東京地裁にて7月26日(水)、小説家久美沙織氏が自身の小説における主人公の名称を映画ドラゴンクエスト ユア・ストーリーで無断に使用・改変されたとして、スクウェア・エニックスや東宝などを相手に損害賠償を求めている民事訴訟の意見陳述が行われた。判決は10月30日(月)頃に言い渡される予定だ。

映画『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』公式サイト
(画像は映画『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』公式サイトより)

 久美沙織氏は、スーパーファミコン用ソフトドラゴンクエストV 天空の花嫁の小説版を執筆しており、1993年に当時のエニックス(現:スクウェア・エニックス)から発売された。作中では主人公の名称として「リュカ」や「リュケイロム・エル・ケル・グランバニア」が使用されている。一方、スクウェア・エニックスや東宝をはじめとする製作委員会は2019年8月に映画『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』を公開。劇中では主人公の名称として「リュカ」が使われているほか、久美氏が考案したものと類似する「リュカ・エル・ケル・グランバニア」の呼称も登場していた。

 note上で掲載されている主張によると、久美氏は映画の存在を事前に知らされておらず、テレビ報道を通して「リュカ」の名称が使われている事実を知り、スクウェア・エニックス側に確認と説明を求めた。しかし、スクウェア・エニックス側は「リュカ」および「リュケイロム・エル・ケル・グランバニア」の名称は著作物にあたるものでないと主張し、協議は決裂。2019年11月に刑事告訴を実施していたが裁判規模の拡大にともなって一度取り下げたのち、クラウドファンディングを通じて訴訟資金を募り、2020年11月に訴状を提出している。

映画『ドラクエ ユア・ストーリー』のキャラクター名称に関する民事訴訟にて、小説『ドラクエV』作者の久美沙織氏が出廷し意見陳述_001
(画像はスクウェア・エニックスe-STORE「小説ドラゴンクエストV 天空の花嫁(1)」より)

 その後は係争やコロナ禍による影響のため長らく沈黙の期間が続いていたが、今回ようやく公に見える形で進展が伝えられたようだ。民事訴訟の記録は最高裁判所「裁判例検索」データベースから確認できるようになるものの、反映されるまでには約1ヶ月以上の期間がかかる。そのため、久美氏は今回の証人尋問で読み上げた陳述書の全文をnote上で掲載しているようだ。

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