が止まらない…
このように声優陣は、合いの手のように細かいギャグをボコボコ自由に入れ、テイクを重ねる度に新ネタを繰り出していたが、この日の加藤は、誰よりも暴走し、危険なアドリブを容赦なくぶち込んでいった。
本編への出演がないことがわかったワスピーターが愚痴る場面では、「僕ちん親戚のみんなにムビチケを送っちゃったぶ~ん」という台本のセリフを、「僕ちゃん、野球部の後輩にムビチケ送っちゃったぶ~ん」に変えて、岩浪から「ワスピーターって野球部だったっけ?」と疑問形のツッコミが入る。だが、これはなんとなくスルーされて加藤も涼しい顔をしている。
けれど、「俺たちに出番がないなんて、これは〇〇(※危険すぎて記事内での紹介は避けておく)の陰謀だ!」なんて言い出した時だけは、岩浪も収録を止めて「ダメだよ~!」と半分笑いながら厳重注意。加藤も「ボツになるのをわかったうえでやっちゃいました(笑)」と頭を搔きながら、「次はちゃんと台本どおりにやりま~す」と反省していた。
このようなムチャなチャレンジを、結果的にはボツになったとしても試せるのが“声優無法地帯”のいいところなのかもしれない。そこでは野放しにしているようで、声優陣をうまく掌の上で遊ばせている岩浪の器の大きさも感じられた。大盛りあがりのアフレコは、テストを入れながら2パターン収録して、30分もかからない超最速で終了した。
収録を終えた高木が加藤に「やっぱり賢崇さん、おもしろいわ~。いろんなものが出てくるもん!」と声をかけ、みんな満足そうに充実の笑顔を浮かべていたのが印象的だった。そして、収録後の高いテンションままインタビューに突入すると、それこそまさに制御不能の“無法地帯”に…。誰にも止められない激烈トークが始まってしまった!
■「急に“出てない人だけで予告編の声を録る”っていうオファーが来ました(笑)」(加藤)
――いまアフレコの様子も見せていただきました。「ビーストウォーズ」のメンバーが集まって収録するのは久しぶりなんですよね?
加藤「2016年に『ビーストウォーズ』20周年記念というちょっと大がかりなイベントがあったんですけど、それ以来なので、7年ぶりですね」
――とは思えないぐらい息がピッタリでした(笑)
千葉「いやいや、このメンバーだからね」
高木「なんか、ほどよい緊張感がありましたね。だって、なにが出てくるかわかんないですもん、この2人(千葉、加藤)からは(笑)」
――そもそも千葉さん、山口さん、加藤さんは、自分が参加していない映画の予告編のアフレコの話がきた時に、正直どう思いましたか?
千葉「いや、もう訳がわかんないと言うか、どうしたらいいんだろう?って思いましたよ」
山口「『トランスフォーマー/ビースト覚醒』の内容も知らないんだもんね(笑)」
加藤「3年前ぐらい前に、次の映画は『ビースト』になるかもしれないっていう話があったから、みんな聞かれたでしょ、“ラットルは出るんですか?”とか“メガトロンは出るんですか?”って。俺もすごい言われて、その時は『そんなこと言われても、わかんねえよ』としか答えようがなかったんだけど、だんだん情報が入ってくるにつれて、今回はワスピーターは出てないらしいっていうのがわかって。もう自分から話題にしなくてもいいかなって思っていたんですけど、そしたら急に“出てない人だけで予告編の声を録る”っていうオファーが来たので、もう流れ弾に当たったような感じでした(笑)」
千葉「僕もめっちゃお金のかかった超大作映画には絶対呼ばれないと思っていたし、呼ばれた試しがないけど、案の定、今回も本編のオファーはなくて(笑)。だから、予告に呼ばれたのは逆にうれしかったですよ」
山口「そうですね。『ビーストウォーズ』はもともと日本の作り方が独特で。オリジナルの米国版と話とかもちょっと変えて、楽しめるようにしていたじゃないですか?」
岩浪「話は変えてないですよ」
山口「でも、作り方は違っていたので、まじめなテイストになると呼ばれないかもなと思って。まあ、こやぴー(子安武人)がオプティマスプライマル役でキャスティングされた時にはちょっと希望の光が見えたんだけど、自分が声を担当したラットルの登場がないってわかったあとは、キャスティングへの興味が、チーターの声は高木渉になるのかどうかに移りましたね」
千葉「あ~、キャストも変えられるからね」
岩浪「でも、予告の特報が最初に出た時、ものすごい再生数だったんですよ。で、『当然キャストはテレビシリーズの“声優無法地帯”になるんだよね?』『演出は岩浪だよね?』みたいなコメントがいっぱい出たから、東和ピクチャーズさんもきっと宣伝はその流れに乗っておこうと思ったんじゃない?(笑)」
■「本編がまじめだから、皆さんを逆に予告編のアフレコにお呼びしました」(岩浪)
――本編に出ていない3人を呼んで予告を作るというのは岩浪さんのアイデアですか?
岩浪「まあ、そうですね。東和ピクチャーズさんはかつての“声優無法地帯”みたいなノリで宣伝してるけど、『トランスフォーマー/ビースト覚醒』の本編自体はいたってまじめですからね(笑)」
千葉「そうだろうな~」
岩浪「でも、昔デタラメな宣伝をしていた東宝東和さんの流れを汲む東和ピクチャーズさんだから、なにをやっても大丈夫だろうと思って。まあ若干、“声優無法地帯の人たちがスクリーンでアドリブをかますのかな”みたいに思わせとけって気持ちもありましたけどね(笑)」
高木「ただ、お客さんを裏切ることになるのだけは嫌だなと思ってましたね。これだけ、『ビーストウォーズ』とか言っておいて…」
岩浪「いや、本編がまじめだから、皆さんを逆に予告編のアフレコにお呼びしたんですよ」
加藤「(かつての『ビーストウォーズ』ファンに対する)罪滅ぼしなんですね(笑)」
岩浪「そうそう。だけどぶっちゃけ、25年前の『ビーストウォーズ』も日本以外あまりヒットしてないんですよ」
山口「そうなんだ」
高木「25年前のテレビシリーズは、俺たちだって1話目からは遊んでないからね。ずっとまじめにやっていて、3話目か4話目だったかな?」
山口「早い!」
千葉「あれは岩浪さんが全部仕掛けたんですよ」
高木「みんなで一緒に録っていたから、だんだん盛り上がってきて…」
千葉「岩浪さんが最初に『千葉さん、屋台骨を全部壊したいんですけど…』って言い出したんです(笑)」
岩浪「僕、言った覚えがないんですけどね(笑)」
千葉「いやいや。『いきなり屋台骨をぶっ倒しちゃうと後ろが怖いから、隅っこの柱のあたりからかじってください。シロアリですよ!』って」
高木「シロアリ(笑)」
千葉「気がついた屋台骨がなかったっていう状態にしたいと。一気に行っちゃうとバレるし、メインキャラの声をアテている人たちがやるわけにはいかないけれど、(千葉が声をアテていた)悪役のメガトロンならいいだろうって岩浪さんから言われて。『誠心誠意、かじらせてもらいます。隅からちょっとずつ、ちょっとずつ』って答えたんですよ(笑)」。
高木「それで、やられて落ちていくシーンで『あっ、もしもし母ちゃん、いまから帰るから』とかアドリブをぶっ込んできたんですね(笑)」
千葉「そうそう(笑)」
山口「えっ、岩浪さん、覚えてないんですか?」
岩浪「全然覚えてない」
千葉「いや、言いました! でも、すべてのキャラクターがリアルすぎて、ある意味怖かったんだよね。だから、お茶目で行くしかなかったんですよ」
高木「それは大事じゃないですか。子どもたちが喜んでくれないと意味がないし」
山口「やっぱりいまだに言われますもんね。当時観ていた子たちがいま30歳オーバーぐらいになってるけれど、『ビーストウォーズ』を観てましたって」
岩浪「『“ビースト”観て声優を目指しました』っていう子もけっこういるしね。」
高木「それ、ヤバいね(笑)」
岩浪「『ごめんね』って(笑)」
高木「謝っちゃうんだ(笑)」
岩浪「『子どものころは、“声優になったら、テレビで好きなことを喋っていいんだ”と思っていたけど、全然違っていた』って言われますから(笑)」
山口「だから『ごめんね』(笑)」
■「『あ~、これこれ、こんな収録』って当時の雰囲気が一気に蘇ってきました」(高木)
――「ビーストウォーズ」ならではの理由で、“声優無法地帯”が始まったんですね(笑)
岩浪「そう。でも、“声優無法地帯”というのは観てくださった方がつけてくれた、結果的にそうなったネーミングで。決して無闇に暴走してもらっているわけではないし、ちゃんと狙いもあるんですよ」
高木「まじめな話をしちゃうと、岩浪さんは僕たちに『自由にやって』と言いながらも、『これはいい、あれはダメ』ってちゃんとジャッジをしてくれる。そんな岩浪さんのもとで3回、4回、5回と高いテンションをキープし続けながらセリフの応酬を繰り返しているから、それが無法地帯のように楽しそうに見えるんですよね」
岩浪「さっき『1話、2話は普通』とか言っていたけど、観ている人はそうは思わない。そこはやっぱり皆さんの話芸だし、『全部アドリブじゃね~か!』って言われることも多いけれど、意外と台本どおりだったりするんですよ(笑)。ただ、アドリブに聞こえる生きたセリフを皆さんが口にしてくれたから人気が出たのは確かですよ。オリジナルの英語版は世界観やストーリーが強調されすぎててキャラクターが弱かったし、スポンサーのタカラ(現:タカラトミー)さんもキャラクターをもっと強調してほしいという要望だったので、真剣にふざけたんです」
高木「そうそう、だから自分でリハーサルしてる時に、ここにこんなこと言えるなぁなんて、ネタを2つ、3つ考えてましたよね。あとは本番の流れで臨機応変に出たとこ勝負でいこう、なんて」
加藤「アドリブってその場で考えたことを言うものだけど、この現場ではそうじゃない。みんな台本に、アドリブ用のセリフをびっしり書いて準備万端でやってくる(笑)」
千葉「でも、どれを読んでいいのかわかんなくなる時もあったな(笑)」
高木「そしたら、今度は翻訳のアンゼたかしさんが僕らに合わせるようにセリフで遊ぶようになってきて」
岩浪「あれ、困ったんだよ。『ちょっと待って、アンゼさん。オリジナルの英語はなんて言ってるの?』って(笑)」
千葉「ストーリーがわかんなくなっちゃう(笑)」
高木「ただ、元々台本があるのにそれを変えるんだから、自分で出したアドリブがおもしろくなかった場合、元のアンゼさんの作ったセリフに戻すのはダメっていう暗黙のルールはありましたね。“1回アドリブを出したら、台本に戻すのはなし"っていうね」
岩浪「そう。翻訳家のアンゼさんのセリフを変えたんだからね!」
高木「『もっとおもしろいのが出るまでやって!』っていうね。だからアドリブを一つ出すにも勇気と緊張感が常にありましたよ」
岩浪「いや、僕だってね、1行のセリフを丸1日考えて書いたことがあるんですよ。それをサクッと変えられて、そっちのほうがおもしろかったりすると、チックショー!って思うんで、そういう緊張感はすごいあったよね」
加藤「演出家に事前に『台本のセリフをこう直しました』って了解を取らずに始めるし(笑)」
山口「声優同士も教えない。しかも、テストと本番で違うものを出てくる!」
岩浪「千葉さんなんて、音響監督もやってるのに、地上波じゃ絶対ダメに決まってるだろうってネタをぶっ込んでくるからビックリしますよ(笑)」
加藤「俺、『ビースト』以外のアニメの現場はほとんど知らないんですけど、ほかの現場はこうじゃないんでしょ?」
千葉「全然空気が違う」
加藤「普通の現場は、演出家になにも言わずにセリフ変えたりしないでしょ?」
千葉「岩浪さんがスタジオ入ってきて、『まあ、ど~せ皆さん聞かないんでしょうけど、このセリフは…』って説明しているのに、誰も台本を開かないし、誰も書き込まない(笑)。賢崇なんて、今日は台本を持ってこなかったし」
加藤「頭に入っていたつもりだったけど、そんなことはなかったという(笑)」
千葉「だけど、今日はただただ楽しかったですね。最初、画(予告編で使う動画)が送られてきたから、キャラクターが喋っている画に一応合わせるのかなって思ってたんだけど、まったく関係なくて(笑)。あっ、これは尺調整のための画だったんだなってあとから気づいた」
山口「また、岩浪さんが独自の映像を作ったと思ったの。テレビシリーズの映像を使って…」
千葉「寄せ集めてね」
山口「それを編集して作ったのかなと思っていたら、あっ、本編の映像じゃん!って」
千葉「まあ、どうせセリフを言うのに必死で、画なんか見ている時間なんてね~んだけどね(笑)」
加藤「画もないのに、ラットルとかワスピーターとか言って、観ている人がわかってくれればいいんですけどね」
岩浪「そういうのがわかるファン向けの企画なんで、大丈夫ですよ」
高木「僕は少しでも本編に出ている立場なので、最初は画を見ながら『ここにこんなセリフ入れちゃおうかなぁ』とか考えていたんだけど、そのうち、『僕以外みんな本編出てない人たちだから、絶対に画に合わせた予告になるはずがない!』って気づいて。明日になってみないとわからないからリハーサルやめました(笑)。それで今日来てみたら、『あ~、これこれ、こんな収録』って当時の雰囲気が一気に蘇ってきて、もうめちゃめちゃ楽しかったですよ」
千葉「だけど、テストを1回やったのはビックリしましたね」
高木「いや、昔も一応…」
岩浪「やってましたよ」
千葉「そうだっけ?」
岩浪「テレビシリーズでいちばんリテイクが多かったのは実は予告なんですよ。やっぱりCGで画の印象が硬かったから、本編では生放送みたいなライブ感が欲しくて。だからテイクも重ねなかったし、エチュードですから、リテイクはよっぽどマズいことを言わない限りなかった」
山口「そうですね、エチュードでしたね」
岩浪「今回の予告は、さっきも話したように、そんなエチュードを楽しみにしているかつてのファンの方に対する罪滅ぼし。東和ピクチャーズさんに乗せられて宣伝的に若干嘘をついてはいるけれど(笑)。『あのころのノリを期待してる人、ごめんね。これでも観てや』、そういう気持ちで作りましたね」
加藤「贖罪ですね(笑)」
高木「でも、映画の本編も本当におもしろいですからね」
岩浪「おもしろい、おもしろい。チーター以外はここにいるメンバーは出てないけど…」
山口「それ、言われる度にグサッとくるんだけど(笑)」
千葉「でも、三部作らしいから、次は出るかもしれない」
岩浪「今回はゴリラ(オプティマスプライマル)が一番頑張っていて。(オプティマスプライマルの声を演じた)子安武人さんと(オプティマスプライムの声を演じた)玄田哲章さんが力を合わせて戦う、熱い展開なんですよね」
高木「変身シーンだって見事ですよね」
岩浪「映画として単純におもしろいですよ」
千葉「ふざける余裕はないわけだね」
高木「ない。ちょこっとのアドリブもしてないもん」
山口「全然してないの?」
岩浪「してない、してない」
高木「台本を見たら最初の登場シーンのセリフだけ、語尾にチータスの口癖の“じゃん"が付いてたけど、あとは付いてなくて。岩浪さんが『ほかも“じゃん"を付けていいですよ』って言ってくれたので、入れました。でも、原音のないところではやっぱりアドリブが許されなかった。走ってるシーンで“一人しりとり"やろうかなとも思ったんだけど(笑)」
山口「しりとり、やらなかったの?」
高木「やらなかった」
山口「しりとりもできないのか~」
岩浪「映画の流れを阻害しちゃうからね(笑)」
制御不能なインタビューは、怒涛の勢いでトークが繰り広げられ、あっという間に時間切れに。今回のアフレコ収録の様子を収めたメイキングの動画も後日公開予定なので、“無法地帯”な収録風景を映像で体験してほしい。
取材・文/イソガイマサト
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