スラッとした長身に涼しげにはにかむ笑顔、“塩顔イケメン”の代表格とも言える坂口健太郎。雑誌、広告などのモデル活動もさることながら、俳優としての姿を見ない日も少ないというほど、売れっ子役者として成長し続けているのは周知のこと。それもそのはず、坂口は4月期に放送されたドラマ「Dr.チョコレート」ではヒロインを支える理解者で義手の医師を演じ、放送中の7月クールドラマ「CODEー願いの代償ー」(ともに日本テレビ系Huluでも配信)では、婚約者の死の真相を知るべく、どんな願いもかなえるというアプリに手を出す刑事を演じており、同じ局で2期連続主演という異例の起用に応えているのだ。そんな坂口の魅力をドラマ、映画作品を軸にひもとく。

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■塩顔ブームの中、瞬く間に人気俳優の仲間入り

若手俳優の登竜門ともいうべき、ファッション誌「MEN’S NON-NO」(集英社)のオーディションでグランプリを獲得し、モデル活動をしていた坂口。10代、20代の若い女性を中心に人気が高まっていた最中、2015年には漫画原作の医療系ドラマ「コウノドリ」(TBS系ディズニープラスほかで配信中)で連続ドラマ初出演を果たす。

向井理森山未來綾野剛2010年代に到来した“塩顔男子”ブーム。坂口もメンノンモデル屈指の“塩顔イケメン”としては早くから注目されていたが、お茶の間への浸透度でいえばまだ低かった。そんな中で「コウノドリ」での青い医療服をまとい新米研修医として奮闘する白川を演じた坂口を見て、多くの人が、この塩顔イケメンを認知したことだろう。

白川は同期の下屋(松岡茉優)に対してツンとした態度や発言も多いが、時には同期としてお互いの相談相手になって支える一面もあったりと、不器用ながらもかわいげのある魅力的な役だった。しかし、もう何十年もトップ俳優として君臨しているような存在感だが、実は俳優としてのキャリアはまだ約8年なのも驚きだ。

そんな彼の初期作品の一つに、ドラマ「いつかこの恋を思い出して、きっと泣いてしまう」(2016年、フジテレビ系)がある。同作は若者たちが東京の街でひたむきに生きる青春群像劇で、坂口が演じたのは自由奔放で、友達の練(高良健吾)の家に居候する青年・晴太。決して暗いキャラクターではないものの、彼はどこかいつも目の奥が笑っておらず、感情がこもっていない影のあるキャラクターだった。

脚本家・坂元裕二が編んだ言葉を、坂口演じる晴太が発すると、どこか胸が締め付けられ、時にはストレートに現実を突きつけてくる。そういえば、晴太はこのドラマの中で“名言製造機”と言われていた。また、ひょうひょうとしていてニコっと笑いながら毒づく坂口の演技も評価された。

2018年には初主演ドラマ「シグナル 長期未解決事件捜査班」(フジテレビ系)で主人公のプロファイラー・三枝を演じた。同作は韓国で人気を誇るドラマ「シグナル」をリメイクした作品で、現在と過去をつなぐことのできる謎の無線機を通じて、未解決事件に挑むクライムサスペンス。また、ドラマの主題歌を歌った韓国発の世界的ボーイズグループ・BTS(防弾少年団)との交流関係もこの頃から始まっており、韓国での坂口の認知度も高い。

■クズ男にもどこか爽やかさが残る、坂口の魅力

一方で、坂口といえば好青年役だけでなく、映画作品では“クズっぷり”も見事に体現していることに注目したい。

是枝裕和監督作品「海街diary」(2015年)では、すず(広瀬すず)ら“四姉妹”の次女・佳乃(長澤まさみ)の恋人・藤井を演じ、劇中序盤のシーンでは訳アリな装いで佳乃からお金を借りる“ヒモ男”の姿を見せる。“ヒモ男”なのにもかかわらずどこか爽やかさが残っており、男性運の悪い女性がハマってしまう年下男子に扮(ふん)している。

映画「ナラタージュ」(2017年)では、泉(有村架純)と同じ大学生で後に恋人関係となる小野役。泉への思いの強さと不信感、嫉妬心から肉体関係を強要するDV気質な恋人へと変貌する様を見事に演じた。

また、「第46回日本アカデミー賞」優秀助演男優賞を受賞したのも記憶に新しい映画「ヘルドッグス」(2022年)では、チャラチャラした色気のある表情の裏で残虐な殺しを厭わない暴力団員の室岡を演じ、容赦なき手法で仕留めるサイコパスな役柄に成りきった。

いわゆる“クズ役”に扮した作品を列挙したが、2022年には小松菜奈とダブル主演の映画「余命10年」で、難病を抱え余命宣告を受けている同級生・茉莉(小松)と同窓会で再会し、人生に絶望し生きる気力を失っていた中で出会った茉莉のおかげで意欲を取り戻す和人を演じた。劇中では茉莉の抱えた病気を知り、大切な人の受け入れ難い現実に向き合う、難しい役どころを丁寧に務め上げた。

こうやって坂口の軌跡を振り返ってみると、役の幅広さが目立つのも彼の魅力の一つに違いない。それは塩顔ブームの最中にデビューし、一過性の流行りではなく、しっかりと存在感を築いてきた彼の努力の証であろう。現在32歳の坂口が年齢とキャリアを重ねていくたびに、新たな顔を見せてくれることが今後も楽しみだ。

◆文=suzuki

坂口健太郎/※2022年ザテレビジョン撮影