アウシュヴィッツの収容所から生還した男性ハリー・ハフトの息子アラン・スコット・ハフトが、父の半生について書き上げた実話を映画化した『アウシュヴィッツの生還者』。『レインマン』でアカデミー賞監督賞やベルリン国際映画祭金熊賞に輝いたバリー・レヴィンソン監督が映画化した本作について、アラン・スコット・ハフト自身が語るコメントが到着した。

ナチスの収容所から生還しボクサーとして活躍するハリーは、生き別れた恋人のレアを探していた。彼はナチス主催の賭けボクシングで、ユダヤ人と闘って勝ち続けたため生き延びたと告白し、一躍時の人に。引退後、別の女性ミリアムと新たな人生を歩んでいたハリーだったが、レアが生きているという報せが届き……。

幼少期について、アランは「父は強制収容所で過ごした記憶から決して逃れることができず、生涯悪夢とともに生きていた。子どもの頃は『いつでも爆発する』可能性があったため、うまく話すことができなかった」と振り返る。

また、父の半生を綴った著書に関して、「父は自分の話を伝えたくて、この本を書くように勧めた」と証言する。「精神疾患PTSD)を患っており、それが暴力に発展することもあった。大人になってからずっと、愛してもらおうと努力してきました。この本の執筆は私の最後の試みでした」と執筆に関わる自身の想いを語った。

壮絶な過去を抱えつつも、生き別れた恋人レアを探す日々の中で出会ったミリアムに心を開き、新しい人生を踏み出したハリー。過去を乗り越えようとする父の苦悩を間近で見つづけ、また、その被害を受けることもあったものの、忍耐強く理解しようとしたアランの深い愛情がうかがえる。

劇中では、自身の過去についてハリーが幼い息子に語りかけるシーンが登場する。終戦後も抱え続けた苦しみに親身に寄り添い続けたハリーの一番の理解者、妻ミリアムにさえ打ち明けることのできなかった残酷な過去を、息子に「一度きりだ」といい、ついに打ち明けるのだ。出版の翌年にハリーは亡くなっており、本作が死を前にした父が遺した最後の証言記録となった。

『アウシュヴィッツの生還者』
8月11日(金・祝)公開
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『アウシュヴィッツの生還者』