給料が増えれば、モチベーションアップにも繋がるし、家計もラクになるし、老後を見据えての資産形成にも弾みがつく……「給料を増やすこと」は会社員にとって最重要課題だといえます。その方法はさまざまですが「出世レースで勝ち抜く」というのが正攻法。しかし「出世しても……」というケースも珍しくないようです。みていきましょう。

転職者率は4.5%、転職希望者率は14.4%

老後を見据えて資産形成を進めることは、いまや日本国民の義務ともいえるくらい、すべての日本人が取り組まなければならないことです。そのための手段はいろいろありますが、会社員であれば真っ先に考えたいのが「給与を増やすこと」。そのために「転職」というのも有効な選択肢のひとつです。

総務省『労働力調査』(2022年平均)によると、15歳以上の就業者は6,713万人。そのうち転職者(現在就業者である者のうち、前職があり、過去1年間に離職を経験した者)は303万人で、転職者率は4.5%でした。過去5年間の転職者率をみていくと、2018年4.9%、2019年5.2%、2020年4.8%、2021年4.3%と、50人規模の会社であれば2~3人が転職者、という水準が続いています。

また転職希望者は968万人で、全就業者の14.4%。働いている人の7人に1人は「転職したいなぁ」と考えているということになります。

年齢別にみていくと、年齢を重ねるごとに転職者率は下落する傾向にあります。一方で、転職希望者率も年齢を重ねるごとに少なくなっていく傾向にあります。キャリアを積むに従い経験者採用が多くなり、転職の難易度は上がっていきます。その現実をきちんと直視した結果が反映されているといえるでしょう。

【年齢別「転職者と転職希望者」】

15~24歳:50万人(9.2%)/96万人(17.7%)

25~34歳:75万人(6.8%)/248万人(22.4%)

35~44歳:56万人(4.3%)/226万人(17.2%)

45~54歳:54万人(3.3%)/228万人(13.9%)

55~64歳:45万人(3.7%)/118万人(9.8%)

65歳以上:21万人(2.3%)/52万人(5.7%)

出所:総務省『労働力調査』(2022年平均)より算出

数値:左より転職者数(転職者率)/転職希望者数(転職希望者率)

また雇用形態別にみていくと、正社員3,588万人のうち転職希望者は527万人で全体の14.7%。非正規社員2,101万人のうち、転職希望者は394万人で全体の18.8%。正社員に比べて低収入の傾向にある非正規社員。「正社員になりたい」という希望者が多いということでしょう。

「出世したら給与が増える」…とは限らない

転職者と転職希望者についてみてきましたが、転職希望者は7人に1人程度、実際に転職を果たすのは50人に2~3人程度。給与をあげる選択肢の一つであるものの、王道といえば勤務先で出世を目指す方法でしょう。

厚生労働省の調査によると、非役職者の会社員(平均年齢41.1歳)の平均給与は月収で28.1万円、年収で451.2万円です。それが係長クラス(平均年齢45.4歳)になると、月収で36.9万円、年収で626万円になります。さらに課長クラス(平均年齢48.8歳)になると、月収で48.6万円、年収で783.7万円。そして部長クラス(平均年齢52.7歳)になると、月収で58.6万円、年収で913.3万円になります。

非役職者の50代前半の給与は月収で30.9万円、年収で500.9万円。同期で部長の給与は、月収で1.8倍、年収で2.0倍。頑張って出世して役付きになって高給取りになる……これぞ、会社員のサクセスストーリーです。

ただ「出世を目指しても……」というケースも。

役職ごとの給与分布をみていくと、係長の月収の中央値は35.2万円、課長で45.7万円、部長で54.1万円。部長クラスの給与分布に注目すると、上位10%で月収は65.67万円。月収100万円超えは5.3%と、部長20人に1人の水準。ここまでくると夢のある話になります。一方で、部長でありながら月収30万円、手取りで23万~24万円程度に満たないケースが4.5%。部長20~25人に1人という水準です。

【部長/課長/係長の給与分布】

20万円未満:0.5%/0.5%/1.4%

20万~30万円未満:4.0%/6.5%/22.8%

30万~40万円未満:12.7%/24.92%/45.4%

40万~50万円未満:23.3%/30.3%/21.4%

50万~60万円未満:21.0%/18.9%/6.2%

60万~70万円未満:16.0%/10.3%/1.8%

70万~80万円未満:9.3%/4.3%/0.6%

80万~90万円未満:4.8%/2.1%/0.2%

90万~100万円未満:3.3%/0.9%/0.2%

100万円以上:5.3%/1.4%/0.1%

出所:厚生労働省令和4年賃金構造基本統計調査』より算出

※数値は左より、部長級/課長級/係長級

肩書に合った給与を手にしているのか、それとも肩書だけで実際の給与は平社員と同じなのか、会社によってさまざま。部長といえば高給取りのイメージですが、「えっ!?」と思わず絶句してしまいそうなくらい薄給のケースも珍しくないのです。

――部長の給料はいくらですか?

そんなこと聞けるわけないので、ちょっと顔色を観察してみましょう。どんよりしていたら、それは「頑張って出世しても低収入のまま」というサインかも。そうなると「いるだけ無駄」と考えるのが賢明な判断。転職に向けて準備を始めてもいいかもしれません。

(写真はイメージです/PIXTA)