運びづらいものランキング急上昇中の長ネギ。風の強い日だと自転車の風圧と風の強さでヤバい感じでしなります
運びづらいものランキング急上昇中の長ネギ。風の強い日だと自転車の風圧と風の強さでヤバい感じでしなります

連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長チャリンコ爆走配達日誌】第8回

ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!

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2018年1月から配達員を始めた私。当初、商品を運ぶ際に苦労したのはドリンクでした。

例えばスターバックスホットドリンク。現在は上部にある突起部分を引くと飲み口が出てくるタイプのフタですが、当時はフタの一部に飲み口の穴が開いていて、プラスチック製のマドラーを挿してフタをする方式になっていました。

このマドラーのフタがゆるゆるで縦揺れに弱く、リュックの中に入れるとどんなに慎重に運んでもコーヒーがこぼれてしまうため、自転車のハンドルに紙袋をぶら下げて運んでいました。

ですが、さすが大手チェーン。しばらくすると紙カップの上からラップをかけてくれるようになり、液漏れ問題は解消。現在のカップとなってからは倒れてしまっても中身がこぼれてしまう心配はなくなりました。

マクドナルドも容器の進化でドリンクをこぼす心配がなくなったチェーンのひとつ。冷たいドリンクのフタは配達当初も現在も見た目が変わらないのですが......。

【写真】マクドナルドのドリンク用容器は横に倒してもこぼれないフタへと進化

マクドナルドのドリンク用容器は横に倒してもこぼれないフタへと進化
マクドナルドのドリンク用容器は横に倒してもこぼれないフタへと進化

こんな感じで、横に倒してもこぼれないフタへと進化していました。

うどん、ラーメンなどの麺類の配達も大変でした。私が配達を始めた当初の配達員用のアプリは、「店で商品を受け取った」というボタンを押すと初めて配達先が確認できるという仕様になっていたため、店で作りたてのうどん(汁と麺が一緒に入ったもの)を渡された後にアプリのボタンを押したら配達先が自転車で30分ほどかかる場所だとわかり、「汁をこぼさないよう、どんなに丁寧に運んでも、麺がのびていたという理由でBAD評価をつけられるんだろうな」としょんぼりしながら運んだこともありました。

ですが、こういう類の問題も、麺とスープをセパレートさせるタイプの容器が普及したことで解消されました。

業界事情など詳しいことはよくわかりませんが、液漏れしない密閉性の高い容器や麺とスープがセパレートされている容器は、2020年の夏頃から増えてきたのが実感です。コロナで外出を控えるようになり、テイクアウト需要が増えたことで、メーカーが価格は少し高くても衝撃に強い容器を作ろうという流れになったのでしょう。おかげで、コロナ前と比べて配達しやすくなりました。

このように、容器の進化でいろいろ助けられているのですが、今でも配達に苦労するものはいくつかあります。

一番大変なのは牛丼チェーンの豚汁。大手牛丼チェーンのテイクアウトの商品を受け取ると、牛丼、汁物、おしんこなどが縦に積まれた形で渡されます。袋も縦長の袋となっています。

一般の方がテイクアウトされる場合、そのまま袋を手にぶら下げて持っていくので縦長の方が安定します。ところが、縦長の袋に入ったままの状態であの大きなリュックの中に入れてしまうと、確実に倒れます。また、豚汁や味噌汁の容器は縦長の袋をぶら下げた状態で持って帰ることを前提に作られているからなのか、横に倒してしまうとフタが外れやすく、配達を始めた頃はやらかしてしまったことも多々ありました。

また、おしゃれなカフェのソフトクリームも難敵です。配達員が背負っているリュックは断熱機能のある一方で、大きな保冷効果は期待できません。

3年前、家の近所にカフェがオープンしました。以来、この店からの配達では夏になると食べ物と一緒にソフトクリームを運ぶことが増えました。ここの商品はソフトクリームの上にチョコレートがかかっていたり、ドライフルーツナッツを散らすなど、おしゃれな感じに作られており、商品を渡される際に店員さんから「ソフトクリームは崩さないように気をつけて運んでください」と声をかけられます。

ですが、外の気温は38度。しかも一緒に運ぶのは、このカフェ自慢の焼き立てピザ。配達先までは自転車でおよそ20分。ふと頭の中に一休さんの数々のエピソードが浮かび「とんちで解決できる一休さんはうらやましいな」と思いました。

ちなみに、私の中の運びづらいものランキングで今、急上昇しているのは長ネギ。最近はスーパーマーケットの商品を運ぶこともあるのですが、その時に入っていると厄介なのがこれ。斜めに入れてもはみ出してしまうので、あの大きなリュックの角からニョキッと飛び出す感じで運ぶことになります。

はみ出してしまうだけなら問題ないのですが、私が配達している東京の湾岸部エリアだと、風の強い日が時々あって、自転車の風圧と風の強さでネギがヤバい感じでしなります。

さすがに折れてしまったことはありませんが、以前、バイクで配達をする仲間に聞いたところ「バイクはスピードが出るのでかなりヤバい」とのこと。背中にリュックがある状態で折れたことに気づかず配達先に着いたら......なんて想像をするとゾッとします。

泥付きのネギなら袋に入っているので、折れてしまうリスクは下がりますが、食べ物を運ぶリュックの中に泥が入ってしまうと面倒なことになりそうだし......。長ネギはホント、厄介なんです。

渡辺雅史(わたなべ・まさし) 
フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。

文・撮影/渡辺雅史 イラスト/土屋俊明

運びづらいものランキング急上昇中の長ネギ。風の強い日だと自転車の風圧と風の強さでヤバい感じでしなります