ネバダ州ラスベガスの北、約160キロに位置する「アッシュスプリングス」は、誰でも気軽に楽しめる天然温泉として人気である。そんな砂漠のなかのオアシスで水遊びを楽しんだ2歳児が今月19日、「感染したらほぼ助からない」と言われる“脳を食うアメーバ”による感染症で死亡した。米ニュースメディア『Fox 5 Vegas』などが伝えた。

ネバダリンカーン郡に住むウッドロー・バンディ君(Woodrow Bundy、2)が19日、アメーバの一種「ネグレリア・フォーレリ(フォーラーネグレリアとも)」による感染症で死亡した。

ウッドロー君は亡くなる1週間前、同郡の天然温泉「アッシュスプリングス」で遊び、その後に頭痛や発熱などのインフルエンザにかかったような症状が出始めたという。温泉と言っても日本のように熱くはなく、生ぬるい天然のプールで子供が遊ぶには最適の場所だった。

7人の子を持つメルさん(Mel)とブリアナさん(Briana)夫妻は当初、自宅で看病をしていたが、ウッドロー君の容体は急激に悪化した。ブリアナさんは髄膜に細菌やウイルスが感染して炎症が起こる「髄膜炎」を疑い、病院に車を走らせた。真夜中のことだった。

そして検査の結果、ウッドロー君は推測通り、髄膜炎と診断されて治療が始まり、メルさんも病院に駆けつけた。しかし容体は一向に良くならず、両親はその後、ウッドロー君が致死率約98%と言われるネグレリア・フォーレリによる感染症「原発性アメーバ性髄膜脳炎(PAM)」に感染していることを告げられた。

ネグレリア・フォーレリは川、湖、池、天然温泉などの比較的温かい淡水でよく見られ、鼻から侵入すると脳に寄生する。そうして脳の組織を食べながら増殖し、患者の脳は腫れ、機能を失い死亡する。

初期症状は風邪とよく似ているが、悪化すると首の痛み、痙攣、意識障害や幻覚などの神経症状を起こして昏睡状態に陥ってしまう。そして1~18日後に死に至るそうで、ウッドロー君はアッシュスプリングスで水遊びをした7日後の午前2時56分に息を引き取った。多くの人が「何とか助かりますように」と祈りを捧げていたが、最期は脳の活動が一切見られず、手の施しようがない状態だった。

なおPAMは、人から人への感染はないものの、汚染された水道水で鼻を洗浄したり、塩素処理がしっかり行われていないプールなどでも感染が報告されており、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は「鼻クリップやマスクを使用すること」「特に夏には温かい淡水に飛び込まないこと」「川、池、湖などでは水底をかき混ぜたりしないこと」「(天然)温泉でも水中に頭を入れないこと」などを推奨している。

ちなみにCDCによると、アメリカでは1962年から2022年の60年間で157件のPAMの感染が報告されており、生存者は4人だけという。感染者は77.1%が男性で、年齢中央値は11歳、感染者が最も多いのは7、8月だそうで、これからの時期は特に注意が必要なようだ。

画像は『GoFundMe 2023年7月19日付「Please help Mel and Brianna through this tragedy」』『Angie Huntington Bundy 2023年7月19日付Facebook「Prayer request for my nephew Woodrow please」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)

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