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一度の充電で114km走れるPHEV

新しい6代目メルセデス・ベンツEクラスへ初対面したのは、オーストリア・ウイーンの高級ホテル。ドアを開けようとまっさらなボディへ近づくものの、展開式のドアハンドルが動かない。

【画像】6代目へモデルチェンジ メルセデス・ベンツEクラス E 300e 競合のサルーンと比較 全161枚

おかしいな、と確認すると、メルセデス・ベンツが用意していたサポート車両のSクラスだった。自動車ジャーナリストでありながら既存モデルと間違えるとは、お恥ずかしい限り。弁明させていただくと、新しいEクラスはSクラスと良く似ているのだ。

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メルセデス・ベンツEクラス E 300e(欧州仕様)

Eクラスに相当するバッテリーEV、EQEより見慣れたプロポーションが与えられ、ボンネットは長い。フロントグリルはしっかり大きく、凸型の3ボックス・シルエットで構成されている。お望みなら、少しクラシカルなアルミホイールも選べる。

新しいEクラスは、マイルドハイブリッドプラグインハイブリッドのみの展開となる。トランスミッションは、共通で9速オートマティックが搭載される。

電気モーターでアシストされる2.0L 4気筒ターボガソリンで、システム合計203psのE 200が1番ベーシックな仕様。195psを発揮する、2.0LディーゼルターボのE 220dも設定される。

6代目で最も注目を集めると思われるのが、プラグインハイブリッドのE 300eだろう。駆動用バッテリーは24.1kWhと大きく、一度の充電で114kmも電気の力だけで走行可能。このクラスでは、エンジンを回さずに最も遠くまで目指せる1台となる。

シームレスに切り替わるパワートレイン

駆動用バッテリーに充分な電気が蓄えられている限り、E 300eはデフォルトエレクトリック・モードが選ばれる。駆動用モーターの最高出力は156psあるが、車重は約2tと重く、発進加速が鋭いわけではない。

とはいえ、市街地の交通には問題なく交わえる。ほぼ無音のラグジュアリーな雰囲気のまま、140km/hまで加速も可能だ。

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メルセデス・ベンツEクラス E 300e(欧州仕様)

直列4気筒エンジンが始動しても、日常的な条件ではパワートレインが切り替わったことへ気付くことが難しい。バトンタッチは極めてシームレスで、エンジンノイズも最小限。風切り音やロードノイズもほぼ聞こえず、安楽に高速移動をこなせる。

特筆すべきは、レベル4まで対応する自律運転システム。許される環境でレーダーを用いたクルーズコントロールを有効にすれば、車線に沿って走るだけでなく、遅いクルマを自動的に追い越してくれる。

慣れるまでは不気味にすら感じられるが、極めて自然で滑らかに走る。数分もすれば、不安感は消えるだろう。欧州では、2024年以降に利用が許可される予定だ。

英国仕様の場合、サスペンションはアダプティダンパーとスチールコイルという組み合わせ。エアサスは用意されるが、英国では選べないという。

試乗車はエアサスだったが、路面の凹凸を見事に処理し、アスファルトが剥がれた大きな穴や、橋桁の継ぎ目といった小さな不整もしっかり均していた。舗装状態の悪いグレートブリテン島と相性は良いように思うのだが、導入されない理由を知りたくなる。

ポジティブな印象のコーナリング

コーナリングの印象はかなりポジティブ。タイトカーブではボディロールがやや大きめに生じるものの、グリップ力は高く、ステアリングは正確。比較的大きなボディを軽快に操れる。

今回の試乗車には後輪操舵システムも備わり、ヘアピンカーブでは驚くような敏捷性を披露した。ところが、これも英国では選択できないオプションになる。

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メルセデス・ベンツEクラス E 300e(欧州仕様)

筆者が気になった唯一の点は、やや強めに踏んだ時のブレーキペダルのフィーリング。もっとソリッド感があっていい。

それでも、5代目より一層扱いやすくなったことは間違いない。ボディサイズがひと回り大きくなったことを考えると、唸らされてしまう。

その成長ぶりは、リアシートに座ると実感できる。ホイールベースが20mm伸ばされ、前後方向を中心にゆとりが増したようだ。

インテリアは、従来から高級感を高めた。EQEに通じるデザイン処理が与えられ、プライベート・ジェットのような華やかさもある。アンビエントライトが随所に埋め込まれ、内装の素材は高品質。すべてが心地良い雰囲気を生んでいる。

ダッシュボードを覆うスーパースクリーン

最新世代のメルセデス・ベンツとして、車載技術にも抜かりはない。その目玉といえるのが、ダッシュボードを覆い尽くすMBUXスーパースクリーン。EQSに実装されるハイパースクリーンの小型版だが、印象的な景色を作っている。

中央と助手席側のインフォテインメント用タッチモニターが一体になり、最先端感を醸し出す。加えてMBUXシステムは、インターネットとのコネクティビティやユーティリティ機能を大幅に進歩させている。

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メルセデス・ベンツEクラス E 300e(欧州仕様)

ティックトックなどのアプリが利用可能になり、ダッシュボード内臓のカメラでズームを用いたウェブミーティングにも対応する。実際に試してみたが、特に問題は発見できなかった。

ラグジュアリーなEセグメント・サルーンをお探しで、バッテリーEVはまだ早いとお考えのユーザーにとって、新しいプラグインハイブリッドのE 300eは魅力的な1択になるはず。

ドライビング体験は穏やかで、不満なく速い。大きな駆動用バッテリーを積み、エンジンをかけずにクラス最長の距離を走行できる。燃費も優秀といえ、試乗時の平均では35.8km/Lという数字が示されていた。

メルセデス・ベンツはまだ価格を発表していないが、英国では約5万ポンド(約900万円)からが想定されている。販売は、2023年後半から始まるという。

メルセデス・ベンツEクラス E 300e(欧州仕様)のスペック

英国価格:7万8195ポンド(約1368万円)
全長:4947mm
全幅:1861mm
全高:1497mm
最高速度:233km/h
0-100km/h加速:6.5秒
燃費:111.2km/L
CO2排出量:18g/km
車両重量:2000kg(予想)
パワートレイン:直列4気筒1999ccターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
駆動用バッテリー:24.1kWh
最高出力:312ps(システム総合)
最大トルク:−kg-m
ギアボックス:9速オートマティック/後輪駆動


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