高校生にかかる教育費は公立・私立などの進学先や学校外の活動によって異なっていきます。また、大学へ進学する際は塾や受験などさらに費用が掛かる場面があります。ファイナンシャルプランナーの坂本綾子氏が著書『子どもにかかるお金の超基本』(河出書房新社)から高校生にかかる教育費がいくらくらいになるのかということと、負担軽減のため活用したい「高校授業料の実質無償化」といわれる助成金の制度について解説します。

高校生にかかる教育費

◆全日制なら年間の総額で公立約50万円、私立約100万円

高校は、学ぶ内容により、普通科、専門学科、総合学科があります。

普通科では中学で学んだ内容をさらに掘り下げます。専門学科では、農業、工業、商業など将来の職業につながることを学びます。総合学科は、普通科と専門学科の両方の科目があり、自分で選択して学びます。

[図表1][図表2]は、保護者が出した学習費総額を、全日制高校の公立・私立別、学年別、学科別にしたものです。公立・私立とも、普通科よりも専門学科や総合学科が安めです。1年生では入学準備のための費用がかかります。平均すると、公立が1年当たり約50万円、私立が約100万円になります。

◆学校教育費は進学先により年間20万円~70万円

学習費総額のうち、学校教育費を見てみましょう。入学準備の費用(入学金や制服代などで公立20万円程度、私立40万円程度)を除くと年間では公立が20万円〜30万円、私立が50万円〜70万円です。

一定の所得以下の家庭は、後述する授業料の助成が受けられます。ただし、多くの私立でかかる「施設整備費」には助成はありません。授業料の助成を前提に私立を選ぶ場合は、その点に考慮を。

高等専修学校は学科にもよりますが、学費の目安は私立高校と同程度。高等専門学校は多くが国立で、授業料などを文部科学省が定めています。入学金と授業料などを合わせると5年間で約126万円。教科書代などは別途かかります。

学校以外にもかかるお金

◆大学受験前の3年生は塾代に年間20万円

学校に関わる支出以外に、家庭の判断で支出するのが学校外活動費。高校生では、そのかなりの部分を占めるのが、学校の勉強を補完するための補助学習費です。

補助学習費は、専門学科や総合学科に比べると、大学まで進学する生徒が多い普通科が高くなっています。学年別では、学年が上がるにつれて高くなります。補助学習費のうちの学習塾の費用が高くなるからです。

高校卒業者の半分以上は大学に進学するので、3年生は学習塾に通う子どもが増え、支出も増えていることがうかがわれます。3年生は、私立・公立ともに平均して年間20万円前後を使っています。

◆年間100万円程度かかる大手塾も

ただし、3年生の全員が塾に通っているわけではないし、あくまで全国平均の調査データです。学習塾の費用は、地域や受講する科目、選んだ塾により異なります。大学受験は、大学や学部により入試科目に違いがあり、また同じ大学でも受験方法が複数あったりします。

一般受験のために学力をつけたいのか、学校推薦をもらうために高校の成績を上げたいのか、総合型選抜の準備をしたいのかにより受験対策も異なり、それに対応して学習塾にもいろいろなタイプがあります。大手の学習塾では、大学受験に関する情報も提供し、年間100万円程度かかるところも。

在学する高校の進路指導はもちろん、学習塾をどこまで活用するか、親子で検討しましょう。オンライン塾なら費用はだいぶ安くなります。

大学受験の費用

◆意外とかかる受験の費用準備を忘れずに

大学を受験する際の費用は、国立か私立か、何校受験するかなどにより違ってきます。主なものは、願書の送料、受験票用の顔写真の撮影費、受験料(検定料)、受験当日の交通費など。自宅から遠い大学を受けるための宿泊費や、滑り止めの大学の入学金を払う家庭もあるでしょう。

受験料は、1校3万円〜3万5,000円程度([図表5]参照​)。受験費用の合計は30万円前後というデータも([図表6]参照​)。

私立大学の中には、複数の学部や方式を併願すると受験料を割引き、地方試験会場を設置するところも。受験予定の大学の入試制度と合わせて受験料も確認し、総額の予算を決めましょう。

高校生等への授業料の助成

◆高校生等には公立高校の授業料程度を助成

国立・公立・私立を問わず、高校、高等専修学校、高等専門学校などの生徒に、国が支給するのが「高等学校等就学支援金」です。「高校の学費の実質無償化」と呼ばれることがあります。

金額の目安は公立高校の授業料程度の月9,900円、年間では11万8,800円(学校の種類により異なる)。国からの交付金を使って実際に支給するのは都道府県です。都道府県ごとに申請方法や支給の時期は異なります。在学する学校からの案内に従って手続きを。

就学支援金は、生徒に代わって学校が受け取り授業料にあてます。学校によっては、先に授業料を払い、後で就学支援金相当額が還付される場合もあります。

◆収入の条件を満たせば私立にはさらに加算

公立より授業料が高い私立には、加算があります。全日制の私立高校の場合は、月3万3,000円、年額では39万6,000円。ただし、実際に払う授業料がこれより安ければ、授業料の額が上限。逆に高ければ、超える分は自己負担です([図表5]参照)。

高等学校等就学支援金は、日本に住む高校生等が対象で、全国で約8割の生徒が利用しているとか。世帯の年収に上限がありますが、比較的高めだからです。ただし、私立への加算は年収の条件が厳しくなります。住民税の課税標準額を基に判定され、計算式は以下の通り([図表6]参照)。

市町村民税の課税標準額×6%-市町村民税の調整控除の額

これにより算出された金額ごとの支給額は以下の通りです。

・15万4,500円未満⇒最大39万6,000円

・15万4,500円以上・30万4,200円未満⇒11万8,800円

住民税の課税標準額は、同じ年収でも家族構成などにより違ってきます。会社員の場合、もらえるかどうかの目安は[図表7]を参照してください。入学時に申請し、その後は収入状況の届け出をします。

坂本 綾子

日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定CFP

1級ファイナンシャル・プランニング技能士

※イラスト作成:松岡 未来(ヤング荘)(『子どもにかかるお金の超基本』本文より)

※画像はイメージです/PIXTA