できるだけ多くの特急列車に乗ろうとすると、どんな行程が考えられるでしょうか。今回は中京・関西圏で実行したところ、夜行列車を含め、25時間の旅となりました。

東岡崎駅までは夜行バス

日本国内ではJR、私鉄で多くの特急列車が運行されています。1日でなるべく多く乗ろうとすると、どのような行程が考えられるでしょうか。今回は中京・関西圏に限り以下のルールのもと、2023年6月に「特急乗り継ぎ旅」を実行しました(乗車時間が短いこともあり、写真は別の機会に撮影したイメージ)。

・同じ列車にはなるべく乗らない(区間の重複はあり)
・列車を楽しめるよう、できるだけ10分以上は乗車する
・面白い設備があれば、特別車両に乗る

筆者(安藤昌季:乗りものライター)は東京在住なので、早朝に愛知県東岡崎駅に到着すべく、まずは東京駅発の高速バスを利用しました。4列シートですが、乗車時間は6時間と短くそれほど疲れが残りません。名古屋鉄道東岡崎駅東口へ午前5時20分に到着。名古屋駅行きのバスだと名鉄特急に長時間乗れないので、貴重なバスといえます。

●第1ランナー東岡崎駅5時46分発 名古屋鉄道「特急」(乗車32分)

ミューチケットが必要な有料の特別車と、特別料金不要の一般車両の編成です。先が長いので、私は特別車を選択。車両は回転式リクライニングシートが備わった2200系などのため快適です。名鉄名古屋駅には6時18分に到着します。

●第2ランナー近鉄名古屋駅6時30分発 近畿日本鉄道特急「アーバンライナープラス」(乗車51分)

名鉄名古屋駅近鉄名古屋駅は隣接しているので、10分もあれば乗り換えられます。第2ランナーは近鉄「アーバンライナープラス」。51分も乗るので、1+2列のデラックスシートを選択しました。たった210円支払うだけで圧倒的な快適さ。コスパ良好です。

津駅には7時21分に到着。ここで乗り換えに24分あるので、改札内のファミリーマートで軽く朝食を調達しておきます。ただし、飲み物は買いません。

第3ランナー:津駅7時45分発 近畿日本鉄道特急「ひのとり」(乗車1時間24分)

近鉄が誇る名阪特急「ひのとり」です。600円の追加で、私鉄特急でも最高レベルの「プレミアムシート」に乗車できるので迷わず選択。1+2列で座席間隔1300mmの革張り座席のほか、デッキには牽き立てコーヒーを提供するカフェスポットも。津駅で飲み物を買わなかったのはこのためで、自販機とはいえ優雅な時間を楽しめます。大阪難波駅着は9時9分です。

●第4ランナー:大阪難波9時35分発 近畿日本鉄道特急「あをによし第1便」(乗車43分)

大阪難波駅では駅弁も販売されており、私は朝食として購入しました。次は近鉄の観光特急「あをによし」です。1日1往復の大阪難波発は人気があるので、予約が大変でした。「サロンシート」に乗りたいところですが、乗車は3名以上なので、今回は断念しました。

なお「ツインシート」に1人で乗る場合でも「大人1人、子ども1人分の特急券・特別車両券」が必要となります。とはいえ運賃+1100円なので、割高感はありません。車内には充実した売店があるので、ここでも飲料とスイーツを購入します。大和西大寺駅着は10時18分でした。

●第5ランナー:大和西大寺10時32分発 近畿日本鉄道しまかぜ」(乗車1時間29分)

京都行きの「あをによし第1便」は、京都発の観光特急「しまかぜ」へ乗り継ぐことができます(特急券は別々)。近鉄が誇る「しまかぜ」は、全座席が特別車両という超豪華仕様で、1+2列の革張りリクライニングシート車と、和風・洋風の個室、グループ用の半個室を備えます。

特筆すべきは、暖かい食事を提供する「カフェ車両」があること。このために「しまかぜ」に乗りたくなります。車内で少し早い昼食をとり、伊勢市駅には12時1分に到着しました。

●第6ランナー伊勢市駅12時16分発 近畿日本鉄道ビスタカー」(乗車1時間22分)

国内2階建て車両の元祖「ビスタカー」に乗車します。個人的には3人以上で利用できる階下の半個室がオススメですが、1人なので素直に2階席へ。リニューアルで窓も拡大され、素晴らしい眺望です。近鉄名古屋13時38分着。7時間ぶりに戻ってきました。

第7ランナー:名古屋13時49分発 東海道新幹線「のぞみ31号」(乗車34分)

近鉄名古屋駅から新幹線ホームまではそれほど遠くありませんが、乗換が11分しかないので、気持ち早歩きに。自由席に移動して座るともう京都、というスピード感です。京都14時23分着。ここからは急ぎ足です。

●第8ランナー:京都14時32分発 京都市営地下鉄烏丸線「普通」(乗車4分)

新幹線ホームから9分で京都市営地下鉄に乗り換えるのは、慣れていないとオススメできません。私はギリギリでした。お金に余裕があるなら、駅前からタクシーで、阪急烏丸駅へ移動した方がよいと思います。四条駅着は14時36分です。

●第9ランナー:烏丸14時43分発 阪急電鉄快速特急「京とれいん雅洛」(乗車45分)

地下鉄四条駅と阪急烏丸駅は乗換駅です。7分乗換なので、ここも急ぎ目。京都駅ほど広くないので、迷わないのはよいのですが。

阪急電鉄「京とれいん 雅洛」は、追加料金不要列車としては日本一の豪華特急でしょう。車内は和風のデザインで、窓向き座席や畳の敷かれた「枯山水の庭」まであります。朝から素晴らしい列車に乗り続けていますが、決して見劣りしません。大坂梅田駅には15時28分着です。

●第10ランナー:梅田15時39分発 大阪メトロ御堂筋線「普通」(乗車16分)

阪急と大阪メトロの駅は近接しています。乗車時間は16分なので立っていても問題はありませんが、そろそろ疲れは出てきます。天王寺15時55分着。

●第11ランナー:大阪阿部野橋16時10分発 近畿日本鉄道特急「1609列車」(乗車30分)

天王寺と大阪阿部野橋は乗換駅です。ここからは標準型の近鉄特急に乗車。高田市16時40分着、急いで上りホームへと移動します

●第12ランナー:高田市16時49分発 近畿日本鉄道特急「青の交響曲第4便」(乗車33分)

ここからは、近鉄が誇る観光特急「青の交響曲」に乗車します。食堂車のような「ラウンジ車」を連結していますが、営業は終着駅到着の10~15分前までなので、座席車ではなくラウンジ車を目指します。「奈良 大和肉鶏カレー」や「柿の葉寿司」を楽しめますが、利用時は混雑していました。大阪阿部野橋駅には17時22分に戻ってきました。

●第13ランナー天王寺17時33分発 大阪メトロ御堂筋線「普通」(乗車12分)

大阪メトロ淀屋橋駅を目指します。淀屋橋17時45分着。

第14ランナー:淀屋橋18時発 京阪電気鉄道「プレミアムシート」(乗車40分)

淀屋橋駅を18時ちょうどに出る特急は「プレミアムシート」を連結しています。乗り換え時間が15分なので、ネットでの事前予約がオススメです。

座席は有料特急に劣らぬ1+2列の快適な配置で、インテリアもお洒落。追加料金は500円と割安です。丹波橋駅には18時40分に到着しました。

●第15ランナー:近鉄丹波橋18時50分発 近畿日本鉄道特急「伊勢志摩ライナー」(乗車7分)

ここはルールから逸脱し乗車時間は7分ですが、「伊勢志摩ライナー」は設備が多いのでサッと乗り比べてみました。レギュラーシートでも、回転式リクライニングシートが採用され快適です。

京都駅着は18時57分。改札を出てすぐの「PRECIOUS DELI&GIFT」で弁当を買っておきます。行程上ここで調達しないと、夕飯を食べ逃してしまいます。

●第16ランナー:京都19時10分発 近畿日本鉄道特急「伊勢志摩ライナー」(乗車30分)

乗ってきた「伊勢志摩ライナー」で再び大和西大寺駅を目指します。1人なので「デラックスシート」を選びましたが、2人なら半個室「ツインシート」、3~4人なら「サロンシート」がオススメです。大和西大寺19時40分着。

●第17ランナー:大和西大寺19時51分発 近畿日本鉄道特急「4906列車」(乗車29分)

今朝降り立った大和西大寺駅が、遠い過去のように感じられます。「用もないのに列車に乗る」のが、文豪・内田百閒の『阿房列車』ですが、まさにそれを実感します。近鉄特急で京都20時20分着。疲労がたまってきましたが、急いで乗り換えねばなりません。

●第18ランナー:京都20時30分発 JR西日本特急「はるか59号」(乗車1時間25分)

息を切らして、関西空港行きの空港特急「はるか」に乗車します。距離は100km以内、ここはグリーン車を利用しました。1+2列の快適なリクライニングシートが眠気を誘います。目覚ましをセットし仮眠。関西空港駅には21時55分に到着しました。

第19ランナー:関西空港22時5分発 南海電気鉄道「ラピートα10号」(乗車9分)

「はるか」のライバル、南海電気鉄道の「ラピート」に乗車します。「鉄人28号」と呼ばれることもある、個性的な顔立ちです。わずか210円で1+2列の「スーパーシート」に乗れるので、迷わず利用しました。

わずか2駅なので乗車時間は9分。22時14分、泉佐野駅に到着です。

●第20ランナー:泉佐野22時29分発 南海電気鉄道特急「サザン66号」(乗車29分)

ここからは、南海の最新車両「サザンプレミアム」に乗車します。空気清浄器も設けられている快適な特急です。なんば22時58分着。なお、泉佐野駅で下車した「ラピートα10号」にそのまま乗り続ければ、なんばには22時41分に着けるうえ余裕をもって乗り換えられるので、「限界に挑戦する」といったこだわりがなければ、「サザン66号」には乗らない方がよいでしょう。

●第21ランナーなんば23時05分発 大阪メトロ御堂筋線「普通」(乗車8分)

南海電鉄のホームから大阪メトロなんば駅は遠くありませんが、7分乗り換えはきついものでした。先述の「ラピートα10号」に乗り続けなかったことを後悔します。梅田23時13分着。

疲れた体に鞭打ち急ぎます。17・18番出口のエスカレーターを上がり南改札を出ると、斜め左側に大阪梅田駅東口に向かう階段とエスカレーターがあります。下りエスカレーターを降りると、阪神電鉄の駅です。

●第22ランナー:大阪梅田23時20分発 阪神電気鉄道「特急」(乗車31分)

まだ最終ランナーではありません。乗車当日はロングシートの9000系による特急でした。有料でよいので、転換式クロスシートの9300系に乗りたかった……。神戸三宮23時51分着、いよいよ最終ランナーへと乗り継ぎます。

●第23ランナー三ノ宮0時11分発 JR西日本・東海 寝台特急サンライズ瀬戸・出雲」(乗車6時間57分)

最後は寝台特急サンライズ瀬戸・出雲」です。もう寝落ちを恐れる必要はありません。A個室寝台以外では、共用シャワーカードは売り切れてほぼ買えないため、あとは寝るだけです。B個室寝台「ソロ」でもぐっすり眠れました。東京駅着は翌朝7時8分着。

ちなみに運賃・料金は、夜行バスを含め計5万3210円でした。なお指定席特急券の値段は販売時期により変動します。

名鉄2200系(安藤昌季撮影)。