「今度こそは!」という期待が、またもや裏切られてしまった。

2020年1月にコロナ対策で国境を封鎖して以降、ずっと閉じられたままの北朝鮮北部・両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)税関。貿易に依存している土地柄だけあって、国境封鎖は地域経済を壊滅状態に追い込んでしまった。

それが今月17日以降に再開するとの中央からの指示が下され、貿易会社や地元民が大いに期待していたのだが、またずれ込むことになった。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

再開を目前にした恵山税関に、中央から検閲団(監査班)がやって来た。防疫施設など、貿易の全面的再開に向けた準備に対する全面的な検閲を行ったのだが、その結果は不合格だった。

検閲団は、「まともな防疫施設すらない税関を開くなんて話にもならない、税関イルクン(幹部)の仕事に臨む姿勢が根本から間違っている」と手厳しい批判を浴びせた。そして再開は延期となってしまった。

今まで何度も「税関が開く」という噂が流れるも、実際には再開されず騙され続けてきた地元民や貿易会社。そのたびに落胆と諦めの空気が流れてきたが、今回の再開延期に対しては、苛立ちをあらわにしている。

「ずっと検閲ばかり続けるつもりなのか。いい加減、気をもみすぎて死にそうだ」(貿易業者)

しかし、検閲が行われ、再開が目前に迫っていることには変わりない。情報筋は、指摘された問題が解決すれば再開される可能性が高いとしつつも、最終的には中央の承認を得なければならないため、もう少し見守る必要があると述べた。

過去3年半もの間、主要産業である貿易と密輸がほとんどできなくなっていた恵山では、ある程度の蓄えがあった人ですら困窮するほどの状況に陥っていた。もともと生活が苦しかった人々は言うまでもない。一日たりとも待てないというのが本音だろう。

さて、再開後の貿易はどうなるだろうか。国はコロナ禍をきっかけにして、すべての貿易を司る「国家貿易指導処体制」の確立を目指しているようだが、密輸が横行していた2019年以前の状態になし崩し的に戻ってしまう可能性も考えられる。

北朝鮮の恵山市(デイリーNK)