子どもを大学等に通わせる場合、収入や貯蓄では学費が足りない場合に利用できるのが「奨学金」と「教育ローン」です。これらは、利用要件や上限額など特徴が異なります。いずれにしても、家計を把握したうえで適切に利用する必要があります。それぞれの利用の条件、活用法について、ファイナンシャルプランナーの坂本綾子氏が著書『子どもにかかるお金の超基本』(河出書房新社)から解説します。

奨学金と教育ローンの違い|まず奨学金から検討を

収入や貯蓄では学費が足りない場合に利用できるのが奨学金と教育ローンです。

奨学金は子ども本人が申し込みます。返済の必要がない給付型と、卒業後に返済する貸与型があります。

一方、教育ローンは保護者が申し込み、保護者が返済します([図表1]参照)。

所得などの要件を満たすなら、奨学金から検討しましょう。借りた場合も金利が低く、その後の状況に応じて、返済の猶予や免除の制度があるからです。

日本学生支援機構の奨学金

◆本人の成績と親の収入で採用が判断される

利用者が多いのは、日本学生支援機構の貸与型奨学金で、第一種と第二種があります。利用できるかどうかは本人の成績(予約採用は高校時代)と世帯の所得によります。

◆無利子または低金利だが借りるのは必要最小限に

本人の成績の条件、世帯の所得の条件、いずれも第二種の方がゆるやか([図表2][図表3]参照)。

第一種は無利子で、借りた金額のみ返済します。第二種は利子が付き、金利が変わらない利率固定方式と、途中で金利が変わる利率見直し方式から選びます。金利の上限は3%と法令で決まっていて、低金利の影響で現在はいずれも0.5%以下です。

第一種は、借りたい月額を選べますが、学校の種類などにより上限があります。第二種は、2万円以上12万円の間で1万円単位で選択できます。借りる金額は必要最小限に。

奨学金とはいえ、お金を借りるので、機関保証制度(奨学金から保証料を引かれる)を利用するか、親などを連帯保証人にします。親も老後が近くなる年代なので、機関保証が適切ではないでしょうか。卒業の半年後から返済が始まります。

奨学金の活用法

◆大学生活の収支計画を立て貸与の月額を決める

奨学金の月額をいくらにするか迷いますよね。たとえば、第一種は国立大学で自宅通学だと最高月額は4万5,000円です。12か月分で国立大学の年間授業料に相当します。

授業料の半分程度は払えるなら、その分の奨学金を減らし、生活費は子どものアルバイトでまかなう。学費は払えるけど仕送りが難しいなら、アルバイトだけでは不足する生活費に奨学金をあてるなど。準備できている資金と足りない分を確認し、奨学金をどう使うかで判断します。

それには子どもと計画をすり合わせることが重要。返済はいずれ子ども自身が行うので、その自覚も必要となります。

◆立場に応じた給付型奨学金を探そう

世帯の所得が低い場合は、日本学生支援機構の給付型奨学金の対象です。条件は、成績が5段階評価で3.5以上、住民税非課税か、それに準ずる世帯。日本学生支援機構の給付型奨学金は、授業料や入学金の減免も受けられます。奨学金と授業料等の減免額は、世帯収入に応じて3段階です([図表4][図表5][図表6]参照)。

高校3年生で予約採用を申し込むのが鉄則ですが、大学入学後の申し込みも可能。失業などで家計が急変した際も対象となります。

奨学金制度は、各大学、地方自治体、財団などにもあります。それぞれに対象となる学生や内容、募集時期が異なります。受験前はもちろん、在籍中も、応募できる給付の奨学金を探して申請しましょう。中には倍率が高いものも。情報収集は日本学生支援機構や各大学のサイトで。

地方自治体の返還支援制度

貸与の奨学金は、就職後に子どもが自分で返すことになりますが、これを支援してくれる制度があります。地方創生の一環として、奨学金を抱える学生が、対象となる地域に住み、対象となる事業所に就職すると、返済を支援(肩代わりなど)してくれます。就職活動の際には検討も。条件は、制度を実施する自治体のサイトで確認を。

教育ローンの種類と特徴

◆国の教育ローンは世帯年収に上限

奨学金が入学後にしか振り込まれないのに対して、入学前に借りられるのが教育ローンです。

教育ローンは次のようなケースで利用します。

【教育ローンを活用するケース】

・入学のための納付金が準備できないとき

・収入基準を超えていて、奨学金が使えないとき

ただし、国の教育ローン(日本政策金融公庫の教育一般貸付)には世帯年収に上限があります([図表7]参照)。

国の教育ローンは、中学卒業以上の子どもの教育資金を、1人につき350万円まで借りられます。在学中は利息のみの返済も可能。学費以外にもアパートの敷金など幅広く使えます。保証人を立てるか、保証料を払って機関保証を利用します。

◆金利や上限額はそれぞれ 民間の教育ローン

銀行や信用金庫など民間の金融機関が提供する教育ローンもあります。

国の教育ローンとの違いは、収入の上限がないこと、借入可能額も大きく、金融機関により1,000万円までなど。ただし、返済能力に関する審査があります。申込みから融資実行までの期間は短めです。

金利は金融機関ごとに違い、金利の水準は、国の教育ローンよりも高めの金融機関が多いようです。変動金利と固定金利があり、変動金利は借入後に金利が上がると利子が増え、総返済額も増えるので注意を。

教育ローンは奨学金と併用できるので、子どもは奨学金、親は教育ローンを借りることも可能ですが、親子で借金を抱えることに。借りずに済むなら借りない方が家計は健全です。家計を見直した上で、どうしても足りない分だけにしましょう。

坂本 綾子

日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定CFP

1級ファイナンシャル・プランニング技能士

※イラスト作成:松岡 未来(ヤング荘)(『子どもにかかるお金の超基本』本文より)

※画像はイメージです/PIXTA