横浜開港祭の開催に合わせて一般公開された護衛艦「あぶくま」に、海上自衛隊大好き漫画家が突撃取材してきました。昭和生まれのベテラン艦だからこその装備を見ることができ大満足だったようです。

隊司令も乗艦 だから椅子カバーも2つ

2023年6月2日の横浜開港祭において開催された護衛艦「あぶくま」の一般公開レポート。第1回では上甲板、第2回では操縦室兼応急指揮所・工作室の様子をお伝えしました。今回は艦橋からスタートします。

艦橋は、船内区画でも屈指の人気エリアのため、一般公開でも見学ルートに設定されていることが多く、何かしらの船で見たことある人も多いでしょう。ここも操縦室と同じく速力などの計器類が数多く並んでいるほか、船の代表的な装具のひとつである舵輪が設置されているのも、テンションが上がるポイントでしょう。

少し専門的なハナシをすると、艦橋は乗員のなかでも航海科員が属する「二分隊」というチームの持ち場になる場所で、出港ラッパの演奏もここで行うため、そのためのラッパもさりげなく艦橋に置かれていました。

新しい艦の計器類はボタンが多いのですが、「あぶくま」は艦齢35年とあって、操縦装置はひと昔前のレトロなレバー式。新型艦にはない、この見慣れた古さが好きな人、案外多いのではないでしょうか。筆者(たいらさおり:漫画家/デザイナー)的にはこれを握ることで「操縦してるぞ!」と実感できるところがイイんです。

艦橋を見学していると、両端の椅子がなにやらカラフルなことに気づきます。通常、派手な色の椅子カバーがかけられているのは、右側の艦長席だけですが、この日は「あぶくま」が所属する第12護衛隊の隊司令も同乗していたため、左側の席はその司令席となっていました。なお、カラフルなカバーにも意味があり、階級によって色が変わるんです。

「あぶくま」艦長は2等海佐なので、赤と青のツートンカラー。一方、隊司令は1等海佐が務めるので、差別化の意味も含め赤色のカバーとなっていました。

ちなみに、さらに偉い海将補以上では『マツケンサンバ』的な黄色いカバーがかけられるので、一般公開や体験航海の際にはぜひチェックしてみてください。タイミングが良ければ座席に座って記念写真を撮らせてもらえる可能性も。実際に座るとかなり位置が高いので、窓の小ささが気にならないほど外がよく見えました。

艦長直々の案内で艦長室も見学

ところで、雨の日は艦橋横のウイングと呼ばれる張り出した場所の出入り口にモップが広げられていることがあります。これは雨で濡れた床を拭くだけでなく、靴底をぬぐう玄関マットの役割も果たしているのです。ツルツルの床で滑ったら大惨事ですもんね。こんなところにもさりげない配慮がされているのです。でも普通の足拭きマットじゃダメだったんですかね。後々になって気になりました。

こうして艦橋を堪能したあとは、艦長室も見せてもらいました。艦長室は写真NGなので文字でお伝えします。

「あぶくま」艦長の大木2佐が「あぶくまは小さな艦なので艦長室も狭めなんですよ」と話すとおり、内装はかなりコンパクト。応接室を兼ねたメインの居室と、トイレや風呂の水回りのエリアに分かれています。

しかし、よく見るとベッドがないんです。まさか奥にあるソファで寝るのか……、艦長なのに……、と戸惑っていると、艦長が「ベッドはここにあるんですよ」とソファの奥に手をかけます。すると、壁に収納されたベッドが引き出される仕様になっていました。

どこまでも省スペースが徹底されたギミックに思わず興奮です。大きな艦艇では艦長室のベッドは収納されていないそうなので、壁収納式はかなりレアです。

と、ここまで見学して思ったのですが、「あぶくま」は艦齢のわりに古さを感じさせません。ペンキは綺麗に塗られ、他の艦と同じような見た目。違うとしたらマストの形状など、時代とともに変わる設備くらいでしょうか。

就役してから35年。これまで適切に整備を受けてきたことが、今でも活きている証なのですね。海上自衛隊の愛艦精神を垣間見た感じがして、海上自衛官を夫に持つ私まで胸を張りたくなりました。

2023年6月上旬に開催された横浜開港祭で一般公開された護衛艦「あぶくま」。矢印で指したところが艦橋(乗りものニュース編集部撮影)。