標高3000m級の山と氷河、湖、滝、渓谷、鍾乳洞が点在するカナディアン・ロッキー。「カナディアン・ロッキー山脈自然公園群」として自然遺産に登録されている雄大な自然を満喫しながら、ゆったり過ごせる湖畔のホテルがあります。

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取材・文=杉江真理子 取材協力=春燈社 写真提供=カナダ観光局(表記以外)

壮大な自然の大パノラマ

「カナディアン・ロッキー」と省略されることの多い、カナダの自然遺産「カナディアン・ロッキー山脈自然公園群」。連なる山々は4500kmにも及び、このうちカナダ国内に延びる2200kmの連峰がカナディアン・ロッキーと呼ばれています。

 海の底にあった北米大陸西部を南北に貫くロッキー山脈が、造山活動によって地上に姿を現したのは、約6000万年前。230万6884haという広大な地域の95%以上が、今も完全に自然な状態で維持されていて、氷河や湖、滝、渓谷、鍾乳洞が点在し、変化に満ちた雄大な山岳景観を誇っています。すばらしい自然景観とともに、地形形成、生物進化の過程を示しているため、ここから地球の進化に関する重要な情報を得ることができます。

 約100万年前の氷期にこの一帯は氷河に覆われ、氷河は山々を激しく削りました。現在でも、1万年前に終わった氷河期からの氷河が数多く残っています。そして氷河から溶け出した水が、ロッキーの宝石とも呼ばれるターコイズブルーの湖や川、滝となり、美しい景観をつくり出しました。

 この地域は化石の宝庫としても有名です。ブリティッシュコロンビア州のヨーホー国立公園内に位置する標高2599mのバージェス山も5億年前は海の底でした。ここから本のページのように剥がれていくバージェス頁岩というカンブリア紀中期の無脊椎動物の化石を含む地層が見つかり、1980年に「バージェス頁岩地帯」として世界遺産として登録されます。

 海底で生きていた三葉虫など、多くの生物の化石が発見され、なかでもとげで体を覆っていたハルキゲニアホースのような口で獲物を捕らえていたオパビニア、海老とクラゲを合わせたような体長約60cmのアノマロカリスなど、バージェス動物群と呼ばれるカンブリア紀に生息したユニークな動物群が見つかっています。

 1984年にはバージェスを含むヨーホーと、バンフ、ジャスパー、クートニーという隣接する4つの国立公園が、「カナディアン・ロッキー山脈自然公園群」として新たに世界遺産に登録され、「バージェス頁岩地帯」はここに吸収されました。さらに1990年に範囲が拡大され、ハンバー、アシニボイン山、ロブソン山という3つの州立公園が追加登録されています。

バンフ、ジャスパー、クートニーそれぞれの景観

 カナディアン・ロッキーの表玄関といえるのがアルバータ州のバンフ国立公園です。年間400万人もの観光客が訪れる人気の公園の歴史は、大陸横断鉄道の建設計画に始まります。

 1881年、誕生して間もないカナダ連邦政府は、国家建設の要ともいえる大陸横断鉄道の建設に着手しますが、最大の難所だったのがそそり立つ岩山に鉄道の線路を敷かなければならないという、カナディアン・ロッキー越えでした。すると偶然にもルート探索中の1883年、バンフにあるサルファー山の洞窟内で温泉が発見されます。サルファーとは英語で硫黄のことです。このことによってバンフは1887年にカナダ国内で初めての国立公園となり、今では温泉と鉄道によって世界有数のリゾートとなったのでした。

 バンフ国立公園のいちばんの見どころは、多くの氷河湖が点在するなかでも、随一の美しさを誇っている「レイクルイーズ」です。先住民たちに「小さな魚たちの湖」と呼ばれていた湖は、1882年、先住民ではない人に発見され、「エメラルド湖 」と呼ばれました。その2年後にはヴィクトリア女王の娘であり、カナダ総督ローン侯爵の妻でもあるルイーズ王女にちなんで改名されたというエピソードがあります。

 1907年国立公園に指定され、1万878㎢という東京都の約5倍の面積なのが、アルバータ州のジャスパー国立公園です。ここでの絶景はなんといっても、コロンビア山の周辺一帯に広がる「コロンビア大氷原」でしょう。

 総面積325㎢、厚さ300m以上にも達するロッキー山脈最大の氷原で、ここから流れ出す川は、北は北極海、西は太平洋、東は大西洋へと注いでいます。氷原は氷河の起点となり、氷河湖も形成しています。野生の動植物にとっての楽園となっていて、エルクムースという大型の鹿や、シロイワヤギビッグホーン・ シープ、グリズリーハイイログマ、オオカミなどが生息しています。

 1920年に国立公園となったのが、ブリティッシュコロンビア州のクートニー国立公園です。現在でも鉄道が通じていないので、交通手段は車だけ。氷河の融解水が造り出す滝や渓谷が点在し、水の力による荒々しい造形もあります。

 長さ約600mの「マーブルキャニオン」では、水流の力で研磨されて大理石のようになった谷が続き、80m下の谷底を激流が流れるという、壮大な景色が望めます。「ペイント・ポット」と呼ばれる氷河湖の粘土が鉄分を多く含んだ鉱水によって赤く染まり、泉となっている珍しい光景にも出合うことができます。

 また、公園ゲートそばには40℃以上の湯が湧き上がるラジウム温泉があり、カナダ最大の温泉プールになっているので、旅の疲れを癒すのもいいでしょう。

 4つの国立公園以外にブリティッシュコロンビア州のマウント・アシニボインマウントロブソン、ハンバーという3つの州立公園も世界遺産に追加登録されています。

 とくに注目したいのがマウント・アシニボイン州立公園にある標高3618mのアシニボイン山。天を突き刺すような鋭角的な頂から「カナディアン・ロッキーのマッターホルン」と呼ばれています。また、マウントロブソン州立公園には1913年まで登頂に成功した者がいなかったという、カナディアン・ロッキーの最高峰「カナディアン・ロッキーの巨人」と呼ばれる標高3954mのロブソン山があります。神秘的な山々を眺めるだけでも貴重な体験となるでしょう。

ヨーロッパ調の高級リゾートホテル

 カナディアン・ロッキーでおすすめのホテルが、バンフ国立公園内にある「フェアモントシャトー レイクルイーズ」。1890年、登山家や自然愛好者のために平屋の丸太小屋が建てられたのが発祥のホテルです。

 ホテルからはそびえ立つ山々と雄大なビクトリア氷河、ターコイズブルーに輝く美しいルイーズ湖という、素晴らしい景色を眺めることができます。

 設備の整った客室はじめ館内は、エレガントで洗練された空間です。スパとプールがあり、スパでは専門的な知識と優れた技術をもつスパセラピストチームが、フットマッサージやボディスクラブ、フェイシャルまで、心と体を癒してくれます。屋内・屋外フィットネス & ウェルネスのコースも多数あり、宿泊客は無料で利用できます。

 大英帝国植民地のホテルらしく、レストランでは美しい景色を見ながら「アフタヌーンティー」が楽しめます。また、地元の農家から仕入れた新鮮な食材を使っています。ブランド牛のアルバータ牛もぜひ味わってみてください。アルバータ州はライ麦を主原料とする「ライウイスキー」の名産地なので、食後はウイスキーや、有名なカナダデザートワイン「アイスワイン」を楽しむもよいでしょう。

 ホテルのアクティビティも充実しています。ルイーズ湖をカヌーで進み、壮大な山の景色が満喫できるコースはぜひ体験していただきたいアクティビティです。また、周辺を探索するガイド付きのマウンテンアドベンチャープログラムでは、認定ナチュラリストが壮観な地形を案内してくれます。アグネス湖やサンピラン山などへのガイド付きハイキングもあります。体力に自信がある方は、アグネス湖からビッグ・ビーハイブを目指すトレッキングに挑戦してください。標高2269mからロッキー山脈やレイクルイーズを眺めるために、世界中から観光客が訪れています。

 馬に乗って西部開拓時代の雰囲気を体験するコースもあります。山道をたどったり、急流の川を渡ったりと、風光明媚なトレイルを馬に乗って探索できます。

 このほかホテルでは早朝、澄みきった空気の湖畔をジョギングするコースや、屋外で夕日を眺めながら行うサンセットヨガなど、ここでしか味わえないアクティビティを開催しています。

「フェアモントシャトー レイクルイーズ」へは、カルガリー空港から、車で2時間30分という距離です。空港からは主なホテルへのシャトルバスも運行されていて、手軽に行くことができます。

 ジャスパーまで行かれるなら、レイクルイーズジャスパーを結ぶ「アイスフィールハイウェイ」は、カナディアロッキーに沿って走っていて、大自然を満喫できることで有名です。

 カナダが誇る世界遺産ナディアン・ロッキーは、決して期待を裏切らない絶景の地です。ベストシーズンは5~9月頃ですが、スキーが好きな方はぜひ冬の雪景色も楽しんでみてください。

 

※旅行に行かれる際は外務省海外安全ホームページなどで現地の安全情報を確認してからお出かけください。

https://www.anzen.mofa.go.jp/

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ヨーホー国立公園・バージェス山の頂上尾根からの眺め ©️Destination BC/Paul Zizka