まるで星の舞踏会のように、一つの恒星を全く同じ軌道で公転する2つの惑星がある証拠が初めて見つかったことが発表された。
1年の長さも、環境も全く同じ、これまで理論上の仮説の存在として考えられていた「トロヤ惑星」が実際に宇宙に存在した可能性が濃厚になったのだ。
それは地球から370光年離れた「PDS 70(ケンタウルス座V1032星)」にあるそうで、『Astronomy and Astrophysics』(2023年7月19日付)で報告されたそのシグナルが本当にトロヤ惑星であれば、史上初の画期的な発見になる。
【画像】 まったく同じ軌道上を公転する2つの惑星を「トロヤ惑星」
ほぼ同じ質量で、公転軌道すらまったく同じ惑星のペア、「トロヤ惑星(Trojan planet)」の存在が予測されたのは20年前のことだ。
恒星のまわりを公転する惑星には、恒星と惑星の重力が釣り合って別の天体が安定する場所がいくつかある。ここを「ラグランジュ点」という。
ここには時折、小惑星などが捕われていることがある。
一番有名なのは、木星のものだ。木星の2つのラグランジュ点それぞれには数千もの小惑星がまとまっており、「トロヤ群」「ギリシア群」と呼ばれている(これらはホメロスの叙事詩『イーリアス』で語られるトロイア(トロイ)戦争で争ったギリシアとトロイアからとった名称だ)。
だが、そこに捕捉されるのは小惑星だけはなく、惑星もまたここに捕捉されるケースがあるだろうと考えられている。
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だが長期的にはトロヤ天体は不安定で、しかも現在の望遠鏡の限界もあるために、実際にトロヤ惑星が観測されたことはなかった。
Zooming in on the PDS 70 system
ケンタウルス座の方角にトロヤ惑星の有力な証拠を発見
この超レアなトロヤ惑星を探すため、スペインの宇宙生物学センターなどの研究チームは、チリのアタカマ砂漠にある「ALMA望遠鏡(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)」を覗き込んだ。
ターゲットとなったのは、地球からケンタウルス座の方角に370光年離れた恒星「PDS 70(ケンタウルス座V1032星)」だ。ここには木星と同サイズの巨大惑星が2つある。
その一つ、「PDS 70b」という惑星のラグランジュ点を調べてみると、そこにかすかなシグナルが見つかったのだ。
そのシグナルはガス雲のもので、地球の月のおよそ2倍くらいの質量がPDS 70bと同じ軌道を並走していることを示していた。
研究チームによれば、それは死んだ惑星が砕けた残骸か、これから生まれようとしている惑星の材料の集まりである可能性があるという。
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もしそこに本当にトロヤ惑星があるのなら、PDS 70bと同じ季節が巡る世界がもう一つあるということになる。
まったく同じ公転軌道を移動しているということは、1年の長さも、生命が存在できる可能性(居住可能性)もほぼ同じということだからだ。
1年の長さと生命の暮らしやすさがまったく同じ2つの世界を想像できるでしょうか? 私たちの発見は、そんな世界が本当にありうることを示す最初の証拠です(宇宙生物学センター Olga Balsalobre-Ruza氏)
本当にトロヤ惑星なのか?最終確認は2026年
これが本当にトロヤ惑星なのかどうか、最終的に確認されるのは2026年のことになる。
そのとき、PDS 70bとトロヤ惑星候補が一緒に移動しているのかどうか確かめられる。
もしもしているのなら、それはトロヤ惑星である可能性が濃厚だ。天文学史に残る画期的な発見となるだろう。
References:Tentative co-orbital submillimeter emission within the Lagrangian region L5 of the protoplanet PDS 70 b | Astronomy & Astrophysics (A&A) / Astronomers discover mysterious 'Trojan' planets that share the same orbit | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo
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