東映アニメーションが企画する新規事業『ONN’ON STUDIOS』は、『VRChat』にて新しく「ImaginaryPark2070」と名付けたワールドを公開した。

隠しエリアである『楽園追放』の電脳世界・ディーヴァへの道順

 『ONN’ON STUDIOS』は、これまでもソーシャルVRプラットフォーム『VRChat』にてワールドを公開していた。第1弾では東映アニメーション設立当時のスタジオを再現したワールド「ToeiDogaStudio1956」を公開。第2弾では、“1999年7月の男子高校生オタク部屋”をコンセプトに、ソニーの協力を得て制作された「Nostalgia1999」が公開されていた。

 今回の「ImaginaryPark2070」は、「1956年大泉学園」「1999年秋葉原」「2017年の羽田空港」にくわえて「2070年、ディストピア化した近未来の渋谷」という“4つの時代と場所”が1つにまとまっているのが特徴のワールドだ。ワールドの中には『正解するカド』のカドや『銀河鉄道999』の線路『楽園追放』『怪獣デコード』のキャラクターなど、東映アニメーション作品に登場するさまざまなものが再現され来場者を出迎えてくれる。

 本稿では、そんな「ImaginaryPark2070」の様子をお届けしたい。(東雲りん)

■入り口ではキュートなガイド役「えん」「メモリ」がユーザーをお出迎え

 入り口で出迎えてくれるのは、ONN’ON STUDIOSのガイド役である「えん」くん。少し先に進むと同じくガイドの「メモリ」の姿も。この2人は、ソニーのキャラクター対話AI技術によってコンシェルジュとしてユーザーの案内役を務めてくれる。実際に話しかけてみると「アニメは好き?」など質問を投げかけてくれた(※)。

(※AIとの会話には公式インスタンスへの入場が必要。詳細は公式WEBサイトにて)

 話をすすめていくと、東映アニメーションにちなんで「好きなプリキュアシリーズはなに?」と、同社の作品について尋ねてくる場面も。同じ質問でも、回答によってさまざまなリアクションを見せてくれるのが新鮮で、実際におしゃべりをする感覚で楽しむことができた。

 入り口を抜けて、さっそく1つ目の世界に行ってみることに。まずは入り口から左手側に進んでいくと、1956年大泉学園を再現したエリアにたどり着いた。このエリアには、いまはなき東映動画スタジオが建っている。周囲に畑や自然がまだ残っており、当時のスタジオ周辺の雰囲気をうかがい知ることができた。エリア内には『宇宙パトロールホッパ』のロボットや『レインボー戦隊ロビン』のベンケイといった、東映アニメーションが誇る往年の作品に登場するキャラクターなどが立っており、またスタジオ入り口のポータルからはスタジオ内部を再現したワールド「Onnon_ToeiDogaStudio1956」に移動することもできる。

 せっかくなので時代を追って見ていこうと、一度戻って今度は入り口右手に進んでいく。すると、今度は1999年秋葉原にたどり着いた。1999年といえば、ちょうど『デジモンアドベンチャー』や『おジャ魔女どれみ』がTV放映されていたころ。秋葉原もPCパーツやOA機器、家電などを扱うような、まさに電気街としての側面が強かったころだ。この頃の秋葉原の雰囲気を町並みから感じられるのではないだろうか。いまでは懐かしい「MD」「PHS」「ワープロ」といった単語が看板に書いてあったり、1999年当時のソニー製品の広告が並んでいたりと、随所に懐かしい要素が散りばめられている。

 それから、自動販売機のギミックからは1990年代から2000年代にかけて秋葉原の名物としても知られた「おでん缶」を模した「おでんで~ん」なるアイテムも出たりする。

 さらに、かつて「交通博物館」があった旧万世橋駅のあたりには、当時の交通博物館が再現された建物と、『銀河鉄道999』の999号が展示されている。ほかのワールド・キャラクターに関してもいえることだが、こうした3Dモデルを全方位からじっくり見られるのは貴重な経験だ。

■2017年の羽田空港には巨大立方体「カド」 2070年の渋谷はまさかのディストピア

 続いて進んでいくと2017年の羽田空港にたどり着いた。こちらは、『正解するカド』にちなんだ世界となっており、物語本編において突如羽田空港の滑走路に現れた立方体「カド」が圧倒的な存在感を放つ。「カド」の特徴的な部分である“動き続ける幾何学模様”もしっかり再現されていて、もしかすると上から「ヤハクィザシュニナ」が自分を見ているのでは、なんて思ってしまう。ちなみに、やはり「上に登りたい」というユーザーが多かったことから、後述する隠しエリアを経由して上に乗ることもできるようだ。

 最後の世界は近未来、2070年の渋谷だ。こちらはディストピアな雰囲気のエリアとなっており、SHIBUYA 109を思わせる建物を中心として、あたり一面中に植物が生い茂っている。この世界では『楽園追放』の機動外骨格スーツ「アーハン」と『怪獣デコード』の「怪獣ウーク」が出迎えてくれる。『怪獣デコード』はVRアニメーションも製作されており、そのため迫力満点、細部に至るまで作り込まれた美しいアセットも見どころだ。

 ほかにも、『楽園追放』のアンジェラ・バルザックのイラストが飾られているほか、少女漫画雑誌をパロディした“らくえん追放”など、さまざまなポスターがいたるところに設置されている。ディストピア化した渋谷が舞台ということで、全体的に荒廃した暗い雰囲気が漂うエリアだが、『楽園追放』のパロディポスターによってどこか明るい雰囲気がでている。

 そして「ImaginaryPark2070」内にある謎解きギミックを解くと、隠しエリアである『楽園追放』に登場する電脳世界・ディーヴァに向かうことが可能だ。

 上空に浮かんでいるディーヴァのもとに到着すると、冒頭で紹介したメモリをはじめ、3人のキャラクターがダンスを踊りながら出迎えてくれる。ネタバレを防ぐため、たどり着くまでの様子をギャラリーページ後半に載せておくので気になった方は記事末尾のリンクからチェックしてみてほしい。

 流れている楽曲にはボイスが入っていないが、今後のアップデートでボイスが入り、歌詞付きの楽曲となるそうだ。メモリらが歌う楽曲は一体どんなものになるか、今後に期待だ。

 ここまで「ImaginaryPark2070」の各エリアを紹介してきたが、入り口がまっすぐ進んだ中央部分にはイベント用のステージが用意されている。ちなみに、前面のどこかにある隠し階段でステージに登ることができるようだ。こちらが隠しエリアへの第一歩なので、ぜひ発見してみてほしい。

 執筆現在、イベントの開催は予定されていないとのことだが、今後は新作アニメの発表会や『怪獣デコード』や『正解するカド』といったコンテンツにフィーチャーしたイベントの開催を予定しているとのことだ。

 「ImaginaryPark2070」は、東映アニメーションのIPをふんだんに活用した、いわばテーマパーク的なワールドという印象だ。観たことのある作品の要素に興奮することもあれば、まだ観たことのない作品のキャラクターに惹かれて「観てみようかな」と思わされることもあり、様々な作品に触れるいい機会だった。本ワールドは今後もアップデートをする計画があり、『ONN’ON STUDIOS』のプロジェクトリーダーを務める野口光一氏いわく「大きな発表をするときや、イベントなどで積極的に活用していきたい」とのこと。「ImaginaryPark2070」はVR、PCのどちらからでも入場が可能だ。ぜひワールドを探検してみてほしい。

銀河鉄道999』©松本零士/零時社・東映アニメーション
宇宙パトロールホッパ』©東映アニメーション
レインボー戦隊ロビン』©東映アニメーション
魔女っ子メグちゃん』©東映アニメーション
大空魔竜ガイキング』©東映アニメーション
正解するカド』©東映アニメーション/木下グループ/東映
楽園追放』©東映アニメーションニトロプラス/楽園追放ソサイエティ
『怪獣デコード』©円谷プロ東映アニメーション
『ONN’ON STUDIOS』©東映アニメーション

(文・取材=東雲りん)

「ImaginaryPark2070」