定年退職後、新しい会社への就職を目指す人には「失業給付」の受給手続きを行うことをお勧めします。定年退職での離職の場合、自己都合退職のような2カ月の給付制限もありません。※本記事は『いちからわかる! 定年前後のお金と手続き 得する働き方・暮らし方ガイド 2023-2024年最新版』(インプレス)から抜粋・再編集したものです。

再就職までの生活費を補填する「失業給付」

定年退職時点で会社を辞め、心機一転他の会社などへ 再就職しようと求職活動をする場合は、雇用保険から「失業給付(基本手当)」を受け取れます。失業給付は、失業した人が再就職するまでの生活を手助けするための制度です。

失業給付の受給要件は、「働く意思があるにもかかわらず、失業状態にあること」「退職前の原則2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12カ月以上あること」。対象は65歳未満です。

失業給付を受ける際には、ハローワークで求職の申込みや必要書類の提出が必要。「受給資格決定日」から7日間の待期期間を経て受給が始まります。

失業給付の基本手当日額は、賃金日額(退職前6カ月の賃金合計÷180)に賃金に応じた給付率を掛けて算出します。基本手当日額の上限額は、60歳以上65歳未満の場合、7177円に設定されています。

また、失業給付の給付日数は、離職者区分と年齢区分により異なります。

離職者区分は、①自己都合や定年退職での離職者、②倒産や解雇など会社都合による離職者、③病気や親の介護など正当な理由のある自己都合による離職者の3区分。

定年退職での離職の場合、①の給付日数が適用され、給付制限なしで受給が始まります(自己都合の離職者は待期期間終了後に2カ月の給付制限がある。[図表1]参照)。

なお、失業給付の受給期間は退職日翌日から1年間ですが、受給期間延長手続きをすることで、最長1年の延長が可能です。

◆定年退職の場合、2カ月の給付制限はない

定年退職は自己都合でも会社都合でもなく、失業給付の給付日数は一般の離職者と同様ですが、下図のような流れで失業給付の振込みが行われます。

◆定年退職後(60歳以上65歳未満)の失業給付の概要

 受給要件 

●労働の意思と能力があり、積極的に求職活動をしているにもかかわらず、職業に就くことができない失業状態にあること

●退職前の原則2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12カ月以上あること

 待期期間 

申請から7日間は給付対象外

 受給日数 

●原則90~150日(雇用保険の被保険者期間などによる)

●受給期間は、退職の翌日から1年間(その間に受給が終わらない日数分は、受け取れなくなる)

●定年退職や継続雇用が終了する場合、特例により最長1年間、受給期間を延長できる

 受給額(日額) 

基本手当日額(失業1日あたりの受給額)

賃金日額退職前6カ月の賃金合計÷180) × 賃金に応じた45~80%の給付率

 年金との調整 

60代前半に年金を受け取れる人の場合、失業給付受給中は老齢厚生年金が全額支給停止される

※65歳以上の場合は、要件を満たせば基本手当の代わりに高年齢求職者給付金(30日分または50日分の一時金)を受け取ることができ、年金との調整はない

◆基本手当(失業給付)日額の上限と下限

失業給付金の基本手当(日額)には上限、下限があります。年齢によって上限額が異なるので確認してみましょう。

失業給付の給付日数

定年退職の場合、一般の離職者と同様、給付日数は被保険者期間が20年以上で「150日」となります。

福地 健 ファイナンシャル・プランナー 社会保険労務士事務所 あおぞらコンサルティング顧問 (株)近代セールス社前代表取締役社長 CFP®(日本FP協会元理事)

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