放送中の“月9ドラマ”「真夏のシンデレラ」(毎週月曜夜9:00-9:54、フジテレビ系)で、間宮祥太朗とW主演を務めている森七菜。同作は8人の男女が真夏の海で織りなす“王道”恋愛群像劇で、森はSUP(Stand Up Paddleboard)のインストラクター・蒼井夏海を演じている。明るく責任感が強く、困っている人を見ると放っておけない。これまで演じてきた役とは違うキャラクターを演じ、俳優としてまた一つ新しい一面を見せてくれている。そんな森のこれまでの活動を振り返り、その魅力について改めて考えてみたいと思う。

【写真】森七菜、涼しげな浴衣姿の全身ショット

■「東京ヴァンパイアホテル」で役者デビュー

2001年8月31日大阪府で生まれた森は、9歳の時に大分に引っ越した。ドラマや映画を見るのが好きで、役者という仕事に興味を持つようになっていたところ、2016年、中学3年生の時に大分でスカウトされ、芸能界入り。その後、いきなりヒットメーカー・行定勲監督が手掛けたネスカフェのWEB CMに出演している。

2017年の春に高校生となった森は、同年6月から配信されたドラマ「東京ヴァンパイアホテル」(AmazonPrimeVideo)で本格的に俳優としての活動をスタートさせた。7月公開の映画「心が叫びたがってるんだ。」で映画初出演を果たし、10月から放送された連続ドラマ「先に生まれただけの僕」(日本テレビ系)にも出演。オーディションでこれらの役を勝ち取った森は、大分の高校に通いながら、撮影時には東京に来るという生活を送っていた。

2018年5月に放送された神木隆之介主演の連続ドラマ「やけに弁の立つ弁護士が学校で吠える」でクラスメイトからいじめを受ける生徒・山下未希を好演し、8月から9月にかけて放送された「連続ドラマW イアリー 見えない顔」(WOWOWプライム)でもクラスでいじめを受けている中学生・中尾みすずを演じた。

■「3年A組」「天気の子」…2019年にブレイク

2019年1月から放送されたドラマ「3年A組 -皆さんは、人質です-」(日本テレビ系)をきっかけに森への注目度が一気に上がった。菅田将暉主演で、生徒役には永野芽郁、片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)、川栄李奈上白石萌歌今田美桜福原遥神尾楓珠、鈴木仁、堀田真由大原優乃など、今や主役級で活躍している俳優陣がズラリ。センセーショナルなストーリーが大きな話題となった。その中に森もいた。

演じた堀部瑠奈は、電脳部所属でアニメや特撮が好きな女の子。おとなしい性格で最初の頃はあまり目立たない存在だったが、後半、防犯カメラの映像を分析したり、フェイク動画を見破ったり、電脳部としての才能を発揮して大活躍した。

そんなふうにして注目度が上がったところで、同年7月に公開された新海誠監督の劇場アニメ天気の子」のヒロイン・天野陽菜の声に抜てきされ、さらに知名度を上げることとなった。祈るだけで晴れにできる力を持つ不思議な少女の声を演じ、「第十四回声優アワード」で新人女優賞を受賞。森自身にとっても大きな自信につながったはず。

「3年A組」で始まった2019年は、アニメ「天気の子」の他にも窪田正孝主演の「東京喰種 トーキョーグール【S】」、染谷将太主演の「最初の晩餐」、玉城ティナ主演の「地獄少女」と、話題となった映画にも多く出演し、そのナチュラルな演技と親近感を覚える雰囲気で幅広い層から支持されるようになっていた。

2019年11月には「第98回全国高等学校サッカー選手権大会」の15代目応援マネージャーに就任。堀北真希新垣結衣広瀬アリス川口春奈広瀬すず永野芽郁清原果耶らが務めてきた応援マネージャーは“若手女優の登竜門”とも呼ばれていて、それに選ばれたことが森の注目度・期待値の高さを証明している。

■名匠・岩井俊二監督作品で歌手デビューも

2020年はさらなる飛躍の年となった。1月に公開された松たか子主演の映画「ラストレター」に出演したが、主題歌も担当することとなり、小林武史作曲、「ラストレター」の監督を務めた岩井俊二が作詞を手掛けた「カエルノウタ」で歌手デビューを果たした。カップリング曲が小泉今日子の「あなたに会えてよかった」と荒井由美の「返事はいらない」のカバーというのも話題となった。

歌手活動に関しては7月にホフディランのプロデュースでホフディランの「スマイル」をカバーしてリリースもしている。MVはタイトル通り、森のスマイルが溢れる内容になっていて、森が出演した大塚製薬オロナミンC」のCMソングにも起用された。

活動のフィールドを広げつつ、3月から放送された連続テレビ小説「エール」(NHK総合ほか)にヒロインの妹役で出演、19歳の誕生日である8月31日には1st写真集「Peace」を発売するなど勢いも加速。10月から放送された「この恋あたためますか」(TBS系)で連続ドラマ初主演。演じた井上樹木は元アイドルで、グループをクビになってからはコンビニでアルバイトをしながら、コンビニスイーツの批評をSNSで行うのが唯一の楽しみという女の子。

その的確な批評に目をつけたコンビニの社長・浅羽拓実(中村倫也)がスイーツ開発スタッフに引き入れた。最初は浅羽を“おっさん”呼ばわりしていたが、スイーツ開発でフォローしてくれたりして、浅羽のことを好きになっていく樹木。浅羽の元カノの存在や、樹木のことを好きだという男性が現れ、揺れ動く恋心が描かれ、共感度の高い作品となった。このドラマで森は「第106回ザテレビジョンドラマアカデミー賞」主演女優賞を受賞している。

受賞後のインタビューで、森は「撮影初日は樹木という人物の“無限さ”におじけついてしまい、演技が思うようにできず、落胆してすごく泣いたんです。でも、監督が『樹木はあなたのものなんだから堂々としていなさい』と言ってくださって、気持ちを取り直しました」と“連ドラ主演デビュー作”の撮影を振り返っていた。

■“森七菜役”や“まかないさん”を好演…そして月9主演へ

「この恋あたためますか」がスタートする直前の10月16日、ドラマ「あのコの夢を見たんです。」(テレビ東京系ディズニープラスほかで配信中)の第3話に出演。このドラマは南海キャンディーズ山里亮太の小説を映像化したもので、実名の女優やアイドルたちを山里が妄想して創作した内容となっている。

森のエピソードは原作にはなく、ドラマ用に新たに書き下ろされたもの。ここに登場する“森七菜”は元気いっぱいな高校生。告白するたびに“友達としか見られない”とフラれ続ける森は、幼なじみの山里を巻き込んで“悲劇のヒロインプロジェクト”を始動する、というストーリー。山里を演じた仲野太賀は、「この恋あたためますか」にも出演しており、そちらでも森演じる樹木を好きになる役というのも興味深い。

いろんな作品を経て、表現力の幅もどんどん広げていった森。ここ最近の成長・進化の度合いも大きく感じる。2023年1月に配信された「舞妓さんちのまかないさん」(Netflix)で出口夏希とW主演を務め、野月キヨを演じた。舞妓さんになるために同級生のすみれ(出口)と一緒に青森から京都にやってきたキヨだったが、舞や所作などを早く覚えるすみれとは対照的に、キヨは不器用でうまくできず、早々に「青森に帰りなさい」と言われてしまう。

しかし、料理がうまいキヨはまかないさんがお休みの時に代わりに料理をしたことがきっかけで、まかないさんとして残ることを許された。不器用だけど、途中で投げ出さず最後までやり切る。そんな一生懸命さ、けなげさを感じさせるキヨをうまく表現し、高い評価を得た。5月に公開された映画「銀河鉄道の父」、6月公開の「君は放課後インソムニア」でも印象的な演技を見せ、現在は7月10日から始まった「真夏のシンデレラ」に出演中。

キャリアを重ねても、素朴さ、初々しさ、そして親近感のある雰囲気は変わらない森。演技=表現において“自然体”で見せることが難しいと言われるが、それをまさしく自然にできるのが彼女だ。「真夏のシンデレラ」を含め、今後の作品でもどんな演技を見せてくれるのか楽しみだ。

◆文=田中隆信

森七菜/※2023年ザテレビジョン撮影